(38)第1935号 令和3年1月26日(火)発行 が、それぞれの組織文化があり、なかなか良いアイデアが浮かびませんでした。飲み会だけは重ねましたが(笑)。 ただ、ここ数年、私は大分市上下水道局のアドバイザーをさせていただいていますが、大分市は統合した組織のつくり方をインフラ別でなく政策単位にしたり、職場環境を統合のシナジーを考慮したレイアウトにするなどの努力をされていて驚きました。シナジー効果を無理にひねり出させるのではなく、職員が自然に融合する環境をつくるのがリーダーの役割と教わりました。数値化しにくい定性的なシナジーを生み出していくことも大切と思います。そして、時間をかけながら、いずれは定量化・形式知とすることも大事です。浦上 広域化・共同化という政策の進め方においても、水道と下水道では違いがあると思います。水道は大阪府や香川県など都道府県単位での一元化が進んでいます。水道は法律でも民営化を認めているように、いろんな可能性があり、企業団化が比較的容易です。一方、公費が投入される雨水排除という目的を持つ下水道は、なかなか企業団のような枠組みで広域化を進めることは難しいと思います。ですから下水道の場合は、経営の主体が各市町村という枠組みはそのままで、市域や県境を超えた処理場の統廃合やソフト連携をメインに検討していくことになると思います。ただ、前述した英国のように下水道においても経営面の広域化は可能だと思いますので、中長期的に見れば、水道と同じように、下水道もマネジメントを広域的に行うような方向に進んでいくことを期待しています。そのマネジメントの枠が都道府県なのか、あるいは都道府県の中で地理的・地形的条件によっていくつかに分けられるのかということは各都道府県の事情によると思いますが。 これまでの経験からすると、広域化・共同化には非常に時間を要しますが、その中に必ず強力に引っ張っていくリーダーシップを持った人がいます。こうしたリーダーを発掘する、もしくはしっかりと育成することが大事ではないかと思います。また、人口減少は今後ますます加速化しますので、これまでと同じような時間がかかっていては事業の持続性確保に不安を覚えますので、もっとスピード感のある議論が必要になってくると考えます。 人口減少による人材不足などを考えると、広域化・共同化は官民連携がセットになって進むべきものとも思います。下水道は整備が概成し、投資が一旦落ち着いたことから、職員数はピーク時に比べると4割程減少しています。しかし、水道分野での反省もあるのですが、新規整備が終わったから人を減らすと改築更新に従事する人材が不足するという事態に陥ってしまいます。これは自治体だけでなく、民間企業でも同じです。これからの官民連携は上下関係ではなく、パートナーシップという形で、民間企業との協力関係を築くのは当然として、民間企業を育てながら将来の事業を安定させていくという意識も必要になるのではないかと思います。一方で、民間企業が上下水道事業に携わることについて世の中の理解が進んでいないように感じます。この課題に対しては、情報の出し方などを工夫し、住民の方々が我が事のように上下水道事業への理解・関心を高めてもらうしかないと思います。加藤 公務員の限界は何だろうかとよく考えるのですが、大きな限界の1つは所掌する自治体の地理的境界線と思っています。国家公務員なら国境になりますが。その境界線の外の市民のために働くというのは制度的にハードルがあります。これに対しては民間企業には境界線がない。広域化の推進には民間企業の柔軟性が重要です。“市町村主義”を諦めるという選択肢も加藤 広域化・共同化や官民連携についてお話しいただきましたが、それ以外の施策も含めて中小自治体の経営改善を進める上で必要なことは何だと思いますか。浦上 冒頭に加藤先生から紹介いただいた大船渡市のプロジェクトですが、東北大学の大村達夫先生も専門家の1人として参加されていました。そこで大村先生からいただいた「上下水道は都市における動脈と静脈だ」という言葉が心に残っています。人間にとって動脈と静脈が健康でないと生活できないことと同様に、都市においては水道と下水道が機能を発揮しないと元気になれないというわけです。まさにそのとおりだと思うのですが、では市町村が上下水道を都市の動脈と静脈として高い優先順位で経営に取り組んでいるかと言うと、甚だ疑問です。概成したという理由で職員も削られているのが現状です。 上下水道が常に元気でいるには、我々が人間ドッグ 第3種郵便物認可
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