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連載「水道の話いろいろ」(22)直結給水で節電

増子敦――日本オゾン協会会長・博士(工学)

水道水に圧力をかけてお客様までお届けするのに膨大な電気を使っています。その金額は、東京では1m3当たり15円、年間200億円以上になります。

戸建ての建物には水道の圧力だけで蛇口まで届きますが、3階以上の建物では、昔は圧力が不足していたため、いったん貯水槽にためてそこからポンプで各階に配る方式でした。なんとこのポンプの電気代は、水道局で使う電気代と同じ1m3 15円もかかり、合計すると30円にもなります。

今は圧力が低い高台などの地域でも3階建ての建物で十分に水が出るように元の圧力を調整しています。ですから、ほかの地域では十分な圧力があるので、圧力が高いところでは中層建物にポンプなしで給水できます(直圧給水)。

建物が高くて圧力が不足する場合は水道管に直接ポンプをつけて不足分だけを増圧して補います(増圧給水)。

これらの方式を直結給水と言います。今はこれが主流です。東京都内では年間多くの中高層建物が建設されていますが、その9割以上の3千棟で直結給水が採用されています。階高は16階までの建物が対象ですが、それを超える超高層建物でも、途中階にポンプをつけて直結給水できます。百世帯を超えるような大規模マンションでも採用が可能です。

一方、貯水槽をもつ既存の中高層建物でも、直結給水への改造が進んでいます。2010年代の最盛期は都内で年間3千棟もの建物が直結給水へ改造されました。この数は、先ほどの直結給水を採用した新築中高層建物の年間棟数と同じです。最近は対象となる貯水槽の建物が少なくなってきたため、さすがに減っていますが、それでも年間千棟が直結給水に改造されています。

ここまで直結給水が広まってきたのは、安くて管理が容易だからです。新設の建物では、直結給水の方が設置費も、電気代や貯水槽清掃費などの維持管理費も圧倒的に安く済みます。既設の貯水槽の建物を直結給水に改造する場合は、改造費用がかかっても、電気代と貯水槽清掃費の削減により、数年または十数年で元が取れます。マンションの理事会でよく話題になるのは、直結給水に切り替えたいが何年で元が取れるかということです。
具体例でお話しします。例えば、30世帯のマンションでポンプの不要な直結給水に改造する場合、工事費は仮に100万円だとすると、改造前にかかっていた電気代年12万円と貯水槽の清掃点検費年9万円を合わせた年21万円が削減されるので、100万円を21万円で割って約5年で元が取れるという計算になります。詳しくは、筆者のYouTube「水道の話3」で解説しています。興味ある方はご覧ください。

外部リンク:YouTube「水道の話3」

3階以上の中高層建物は1995年時点では都内に20万棟あり、全て貯水槽方式でした。今ではそれが半分以下になる一方、直結給水が増えて、棟数は既に逆転しています。この30年の変化は劇的です。直結給水の普及拡大のため、水道局が制度を変え、規制を緩和し、促進策を実行し、業界の方やマンション理事会の方が努力した結果です。高くなった水圧をお客様が享受できるようになったということです。

直結給水のメリットは、節電以外にも

① 新鮮な水が使える
② 夏でもぬるくなりにくい
③ 貯水槽の点検清掃がいらない
④ 設置費や維持管理費が安い
⑤ 敷地を有効に使える

ことです。停電になっても、水道局の水道が止まらなければ中下層階では水道が使えます。デメリットは水道局の水道が断水になると使えないことです。絶対にいっときも断水が許されない病院などは貯水槽が依然として使われています。

(c)Atsushi Masuko
「上下水道情報」2033号―2026年2月掲載 一部改

ますこあつし
【著者プロフィール】

増子敦(ますこ・あつし)1953年生まれ。博士(工学)。元東京都水道局長、東京水道サービス株式会社代表取締役社長。現在日本オゾン協会会長、日本水道協会監事、YouTubeに「水道の話」を連載。著書に「誰もが知りたい水道の話」。

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