連載「水道の話いろいろ」(21)気泡が入った魔法の水
テレビCMでは、顔に油性ペンで書いた太い線がシャワーで消えました。万博ではこのシャワーを使った人間洗濯機が話題になりました。この水には超微細な気泡が入っています。この水をウルトラファインバブル水といいます。シャワーだけでなく、洗濯機や湯沸かし器でも、産業界では魚養殖や農業などでも広く活躍しています。
ウルトラファインバブルとは、直径が1ミクロン以下の気泡をいいます。ナノバブルともいいます。これより大きくて0.1mm以下のものはマイクロバブル、両者を合わせてファインバブルといいます。

これらはISO規格で定義されています。この分野の研究や応用は日本が進んでいて、日本がISO規格を作ろうと世界に提案して、2017年にできました。
その特徴ですが、マイクロバブルは水中で白濁してそのうち消えるのに対し、ウルトラファインバブルは無色透明で、気泡の寿命は数週間から数か月あるといいます。気泡はレーザー光を当てると確認できます。

表面張力が減少して狭い隙間に入り込んで固形物を掃き出す作用があります。作り方は、水道の圧を利用して渦巻き状に旋回させる方法など様々です。

利用例をご紹介します。まず、前述のシャワーです。ウルトラファインバブル水が出てくるシャワーは、テレビCMの商品以外にも多数あります。TBS系列の人気企画「ひたすら試してランキング」では11種類のシャワーを対象に、油性ペンで手の甲に書いた色が落ちるかを調べましたが、「かなりきれいに落ちる商品が多数」とHPで報告されています。髪の毛の洗い上りもいいといいます。価格は1万円からあります。ただし洗浄性能には差があるようです。
次は洗濯機です。東芝はウルトラファインバブル洗浄を搭載した洗濯機を発売しています。超微細な気泡が洗剤成分を吸着して繊維の隙間に入り込み、汚れを落とします。発生装置を既存の洗濯機の給水ホース接続部に取り付けるものもあります。発生装置を内蔵した給水ホースもあります。いずれも1万円以下です。衣類の黄ばみの原因となる皮脂汚れが取れ、生乾き臭が減り、洗濯槽もきれいになるといいます。東芝はこの温水洗浄便座版も出していて、便器が汚れにくいといいます。
次は給湯器です。リンナイはウルトラファインバブル発生装置を内蔵した給湯器を発売しています。入浴後の潤いを保持し、水回りの水垢や排水管の汚れを軽減するといいます。水道メータ付近に発生装置を付けて家全体の水道をウルトラファインバブル水にするものも出ています。
発生装置などの製品はネットで多数販売されていますが、本当にウルトラファインバブル水になるのか不安に思う方は、「ISO認証製品」を求めれば安心です。一般社団法人ファインバブル産業会がISOの規格に基づいてその認証を行っています。
産業界での利用は既に相当広まっています。そもそもは、1990年代末に赤潮による酸欠で困っていた広島のカキ養殖において、マイクロバブルが溶存酸素の増加とカキの成長促進に効果があるとわかったことで導入が始まっています。これは世界に先駆けた日本発のファインバブル技術となりました。
現在では様々な魚の養殖において、空気や酸素を用いたウルトラファインバブルで溶存酸素を増やし、水質改善や魚の成長を促しています。魚の流通段階でも窒素や酸素を用いたウルトラファインバブル水が魚の鮮度を保持しています。
農業においては、コメや野菜の栽培でウルトラファインバブル水を使うことで、微生物が増え、根張りが良くなり、病気が減り、収量が上がっています。工業分野では半導体などの洗浄に、医療分野ではオゾンとの組み合わせで医療器具洗浄に役立っています。下水処理でも注目されています。学会での議論も盛んです。まさに魔法の水です。
(c)Atsushi Masuko
「上下水道情報」2032号―2026年1月掲載 一部改

【著者プロフィール】
増子敦(ますこ・あつし)1953年生まれ。博士(工学)。元東京都水道局長、東京水道サービス株式会社代表取締役社長。現在日本オゾン協会会長、日本水道協会監事、YouTubeに「水道の話」を連載。著書に「誰もが知りたい水道の話」。