試用IDでの閲覧には一部制限があります
印刷

連載「水道の話いろいろ」(26)水道水のPFAS

最新の科学的知見と「水質基準」への格上げ

増子敦――日本オゾン協会会長・博士(工学)

  • NEW

1.PFASとは何か

PFAS(ピーファス)とは、1万種類以上ある有機フッ素化合物の総称です。その代表格が、PFOS(ピーフォス)とPFOA(ピーフォア)です。これらは熱に強く、水や油を弾く性質があるため、フライパンのコーティング、撥水剤、泡消火剤など、私たちの身近で幅広く使用されてきました。しかし、自然界で極めて分解されにくく、「永遠の化学物質」とも呼ばれ、環境中に残留し、食品や飲料水を通じて人体に蓄積することが課題となっています。

2.食品安全委員会の評価:摂取源の主役は「食品」

日本の食品安全委員会は2024年6月、270ページに及ぶ詳細な「PFASの評価書」を公表しました。世界中の最新知見を総括したこの評価書で注目すべきは、「PFAS摂取の最大の原因は食品である」という点です。海外の調査の例ですが、欧州食品安全機関(EFSA)がヨーロッパ19か国において、人が体重1kg当たり1日にPFASをどの食品から平均何g摂取しているかを国別に推定して棒グラフに表し2020年に公表しています。その内訳をみると、図の紫色で示す魚介類が最も多く、肉、果物、卵からも多く摂取しています。黄緑色で示す飲料水はわずかとなっています。体重1kg当たりの摂取量なので大人よりも幼児の方が摂取量が多く、大人の2~3倍になっています。

3.「著しい健康影響はない」が、厳しい上限値を設定

報告書では、「通常の食生活において、著しい健康影響が生じる状況にはない」と結論づけています。しかしながら、「出生児への影響」を考慮して、一日の摂取量の上限を定めました。それはPFOSもPFOAもそれぞれ、体重1kg当たり1日20ng(ナノグラム)とするものです。ナノとは10億分の1の単位で、20ngとは0.00002mgです。体重50kgの人なら一日1000ng、体重5kgの幼児なら100ngが上限ということです。日本人の平均的な推定摂取量は体重1kg当たり1ng前後とされており、この上限値20ngに対しては十分な余裕がある状況といえます。

4.2026年4月に「水質基準」へ

水道水におけるPFOSおよびPFOAの基準も、大きな転換期を迎えました。2020年以来、「PFOSとPFOAの合計値が1リットルあたり50ng以下」という暫定目標値で運用されてきました。今回、知見の蓄積と対策の進展を受け、2026年4月より「水質基準項目」へと格上げされ、暫定目標値はそのまま新しい基準値になりました。
この「50ng/L」という基準値は、人が一生涯、毎日2リットルの水を飲み続けても健康に影響がない濃度として設定された、極めて安全側の数値です。

5.全国水道の現状:8割以上が「不検出」

環境省がまとめた2024年度の全国調査によれば、全国1,745事業のうち、全体の81%が不検出です。以前に暫定目標値を超えて検出されていた事業体においても、取水停止や活性炭による浄水処理の改善などの削減対策が進んだ結果、現在では、新しい基準値(50ng/L)を超過している事業体は1箇所もありません。

6.まとめ ―正しく恐れ、適切に対策する―

PFAS問題への結論は以下の3点に集約されます。

1.水道水は全て基準値を下回っていて、飲用として全く心配ありません。
2.水道水以外の地下水や湧水を飲む場合はしっかり検査が必要です。
3.PFASは水道水以外の食品から摂取する方がかなり多いので、PFASが心配な一部の食品には注意する必要があります。

私たち水道関係者は、これからも厳格な水質管理と透明性の高い情報発信を通じて、お客様に安心を届けていく必要があります。

(c)Atsushi Masuko
「上下水道情報」2037号―2026年6月掲載 一部改

ますこあつし
【著者プロフィール】

増子敦(ますこ・あつし)1953年生まれ。博士(工学)。元東京都水道局長、東京水道サービス株式会社代表取締役社長。現在日本オゾン協会会長、YouTubeに「水道の話」を連載。著書に「誰もが知りたい水道の話」。

連載目録はこち

一覧へ戻る