多様な業種が参画する(一社)持続可能な社会のための日本下水道産業連合会(FJISS、フジス)の活動報告を定期的に発信します。今回は先日行った国土交通省との意見交換会について紹介します。
令和2年4月に設立されたFJISSは、下水道事業に関わる総合建設、専門土木、機械電気設備、資器材、調査設計、測量、管路管理、施設管理の計8業種が横断的に参加し、会員数は令和6年5月末現在で61会員(正会員57社、賛助会員3社・1団体)にのぼっています。
FJISSは7月11日、国交省上下水道審議官グループとの意見交換会を同省会議室で開催しました。毎年この時期に行っているものですが、今回は「ウォーターPPPの推進」と「業界における働き方改革・人材確保」の2点をテーマに設定し、FJISSが民間企業の立場から検討の深掘りを求める点について説明するとともに、双方で意見を交わしました。
国交省からは松原誠上下水道審議官、松原英憲大臣官房審議官(上下水道)、岡良介上下水道企画課長、吉澤正宏下水道事業課長、多田佐和子上下水道政策企画官/管理企画指導室長、岩﨑宏和事業マネジメント推進室長、堂薗洋昭上下水道事業調整官、FJISSからは野村喜一会長(日水コン代表取締役会長)、副会長6名らが参加しました。
冒頭、FJISSの野村会長があいさつに立ち、「今回設定したテーマはいずれもこれから民間企業が官民連携に取り組んでいくうえで必須のもの。有意義な意見交換になることを期待している」と話しました。また、昨年6月に行った国交省との意見交換会を振り返り、その際テーマに設定した「官民連携における第三者機関のあり方」と「労働改善・人材確保の観点からの規格のあり方」が、具体的な動きとして、前者は日本下水道協会による検討開始、後者は国交省による坑内作業基準に関する各業界団体との意見交換などにつながったことを紹介しました。
これに対し国交省の松原上下水道審議官は「毎回、FJISSの提案は精緻な検討がなされている。しっかりと受け止め、次につなげるようにしたい」と話すとともに、能登半島地震の対応に触れ、「水の大切さや水インフラの重要性、さらには上下水道一体で対応することの必要性などがあらためて強く認識された。こうした点も今後の政策に反映させていければ」と述べました。
FJISSからの提案では、現在、国が内容の充実に向けて検討を進めているウォーターPPPガイドラインにおいて、リスク分担の視点からスライド条項適用や設計変更の扱い方などを記載するよう求めたほか、性能発注でも交付金を生かせる施設更新・検討提案の方法が必要との観点から「更新実施型」の基本的な考え方について整理するよう求めました(図1~2)。
また、FJISSが数年にわたって議論している第三者機関に関しては、民間事業者が主体的に判断する実務範囲の広がりに伴い下水道管理者が負うべき責任やリスク等への認識が希薄になることや、対価に比して責任やリスクが高くなる民間事業者が生じることなどを懸念点として挙げ、客観的な視点によるリスク分担・連携方法の再整理の必要性や、PPPによる取り組みに対するKPIなどの評価指標の必要性を伝えました(図3)。
働き方改革や人材確保に関しては、官民連携の推進にあたって不可欠であるとの考えのもと、ICTやDXの活用、坑内作業基準など現場そのものの規格の見直し、適正な労働時間の設定などについて、国の指導を含め発注者側からの配慮や協力を期待する旨を伝えたほか、他業界で移動時間や日当たり業務量実績などの拘束時間を加味した歩掛が設定されていることを踏まえ、下水道事業おいても適切な歩掛が提示・改定・適用指導されるよう要望しました(図4)。
編集・発行責任者(FJISS事務局長) 山本 哲彦