× 第3種郵便物認可 道経営の研究を始めたのはどういうきっかけだったのですか。浦上 大学院の先生の一言ですね。私は神戸大学大学院経営学研究科で博士号を取ったのですが、1996年に大学院に入った時、師匠の1人で現在は神戸大学の名誉教授である佐々木弘先生から水道経営を研究するように勧められました。当時の私は水道に全く関心がなく、水道と聞いて寝耳に水だったので、即答はせず「少し考えさせてください」と言ってかなり悩みました。そこで、私にとってのもう1人の師匠で現在は神戸大学の副学長を務めている水谷文俊先生に相談したところ、ハーバード大学から帰ってきたばかりで海外の事情にも明るい先生から、「それは面白い。ナンバー1になるのは難しい。オンリーワンをめざすべき」と言われ、決心しました。 水谷先生は、研究論文は必ず英語で書いて海外で発表しなさいという指導でしたので、私も博士論文の一部を英語にして海外の学会で報告し、幸いにも海外ジャーナルに掲載されました。その後も、研究内容は日本の水道経営についてでしたが、研究成果は海外で発表することを続けてきました。博士号の取得後は、大阪府立の産業開発研究所を経て、2002年から近畿大学に職を得て現在に至ります。その間、2008年と2019年の計2回の英国留学も経験しました。 当初から水道を専門としてきたのですが、1回目の留学の前後あたりから、国や自治体の検討会や審議会の委員として声をかけていただくようになり、その流れで下水道の方にも首を突っ込むようになりました。2018年には国交省の下水道技術研究開発(GAIAプロジェクト)に採択され、下水道の研究も本格的に開始しました。 社会科学系の研究者で上下水道を専門としている人はいますが、他の分野も含め幅広くやられている人がほとんどで、大学院から変わらず上下水道に特化して研究している社会科学系の人間は国内で私くらいしかいないのではないでしょうか。そういう意味では水道、下水道に関しては日本でも有数の熱い男だと自負しています(笑)。加藤 恩師との出会いから始まった偶然のようなお話ですね。どういう世界でやりがいを感じて生きていくかは、計画的でなく、ちょっとしたきっかけで大きく第1935号 令和3年1月26日(火)発行(35)イラスト: 諸富里子(環境コンセプトデザイナー)コンセプト下水道【第18回】(特別対談「熱い人と語ろう!」Vol.9)~グローバルな視点で改善策を~ 「コンセプト下水道」の特別編として、ゲストを迎え、下水道やコンセプトについて語り合う「熱い人と語ろう!」シリーズ。第9回のゲストは近畿大学経営学部教授の浦上拓也先生に登場いただきました。オンリーワンの研究者加藤 浦上先生と初めてお会いしたのは、2013年度に復旧・復興支援の一環で国交省が岩手県大船渡市で行ったFS調査においてでした。私は東日本震災復旧支援の現地リーダーを務めましたので、なんとか復興モデルを被災地から発信したいという想いからプロジェクトを立ち上げました。被災地における「豊かな海」の実現に向けた官民連携による解決策を検討するもので、これがのちに“大船渡モデル”と呼ばれる「施設改良付包括運営」という先進的な官民連携事業につながるのですが、先生にはこのプロジェクトに検討の初期段階から経営の専門家として参加していただきました。その後も、「新下水道ビジョン加速戦略」の策定に向けた検討会で委員として参加いただくなど、現職時代から何かと接点がありました。 また、先生は2019年8月から1年間、英国に留学されていましたが、その間、私がPPP/PFIに関する現地調査でフランスを訪れた際にパリまで来ていただき、ワインを片手に歓談するという機会もありました。 上下水道経営を引っ張る第一人者として熱い思いで仕事をされている先生に、本日はいろんな話をお聞きしたいと思います。まずはこれまでのご経歴などの自己紹介をお願したいと思うのですが、そもそも上下水浦上 拓也近畿大学 経営学部 教授中小自治体の上下水道経営加藤 裕之東京大学 工学系研究科 都市工学専攻下水道システムイノベーション研究室 特任准教授
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