
産官学の若手で構成する「インフラ未来会議 in 大阪 第1回ワークショップ」が12月9日、大阪市の中浜下水処理場で開催された。官から大阪市4名、産から民間企業6名(5社※)、学から大阪公立大学3名の計13名が参加。3回のワークショップを通じ、下水道を起点とした地域の将来像について議論を深め、成果を提案書の形にまとめて発信する。第1回は講演や現場見学が行われ、その感想を参加者全員で共有した。第2回は1月19日に大阪市下水道科学館で、第3回は2月10日に中浜下水処理場でそれぞれ開催する予定。主催(実行委員会事務局代表)は元国土交通省で現在は合同会社リレイトオール代表社員の増田隆司氏。運営にあたっては大阪市OBで構成する「NPO水澪」がボランティアで協力している。
※参加した民間企業……日水コン、メタウォーター、月島JFEアクアソリューション、管清工業、クリアウォーターOSAKA。

講演では、大阪市建設局の寺川孝局長、クリアウォーターOSAKA(CWO)の城居宏代表取締役、大阪公立大学の貫上佳則教授、事務局代表の増田氏が、これまでの仕事や経験、若手に伝えたいことなどを語った。
大阪市の寺川局長は、自らが携わった仕事として住之江抽水所の建設や合流改善事業、経営形態の見直しなどのエピソードを披露。その中で学んだこととして「現場に足を運ぶことと、人と会話することの大切さ」などを挙げるとともに、若手へのメッセージとして、「自分がやりたいことは口にするべき」「こうなったら面白いと妄想することが大事。妄想はいずれ何らかの形で実現する」などと助言した。

CWOの城居代表取締役は、維持管理を起点としたストックマネジメントや、大阪万博でも活用された下水サーベイランス、今後予定されている中浜下水処理場の周辺まちづくりとの連携などの話題を紹介。海外の水ビジネスについても触れ、「2030年には50兆円規模になると言われ、先進国も更新等の需要がある。日本は他の先進国の中でも下水道事業の質が高い。ぜひ海外展開にも興味を持ってほしい」などと語った。

大阪公立大学の貫上教授は、これまで研究開発に携わった脱炭素化技術などを紹介しつつ、今後のバイオマス利用のあり方も展望。バイオガス増量の鍵として、余剰汚泥ではなく生汚泥の割合を増やすこと、生ごみなど他バイオマスの混合消化、の2点を挙げるとともに、後者に関してはディスポーザーの可能性にも言及した。若手に対しては「従来の考えにとらわれないこと。下水道以外の分野にも幅広く興味を持ってほしい」などとアドバイスした。

増田氏は省庁再編後の国交省で携わった「国づくりの百年デザイン」のエピソードなどを語った。氏は40歳未満の若手職員32名で構成されたタスクフォースのメンバーの一人として議論に参加。旧運輸省などの異なる文化を体感したことや、まず将来像を描く議論のプロセスに新鮮さを感じたと振り返り、「新しい“ものさし”を手に入れることは大事」とメッセージを伝えた。

現場見学では、中浜下水処理場におけるMBR(膜分離活性汚泥法)施設や高速ろ過施設などの各工程を見てまわったほか、敷地内でマンホール蓋の開閉作業を体験。管口カメラなど下水道管の点検・調査技術のレクチャーも受けた。地上6階建ての新ポンプ棟の屋上にのぼり、これから再構築が本格化する西系施設の現状や、隣接する大阪公立大学の新キャンパス、2028年に開業する新駅などの状況も観察した。同処理場では西系の再構築に合わせて上部空間利用など周辺のまちづくりと連携した取り組みも予定している。



最後に、参加者が一人ずつ、講演で印象に残ったことや興味を持った仕事・経験、現場見学で感銘を受けたことや疑問に思ったこと、もっと知りたくなったことなどを発表。参加者からは「“妄想力”というキーワードが頭に残った」「処理場がまちの中心に位置していることを実感」「なぜこの場所に処理場を建てたのか、その経緯を知りたい」「異分野との連携の仕組みについて教えてほしい」などの感想があったほか、「次回以降が楽しみになった」といった声もあがった。

次回から地域の将来像について全体討議をスタートする。下水道の施設や資源を使ったSDGsへの貢献、地域の安全(道路陥没等を防ぐ)といったテーマを少人数で議論し、現状の課題と将来像のギャップ整理や、アイデア出し、シナリオ作成などを進めていく予定。