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インフラ未来会議 大阪のワークショップで3日間の成果発表

産学官の若手が「SDGs」「地域の安全」テーマに

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 産学官の若手で構成する「インフラ未来会議 in大阪」のワークショップが2月10日、大阪市城東区の中浜下水処理場で開催された。3日目(最終回)にあたる今回は、地域の将来像をテーマとした提案書のとりまとめとその発表会が行われた。

 同ワークショップには大阪市、大阪公立大学、民間企業(日水コン、メタウォーター、月島JFEアクアソリューション、管清工業、クリアウォーターOSAKA)から計13名の若手が参加。1日目(12月9日)は講演や現場見学、2日目(1月19日)は提案に向けた議論を行った。実行委員会事務局代表は合同会社リレイトオール代表社員の増田隆司氏(元国土交通省)が務め、大阪市OBで構成する「NPO水澪」が運営を協力している。

 提案書づくりはテーマごとに2つのグループに分かれて実施。グループごとに前回出た意見などを振り返りつつ、ファシリテーターを交えて提案の方向を確認するとともに、将来像の実現に向けたシナリオを整理。より相手に伝わり、共感を得る観点から、提案内容は主に手書きによる紙芝居形式でとりまとめた。

 下水道の施設や資源を使った「SDGsへの貢献」をテーマに議論したグループは、「まちの役に立つみどりの中浜下水処理場」と題した提案を発表。温室効果ガス削減の課題や憩いの場創出といった観点から、同処理場の未来像として、地域バイオマスの収集やリン回収の技術確立、住民や大学等との地域連携の仕組みづくりなどを提案したほか、近傍の大阪城になぞらえ中浜モデルの普及拡大による“天下統一”といったキーワードも打ち出した。

 一方、八潮の道路陥没事故などを背景に「地域の安全」をテーマとしたグループは、ストックの増加や担い手不足、下水道への関心低下などの課題を、ファクト(バックデータ)を示しつつ説明。また、これらの課題に対し、短期的には行政が維持管理情報を開示して地域住民に日常点検等に参加してもらう、長期的には教育を通じて若い世代に関心を持ってもらうといった方向性を提示した。住民による日常点検に関しては、具体的なインセンティブとして、アプリを使ってマンホール蓋等の写真を撮影・アップロードしてもらい、それがポイントとして使用料に充てられるといったアイデアも飛び出した。

 聴講者との質疑応答や講評の時間も設けられ、大阪市建設局の上塚哲彦理事、民間企業各社の幹部、2日目の議論にも参加した東京大学の加藤裕之特任准教授(今回はオンラインで参加)らが発表に対する感想や今後のエール、アドバイスなどを述べた。

 ワークショップに若手職員4名を送り出した大阪市の上塚理事は「(今回のような場は)アイデアを出す“入り口”として有効に感じた。データに裏付けられた提案書の作成など、今回の経験は必ず今後の仕事に生きてくるはず」とコメント。東大の加藤氏は「他のインフラなど下水道の外とつながる視点が盛り込めると尚良い」とのアドバイスも交えつつ、「総じて面白い提案だった。まだまだ下水道にもイノベーションはありそう」と総括した。その他の講評者からも「夢と現実のギャップを知ることは重要」「今回の経験をぜひ会社や職場に持ち帰って伝えてほしい」「下水道の維持管理で陥没を防ぐには限界がある。陥没が起きても絶対に落ちない車や、下水道が壊れても陥没しない道路などの発想も期待したい」などの声が聞かれた。

上塚理事
増田氏

【インタビュー】産学官が同じ立場で議論できる場を

 実行委員会事務局代表の増田氏に今回のワークショップの趣旨や振り返り、今後の展望について聞いた。

――あらためて今回のワークショップの趣旨を。
増田 地域のことは地域で決める、“地域発・現場起点による全員参加”の文化をつくっていきたいとの思いから企画した。産学官が同じ立場で議論し、互いに刺激し合うことでイノベーションやシナジーを生み、最適解を出していく。こうした皆で議論するプロセスを重視したことも特徴の一つ。特に「同じ立場で」がポイントで、産官学がフラットに議論できる場はそんなにない。今回、若手と言っても参加者は20代前半から30代後半まで幅広かったが、皆が年齢や立場に関係なく「さん付け」で呼び合うことにしたのがその象徴だった。

――実際にやってみてどうだったか。
増田 始まる前はどうなるか不安だったが、思っていた以上に楽しく前向きに参加してくれた。2日目はワールドカフェ形式で8分ごとに入れ替わり立ち代わりメンバーを変えて議論したが、途中で止めるのが申し訳ないくらいの盛り上がりだった。
 3日目の提案づくりは、最終的に尖ったアイデアが丸くなってしまった部分もあったが、限られた時間内に筋道を立ててまとめられたことには価値がある。経験上、思いつきのアイデアはいくらでも出せるが、それを裏付けるファクトが重要。今回、そこまで示したうえで提案できたのは大きかった。それから、あらためて若い世代はコミュニケーションや協働などの能力が高いと感心した。普段の仕事も若い人たちに思い切って任せて活発な議論をしてもらえればよいと思う。
 今回、NPO水澪の皆さんがボランティアとして献身的にサポートしていただき感謝に堪えません。ファシリテーターとして議論を導いてもらっただけでなく、会場の設営や写真撮影などの裏方もやっていただいた。そんな姿を見て、若い人たちが活躍できる環境を整えることこそ、我々ベテランの大きな役割だと再認識した。

――今後の展望は。
増田 今回のワークショップは最初の一歩。まずは大阪での取り組みを継続・発展できるよう、今回協力いただいた関係各位に報告と合わせて今後の展開をご相談したい。また、大阪から全国へ、他地域でもそれぞれの特性を活かした産学官の議論の場をつくっていきたい。現在、九州での開催について検討をお願いしている。
 一方、今回の人材育成をテーマとしたワークショップと合わせて、活動のもう一本の柱として進めていきたいのがPPPに関する政策提案だ。現在、ウォーターPPPが国主導で進められており、行政手続きや国の支援要件等をまとめたガイドラインは示されている。しかし、PPPの主役である自治体と民間企業がそれぞれの現場においてイコールパートナーとして実践活動を行うための環境整備が十分でないことが課題だと認識している。自治体と民間企業が連携してマネジメントをまわしていくうえでのルールを定めたマニュアルが必要だ。その具体的な中身は、現場を熟知する民間企業が意見を出し、産学官の枠組みで議論して提案していく。その際の場としてインフラ未来会議が活用できるのではないかと考えている。