下水サーベイランスの最前線を共有する公開シンポジウム「下水サーベイランスの社会実装に向けた研究の最前線と展望~環境と臨床をつなぐ感染症監視体制の構築~」が1月13日、東京文京区の東京大学・武田先端知ビルで開かれた。AMED(エーメド:国立研究開発法人日本医療研究開発機構)の感染症プロジェクト「新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業」のうち下水サーベイランスを中核とする三つの研究班と、東京大学大学院工学系研究科附属水環境工学研究センターの共催。およそ4時間にわたる7名の発表と討論で、会場には約50名、オンラインでも約110名が参加した。

シンポジウムは尾身茂氏(結核予防会理事長)の基調講演で始まり、尾身氏はコロナ渦当時のエピソードを披露するとともに、下水サーベイランスについても「国は少しでも下水サーベイランスにお金をまわしてほしい。日本が積極的に推し進めて、世界に普及させることは日本の企業にとっても、研究者にとっても大事なこと。日本発の世界貢献にして欲しい」「(一般の人にも)分かり易く伝えることが大事」と話した。
続いて特別講演として、
▽塩野義製薬株式会社の小林博幸氏が発表。同社の若手が発案した「感染症の天気予報」が同社の下水サーベイランスの取り組みの発端であったことや、産官学連携について取り組みを話し、
▽続いて大阪健康安全基盤研究所(大安研)の河原隆二氏が、大阪・関西万博会場で実施した、下水サーベイランスによる薬剤耐性菌のモニタリングについて発表。下水サーベイランスの有効性を示唆するデータが紹介された。
次に主催のAMED研究班による発表があり、
▽北島班・代表の北島正章東京大学特任教授は、日本の国際空港で実施している下水サーベイランスによる水際監視について発表。公衆衛生に活かすための行政との連携や、国際連携体制について講演し、
▽春日班・代表の春日郁朗東京大学准教授は、世界的に問題となっている薬剤耐性(AMR)対策として、WHOが主導するワンヘルス(人・動物・環境を一体と捉える)サーベイランスにおける下水サーベイランスの課題(標準化の難しさなど)を講演、
▽鈴木班・代表の鈴木仁人国立健康危機管理研究機構主任研究員は、医療排水中の薬剤耐性菌の解析を発表するとともに、院内感染を抑止する配管加熱の手法を紹介。データの可視化や共有の実現に取り組んでいることも話した。
続いてAMEDによる日米共同研究「地球規模保健課題解決推進のための研究事業」の採択課題「下水監視による集団規模の薬剤耐性の可視化:サーベイランス結果を公衆衛生対策へとつなげる取り組み」について、東京大学水環境工学研究センターの劉苗苗氏が概要を発表した。
最後の総合討論では、会場からの質疑も交えて、
▽天気予報と下水サーベイランスの差異と共通
▽国費投入の在り方
▽情報の取り扱い・共有の在り方
▽産官学の連携に市民も加えるか
▽国際連携の必要性
▽医療経済学的なメリット
▽厚労省・地方衛生研究所における下水サーベイランスとの関連
▽真菌や原虫も下水サーベイの対象になり得るか
▽ワンヘルスであれば縦割りは崩して分担する議論が必要
▽研究開発費は継続的な国のサポートが必要
――などの議論が交わされた。

