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下水道の散歩道

谷戸 善彦 氏/㈱NJS エグゼクティブ・アドバイザー(常任特別顧問) (一社)日本下水サーベイランス協会 副会長 (公財)河川財団 評議員

  • 連載中

行政、関連団体、民間企業と、さまざまな立場で下水道事業に携わってきた著者が、愛情と期待をもって記す下水道インフラの未来への提言”。政策・予算、先端テクノロジーの動向から生き方・働き方まで、硬軟織り交ぜた話題をポジティブな視点で切り取る。行政関係者や企業の経営トップ層にもファン多数の人気連載。
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谷戸 善彦(やと・よしひこ)
山梨県北杜市出身。東京大学工学部都市工学科卒業。建設省入省。都市局下水道部下水道事業課配属。1987年西ドイツカールスルーエ大学客員研究員、1991年京都府下水道課長、その後、建設省下水道事業課建設専門官(予算総括)、同下水道事業調整官、東北地方整備局企画部長、国交省下水道事業課長、国交省下水道部長、日本下水道事業団理事、日本下水道事業団理事長(公募による選任)、㈱NJS取締役技師長兼開発本部長等を歴任。2022年3月より㈱NJSエグゼクティブ・アドバイザー(常任特別顧問)。2022年5月より一般社団法人日本下水サーベイランス協会副会長・企画委員長。その他、(公財)河川財団評議員、(一社)日本非開削技術協会理事、等を務める。技術士(上下水道部門(下水道))。著書に『21世紀の水インフラ戦略』(理工図書、書き下ろし)がある。

『下水道インフラの未来への提言』

「下水道の散歩道」の第1~63回をまとめた冊子『下水道インフラへの未来への提言』を令和5年11月に発行し、数百部配布いたしました(非売品)。ご希望の方は、若干数の余部がありますので、下記までメールにて、お問い合わせください。

ktjid(at-mark)kt-j.jp 公共投資ジャーナル社編集部 ((at-mark)を「@」に置き換えてください)

表紙
裏表紙

発刊にあたって

 2017年10月より、月1回(2022年3月からは、2ヵ月に1回)、『下水道情報』誌に、「下水道の散歩道」のタイトルで、「下水道インフラの未来への提言」といった内容の原稿を63回にわたり、連載してきました。公共投資ジャーナル社の仲村修社長(当時)からの執筆のお誘いがきっかけでした。「下水道の散歩道」というタイトルに示しますように、最初は、気楽な随筆的なものを考えておりましたが、連載を始めると、気合が入り、「下水道界とりわけ下水道行政への提言」が中心となりました。

 執筆にあたっては、問題点だけを指摘するに留まることは一切しませんでした。必ず、具体的でオリジナルな提案を併せて提示することを心がけてきました。具体的な政策提案は、読者の方々にとって、また、政府等の政策担当者の方々にとっても、「そうはおっしゃるけれど、とても無理ですよ」と思われた内容も少なくなかったかと思います。しかし、建設省・国土交通省において、30年以上、政策立案に真正面から立ち向かってきた私にとって、全く不可能なものは一切、提示していません。すべて、十分可能だと私は考えています。

 「下水道インフラ界の将来のあるべき姿」を直視し、そのためのあらゆる手段を講ずれば、多くのことは、達成可能と考えています。提案事項は、第1回、第35回、第63回で述べている「BHAG(ビーハグ)」にあたるものです。「BHAG(ビーハグ)」とは、「Big Hairy Audacious Goals」の略で、直訳すると、「大きく困難で大胆な目標」です。経営学者のジム・コリンズが経営学の名著『ビジョナリー・カンパニー』で唱えた経営の方向付けに関する考え方で、「達成が困難で一見向こう見ずに見えるが、しかし大胆でびっくりするような、わくわくする目標」「人の心に訴え、人の心を動かす明確な目標」と言われているものです。BHAGとは、①明確で人々の意欲を引き出し、②組織に勢いをもたらし、③組織がそれを達成することに極めて固い意志を持つ――目標です。歴史上有名なBHAGとしては、1961年にジョン・F.ケネディ大統領が宣言した「我々アメリカは、1970年代中に月へ人を送り、無事帰還させる」があります。

 第63回で述べましたように、2024年4月の水道行政・下水道行政の統合は、下水道界また水道界の飛躍の大きな機会だと考えています。そのチャンスを活かさない手はありません。そうした上下水道界の飛躍を受けて、上下水道界の仕事が学生さんにとって憧れの仕事になることを心から願っています。

 どの回も、私の座右の銘である「啐啄(そったく)の機(機を捉えること)」と「挑瞰発(挑戦・俯瞰・発信)」を意識しつつ、誠心誠意、しっかりと書きました。主張・提言は、私のオリジナルです。他の方の意見を書くということは一切ないのは当然として、私が、以前に他の雑誌・新聞に書いたものも原則、掲げていません。初出を旨としました。気合が入りすぎていますが、それは、「下水道インフラへの愛情・下水道インフラの将来への期待」ゆえです。努めて、ポジティブに・公平公正に書いてきました。

 思いもかけぬ反応もありました。第44回の原稿は、2021年5月26日の衆議院国土交通委員会で、下水疫学(下水サーベイランス)推進の審議の参考資料として配布され、国会の審議に活用されました。国会で「下水道情報の『下水道の散歩道』」が取り上げられるとは思いもしませんでしたが、光栄なことです。

 今回、第1回から第63回までを収録しましたが、63回分はあまりに多いので、公共投資ジャーナル社の皆様が合議で推薦された11編を目次に示しています(ブックマーク🔖のアイコンがついています)。お忙しい方は、その11編をお読みいただければありがたいと思っています。下水道の仕事を心から愛している者の心の中の吐露と思って、本冊子をお読みいただき、しかしその中の実行できることについては、皆様方のお力で、少しでも、行動に移していただけると幸いです。

 今回、「下水道の散歩道」として、掲載したものをそのまま載せておりますが、内容が「政策提言」的なものが多いので、本冊子のタイトルは、「下水道インフラの未来への提言」とさせていただきました。

 表紙・裏表紙は、㈱NJSの石塚友希さんと公共投資ジャーナル社の原達一郎さんが、素敵なアレンジをしてくださいました。心から感謝しております。

令和5年11月吉日
谷戸 善彦

目 次

回   掲載日         タイトル
1H29.10.24BHAG(ビーハグ)とイノベーション
2H29.11.21「世界の大きな流れ」を読み、「啐啄の機」で動く🔖
3H29.12.19「データドリブンマネジメント」と「プロセスシミュレータ・AI・IoTの活用」
4H30.1.30「マルチパーパスユーティリゼーション」と「下水道インフラの防空壕活用」
5H30.2.27ゲノム編集と下水道インフラ
―画期的なゲノム編集技術「クリスパー」の下水道インフラへの適用―
6H30.3.27「多角的視点に立ち、変化に的確に対応する下水道経営」と「ディスポーザ」
7H30.4.24「『公共用水域の水質保全』、下水道インフラのこのミッション(使命・役割)を、我々は決して忘れてはならない」🔖
8H30.5.22下水道インフラは「多機能資源エネルギー創出型環境安全社会資本」
9H30.6.19「アントレプレナーシップ」を持って「異業種連携」手法で「イノベーション」を
10H30.7.31「下水道インフラが『環境インフラ』である」ことの再認識・アピールを。そして「下水道財研」の設置へ。
11H30.8.28今こそ、「骨太の政策」の打ちだしを。「下水道財研」の復活・設置を。
12H30.9.25「ブラックアウト」と下水道インフラ
―下水処理施設の広域避難拠点化・防災拠点化を考える―
13H30.10.23ポスト平成時代を、「水の時代」に
―「水と共に生きる」という「打ちだし」を―
14H30.11.20「スーパーシティー」と「スーパー下水道」
―AI・IoT・ビッグデータの徹底活用―
15H30.12.18「大阪万博」と下水道インフラ
―「夢洲」を「サステイナブル・エコ(環境)モデル都市」に―
16H31.1.29「Construction」&「Maintenance」の時代から「Reinnovation」&「Management」の時代へ
―2019年新元号とともに「下水道インフラ新ステージ」へ―
17H31.2.26「下水道インフラ」への「国民的関心」を
―「下水道インフラ」に対する国民の「レスペクト(尊敬・敬意)」がまず大事―🔖
18H31.3.26「広島カープ」と「下水道インフラ」
―下水道インフラに国民的関心を持ってもらうため、カープ・マツダスタジアムの活用を―🔖
19H31.4.23「『ハイブリッドPPP』・『バンドリング』による官民連携の多様化」と「ソフト・イノベーション」
20R1.5.21「令和」時代スタート― 令和時代の「日本」と「下水道インフラ」
―下水道インフラの近未来に向けての15の提言―
21R1.6.18上下水道コンサルタント協会の新(第二期)中期行動計画(2019-2021)について
―「新しい時代に魅力ある水コンサルタントをつくる」―
22R1.7.16「骨太の方針2019」と下水道インフラ
23R1.8.27「我が国の下水道インフラよ、世界ナンバーワンを目指せ」
―下水道界から日本の成長戦略の一角を提示・実現しよう―
24R1.9.24「令和2年度下水道予算概算要求」と「令和時代の下水道インフラ未来戦略」
25R1.10.22Stammtisch(スタムティッシュ)
―「私のお気に入りの場所」と「下水道インフラの指定席」🔖
26R1.11.19水害列島克服への新たな視点
―コンプリヘンシブ・マルチエフェクト・破壊的イノベーション―
27R1.12.17日本主導による「世界下水道会議」の立ち上げ
―日本の下水道インフラ世界戦略に大きな効果―🔖
28R2.1.28下水道政策研究委員会への期待
下水道インフラ第二ステージへ ― 「デジタルトランスフォーメーション」が下水道インフラの世界を変える―
29R2.2.25Society5.0・デジタルトランスフォーメーション(DX)と下水道インフラ
―「DX」と「データ」で下水道インフラの世界が変わる、下水道インフラの世界を変える―
30R2.3.24フィーカ(fika)とヒュッゲ(Hygge)とシス(SISU)
―北欧の素晴らしいワークライフバランスと高い幸福度―
―日本の働き方改革への示唆―
31R2.4.21新型コロナウイルスに立ち向かう
―ピンチをチャンスに今やること、そしてポストコロナを今から考える―
32R2.5.19AC(アフターコロナ)時代と下水道インフラ
―AC時代の社会の姿と下水道インフラのレゾンデートル(存在意義)を考える―
33R2.6.16新型コロナパンデミック後の日本の国土政策と下水道政策
―ピンチはチャンス。日本は再び世界で輝ける日本となる可能性がある。下水道インフラも新しいパラダイムシフト政策の展開を―
34R2.7.28「WITH『コロナ』&WITH『豪雨日常化』」
ダブルパンチ下の日本 将来に向けた国土政策の在り方を考える
35R2.8.25「AFTER/WITHコロナ時代」のスタートに当たり、改めて、「下水道インフラのBHAG(ビーハグ)」を考える
36R2.9.22「インフラマネジメント」の時代と下水道インフラ
―第5次社会資本整備重点計画策定に向けて―
37R2.10.20「令和3年度下水道事業予算概算要求」と「下水道インフラへの国民の関心・理解」
38R2.11.17「都市型水害・内水氾濫被害を侮ることなかれ」
―以前と比べ、その危険度・影響の甚大さが増している―
39R2.12.15令和3年度予算編成における財務省の視点
―中長期的には、社会資本整備への国費抑制基調を強く感じる―
―今後は、社会インフラ間で予算確保競争に。その中で、下水道インフラの多重効果(超マルチエフェクト)を前面に打ち出した差別化戦略を。そして、新財源検討へ―
40R3.1.262021年、下水道インフラの新しい周期・新しいステージ始まる
―令和3年度下水道事業予算を読み解く―
―そして、「今、求められている下水道インフラの真の『骨太の政策』は何か」の議論のスタートを―
41R3.2.23DX・GX・BX(トリプルX)が世界を変える
―デジタル(DX)・グリーン(GX)・バイオ(BX)のトリプルトランスフォーメーション + 技術革新(TI)・マネジメント革新(MI)により、世界が変わる―
―今後、下水道インフラのDX・GX・BXへの貢献と対応が非常に重要―
42R3.3.23二地域居住・地方移住の動きと下水道インフラ
―下水道インフラ、服従的対応施設から意思決定の重要ファクターへ―
43R3.4.20技術立国日本の復権と下水道インフラ
―「技術開発」への徹底的支援・「技術実装」の促進・「技術国益」を守る が鍵―
44R3.5.18下水道インフラは、都市の「情報インフラ」
―下水道インフラのミッション(使命・役割)拡大、都市の安全・危機情報把握発信インフラに―
45R3.6.29骨太の方針2021とウィズ・ポストコロナ時代の下水道インフラ
―骨太の方針の核となる提言すべてに下水道インフラは深く関与、下水道インフラのレゾンデートル(存在価値)は大きい―
46R3.7.27脱炭素視点からの下水道インフラ政策の推進
―2050年に向けてのこれからの30年、世界は脱炭素(GX:グリーントランスフォーメーション)で動く―
47R3.8.24「One Health(ワンヘルス)」
―地球のサステナビリティー(持続可能性)の確保のためには、「脱炭素」だけでは十分でない―
48R3.9.21「令和4年度予算概算要求」と「下水道インフラの新たな展開に向けての提案」
―下水処理場を地域の新地方創生拠点に
49R3.10.19下水道インフラの「北極星」を目指して
―「ステークホルダー資本主義・サステナビリティー経営」と企業経営・下水道経営―🔖
50R3.11.16「衆議院議員選挙における各党の下水道インフラ関連の選挙公約」そして「下水道インフラを巡る今後の動きと対応スタンス」
―財務省財政制度等審議会の動きにも注目―
51R3.12.142020・2021年、新型コロナ下2年間の下水道インフラ界を総括し、2022年以降の方向性・戦略を考える
―2年間のアウトカム(成果・結果)と今後の下水道インフラ政策・戦略―
52R4.1.25令和4年度下水道事業当初予算を読み解く
―そして、今後は骨太の施策展開へ向けてパラダイムチェンジを―
53R4.2.22組織における非財務情報の重要性
―注目すべきは、「人的資本」と「将来を見据えた技術開発」―
―企業会計の自治体の下水道経営も同じ―
54R4.3.22日本の現下のマテリアリティー(重要課題)と下水道インフラ
―国民の生命を守る:「防衛」「コロナ」「脱炭素化」「国土強靭化」―
55R4.5.31「一般社団法人日本下水サーベイランス協会」の設立
―WBE(下水疫学)の社会実装に向けて―
56R4.7.26「水コン協の新行動指針・第三期中期行動計画(2022-2024)」と「骨太の方針2022」
―岸田政権と水コン協の目指す方向(ベクトル)は同じ―
57R4.9.20エンゲージメント
―企業・組織の成長・進化は、「エンゲージメント」にかかっている―
58R4.11.29BX(バイオ・トランスフォーメーション)が下水道を変える
―ゲノム解析・ゲノム編集・合成生物学の進化により、バイオ技術は新たなステージに入った―
―バイオリファイナリー・水処理汚泥処理のパラダイムシフト・微生物燃料電池・下水サーベイランスに注目―🔖
59R5.1.24歴史に学び、未来に活かす
―下水道政策・下水道行政の激動の直近60年の歴史を総括し、未来に向けての展開に活かす―
―政官学民の連携、国民・自治体の声、国の主導性・先導性、最重要国策とのシンクロ、大規模技術開発プロジェクト、異業種連携―🔖
60R5.3.21下水道オンリーの世界からの脱却を
―下水道の殻から抜け出し、スピード感を持って、施策展開を。併せて、「下水道」という名前から国民が受ける印象に謙虚に向き合うことが大切―
61R5.5.30POTENTIAL BASED POLICY MAKING(PBPM)
―下水道インフラの持つ潜在能力(ポテンシャル)をフルに活かした政策立案・企業戦略を―🔖
62R5.7.25暮らしと健康を守る「下水サーベイランス」の社会実装に向けて
―下水サーベイランスの動向・現位置・課題・展開方向―
63R5.9.19上下水道インフラのBHAG(ビーハグ)とTECHNOLOGICAL INNOVATION
―テクノロジカル・イノベーションと上下水道関連ドローン・ロボティクスの動向―🔖