第3種郵便物認可 や健康診断を常に受けているように、維持管理を適切にやっていくことが非常に大切です。そのためにもまずは市町村の中で上下水道事業の優先順位を上げていく。この意識を持っていただくことが必要ですし、各市町村の責任だと思います。逆にこれができないのであれば、“市町村主義”の原則を諦めていただきたいと思っています。水道法改正の議論の際にも私は“市町村主義”をやめましょう、むしろ都道府県や企業団を主体とする経営のあり方を法律で位置づけた方がいいのでは、というコメントをしました。結果的には採用されませんでしたが、これから人口も職員も減っていく中で“市町村主義”にこだわり続けるのは、私は無責任ではないかと考えます。市町村がやらないといけないという先入観を取っ払って、50年先にそのサービスを残すために何をすべきか考える。これが一番大事かと思います。加藤 フランスでは広域化ができなかったら上下水道の権限が市町村からメトロポールのような広域的な上位行政組織に移るといった法律がありますが、このような規制的措置までやらないといけない時期が近づいている感じもします。市民のためには。浦上 ただ、それを国が主導するのか、都道府県が引っ張っていくのか。なかなか難しいところですね。加藤 私は官民連携会社も1つの可能性のある形かなと思います。日本でも萌芽しつつありますが。官のガバナンスを効かせるのは、市民からの信頼という意味では大事だと思いますし、その中で民間の柔軟性や広域性を発揮させることも可能です。もちろん、同じ組織内で両者が補完しつつ、うまく融合することが前提になりますが。浦上 人材確保の点でも市町村だけでは限界がありますよね。民間企業が得意とするところだと思いますし、地域における人材確保は地域経済への貢献にもつながります。アフォーダビリティという考え方加藤 最後に海外の上下水道経営の最新事情なども紹介いただきながら、日本の関係者にエールをいただけませんか。浦上 12月初旬に欧州各国の上下水道の政策担当者が集まる会合があり、アフォーダビリティ(費用負担)に関する議論も行われました。アフォーダビリティは、もともとは途上国などで支払い可能な料金水準を設定する際の考え方ですが、欧州では上下水道会社によるユーザーの利便性を高める取り組み全般のことをそう呼んでいます。例えば英国で言うと、アフォーダビリティという枠組みの中で低所得者向けの料金減免や支払い猶予などのメニューがあります。この原資は水道料金や下水道使用料の内部補助で賄っています。あらかじめユーザーに対して徴収する料金のうちアフォーダビリティに何パーセントを支払うことが可能かを聞くなど、内部補助に対する説明がきちんと行われている印象があります。 日本国内でも新型コロナウイルスを受けて料金の減免等の措置が広がりました。減免措置をとった自治体の半分くらいは一般会計からの繰入金で減免分を補填したと聞いていますが、もう半分の自治体の中には内部留保を取り崩して料金減免の原資にしているケースもあると思います。ただ、これだと将来的に不足した分は結果的に水道料金や下水道使用料として支払いいただくことになります。減免された人たちはこのことを納得されているのでしょうか。おそらくそうした議論はなかったと思います。 いずれにせよ日本では、今回、コロナ禍の臨時的な措置として料金の減免等の措置がとられましたが、危機管理の観点からも、こうした取り組みを海外のような永続的な仕組みとして導入可能かどうかも含めてもっと議論されていいように思います。また、こうした取り組みは海外で先行してやられていますので、広く海外に学ぶ機会を求めていく必要もあると思います。加藤 海外ではユーザーに対してしっかり説明をした上で、それを拠りどころとして政策を実施しているのですね。日本では、まだ組織内の論理で政策が実施されている気がします。また、IWA(国際水協会)でも存在しますが、世界の上下水道の政策担当者が議論をぶつけ合うような場に、日本からも参加して活躍できるような人材を育成する必要があると思いました。そういう場があることすら日本の上下水道界ではあまり知られていません。 本日は幅広いお話をありがとうございました。これからも熱いハートで日本の上下水道経営を指導ください。 第1935号 令和3年1月26日(火)発行(39)
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