コンセプト下水道 第1回~20回
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第3種郵便物認可 ですが、官が自らフォーカスする部分、民間委託する部分(地元企業と大企業の仕分けを含む)、そして、横浜ウォーターのような公営力のサポートをする組織にお願いする部分、というように様々な業務を自治体の状況や長期的な戦略に基づいて「切り分け」することにもっと注力すべきですね。海外事業の原点、フィリピン・セブの技術協力プロジェクト加藤 横浜ウォーターは国内事業だけでなく、海外も手がけられているのが非常にユニークだと思っているのですが、これは会社設立時からの方針なのですか。鈴木 はい、そうですね。開港都市である横浜市は国際貢献に積極的で、上下水道分野でも様々な国を対象に人の派遣や研修による支援を行っています。ただ、国際貢献を飛び越えてビジネスとして展開するには自治体としての限度がある。その受け皿としての役割が横浜ウォーターに期待されています。 現在は国際協力機構(JICA)からの受託業務を主として、人材育成や制度設計、組織能力向上、施設整備、維持管理改善、PPP導入など、多岐にわたる支援を行っています。海外事業はこれまでの累計で24ヵ国、プロジェクトの数では約80にのぼっています。 水道分野において引き合いが多いのは、経営改善につながる無収水対策です。その原点はフィリピン・セブにおける無収水対策や24時間安定供給に向けた20項目を超える改善活動です。現地のオペレーションを徹底的に調査し、改善プログラムを企画提案・実施したところ、「これはまさに直営現場ノウハウに基づくこれまでにない素晴らしい活動だ」と現地から高い評価をいただきました。この案件でJICAの横浜ウォーターに対する評価も高まりましたし、大規模自治体のノウハウに基づく人材育成や無収水対策等の改善プログラムの先駆けになったのではと自負しています。加藤 自治体の外郭団体で海外展開を最も高い業務比率で多方面に積極的に取り組んでいるのは横浜ウォーターですかね。水ビジネスの海外展開には、官の顔と民の顔の両方を持っていて場面に応じて使い分けができる組織は強いです。現状のコロナ禍は別としても、今後も海外事業はやり続けていくお考えですか。鈴木 はい。ただし人員面の制約もあるので、今後の海外ビジネスのあり方については変化させていく必要があると考えており、今はいろんなことを検討しているところです。加藤 具体的なアイデアはあるのですか。鈴木 まだ詳しくは申し上げられないのですが、これまでの海外事業はどちらかというと途上国に対して日本側が教える立場にありました。しかし、組織の成長も技術の革新もそのスピードについては海外から学ぶことも多いですし、海外だからこそローカル基準で柔軟にチャレンジできることもあると思います。海外でビジネスを行うためには現地の技術力や調達力がカギになりますが、ICTを活用し、日本の自治体・企業と現地をつなげるような役割や機能を担うことを進めるべきですね。加藤 それは素晴らしい考え方ですね。日本にいて海外の事業体と協力してマネジメントするというのは理想的な姿かなと思ってます。モノのトンカチは現地に行かないとできませんが、ナレッジの活用や調達はICTを使えばできます。これからの人材には国内と国外を水平に見れる知識を持った人材が必要と考え、国交省の現職時代は無理してでも多くの若手人材に海外経験をさせましたが、国内の下水道事業のイノベーションにもきっと役立つはずです。鈴木 遠隔によるマネジメントという意味では、すでにベトナムの一部の施設を対象に国内からリアルタイムで管理・サポートできる環境を整備するなど、少しずつ取り組みを進めています。上下水道経営の楽しさを知ってもらいたい加藤 鈴木さんがもともと水の世界に入ったきっかけは何だったんですか。 第1927号 令和2年9月22日(火)発行(37)東大のハチ公像の前で(右が鈴木さん)

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