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連載「水道の話いろいろ」(23)水道で火を消す

増子敦――日本オゾン協会会長・博士(工学)

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水道は消火の役割もあります。今回は、水道の消火栓や、簡単に用意できる家庭用の消火栓についてお話しします。

まず、消火栓です。消火栓は道路下の水道管に大体200m間隔であります。水道管はどの道路にも入っているので、広がりで言えば100m四方に1か所あります。

蓋の色は黄色です。蓋を開けて、スタンドパイプを差し込み、消火ホースと消火ノズルをつけて、開栓器を回すと放水できます。

水圧や水量が不足するときは、消防ポンプ車で増圧します。

消火栓と全く同じものに、水道管の維持管理に用いる排水栓があります。こちらは蓋の色が水色です。事業体によっては私道の水道管耐震化の際にその末端などに設置されますが、その排水栓も消火栓と同様に消火活動に使えます。私道は消防車も入れない細い道が多く、木造密集地も多いので、これで初期消火できれば大事に至らずに済むかもしれません。

スタンドパイプに応急給水栓を付ければ、これで水を配れます。震災などに備えて、消火ノズルを含めてこれらの器具を町会、自治会などに予め配布している事業体もあります。普段から地元や水道局、消防署が一体となって訓練することが大切です。

消火栓は一般には地下式ですが、寒冷地や雪国では砲弾型の地上式です。雪に埋もらずに、水抜きができて、凍結しない仕組みになっています。雪国でなくてもこれに似た形のものを街中でよく見かけるので、ご紹介します。一つは「採水口」です。これは防火水槽から、消防ポンプ車で、水を採り出すところです。

もう一つは「送水口」です。消防ポンプ車からのホースをここにつけます。ここから「連結送水管」によって、建物内の3階以上の各階の放水口に、水を送り込みます。各階の放水口に消防隊がホースを付けて放水します。7階建て以上の建物に付いています。外からのはしご車による放水は目にしますが、実は建物内部でも、この放水口を用いて消火活動が行われます。

消防車が来なくても使えるのが、屋内消火栓です。各階に消火ホースがセットされていて、地下の消火水槽と消火ポンプによって、各階で放水できます。使い方は、ノズルを取り出して、ホースを火元近くまで持っていき、バルブを開けて放水します。誰もが練習して使えるようにしてください。

一般の家庭でも消火栓があると安心です。消火器も役に立ちますが、十数秒しかもたないので、慌てていると、すぐになくなります。水道や風呂水から、容器で汲んで水をかけても、なかなか火元に命中しません。

そこで、普通の水道ホースの先に散水用のジェットノズルを付けて火を消します。これだと火元にめがけて連続放水できます。

ホースを取り付けるのは洗濯機の蛇口が便利です。洗濯機の蛇口は特殊な形なので、これに合う「洗濯機用ホースジョイント」という器具を、ネットやホームセンターで手に入れます。これを10m程度のホースに取り付けて、ぐるぐる巻きにして用意しておきます。いざ消火の時に洗濯機の蛇口を閉めて、カチッとワンタッチでこれに付け替え、蛇口を開けて放水します。付け替えの時は、ホース内の水圧で、一瞬水が飛び散りますが気にしないでください。事前の練習の時には、水が飛び散らないように、洗濯機を始動させて、洗濯機のホース内の水圧がなくなってから、付け替えてください。家庭用の消火栓は僅かの費用で安心が買えるのでお勧めします。


(c)Atsushi Masuko
「上下水道情報」2034号―2026年3月掲載 一部改

ますこあつし
【著者プロフィール】

増子敦(ますこ・あつし)1953年生まれ。博士(工学)。元東京都水道局長、東京水道サービス株式会社代表取締役社長。現在日本オゾン協会会長、日本水道協会監事、YouTubeに「水道の話」を連載。著書に「誰もが知りたい水道の話」。

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