コンセプト下水道 第1回~20回
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第3種郵便物認可 た。祖母の家の前には早川という利根川の支流が流れており、私が寂しそうに早川を眺めていると、祖母が地図を持ってきて「この川はお母さんのいる前橋につながっているよ、同じ利根川流域だから」と言って、流域の仕組みについて教えてくれたのです。加藤 おばあさんがまず凄いですね。それにしても小学校前から流域を知っていたとは驚きです。子どもの頃の原体験は大事ですね。バックキャスティングという未来志向の考え方加藤 官民連携(PPP)についても伺いたいと思います。水道法改正などをテーマに橋本さんがメディアで語っている場面を拝見すると、どちらかというと民間は悪だという立場で出演されていることが多いように見受けられましたが(笑)、実際のところは官や民の議論についてどうお考えなのでしょうか。もしかすると誤解されている部分もあるのかなと思いまして。橋本 水道にしろ、下水道にしろ、民間は一切携わっていないという意識で話をされる一般の方が多いです。しかし現実はずいぶん前から多くの割合で民間が携わり、官民連携が行われています。そうしたことを踏まえた上で、私は官と民のバランスが重要だと考えます。官が強く民に適切な対価を払っていないところもあれば、逆に官が民間に任せっきりで民間の言いなりのようになっているところもある。官民連携は必要不可欠だと思いますが、先程も言ったように、現在の解だけに目を向けるのではなく、10年後、20年後の将来的な上下水道経営を見つめた上で、よりよいパートナーシップを組むことが重要だと考えます。そうした観点で言うと、現在の課題を解決するという契約方法だけではなく、今後どうなっていくかという中長期的な視点を取り入れた契約方法やモニタリング体制が必要ではないか。これが官民連携に対する私の意見です。 それから、もっと自治体は将来のあるべき姿を考えていただきたいですね。それを考えないで「官だ、民だ」という議論するのは変に感じます。「こうなりたい」という将来像があった上で、そのためには「どういうパートナーシップを組むべきか」が次にくると思うからです。加藤 まずは将来像を自ら考えるべき、ということですかね。橋本さんの近著『対話して行動するチームのつくり方』(三省堂)を読みましたが、その中でも、未来の理想像を起点として今何をすべきか考える“バックキャスティング”という思考法が紹介されており、なるほどと納得しました。というのも、役所は現状分析型をとることが多いので、ある意味、真逆なんですよね。橋本 上下水道管理者が考えた将来像を市民や首長、議員にきちんと知ってもらいたいとも思います。最近も新型コロナを受けて利用料金等の減免措置をとった自治体がたくさんありましたが、上下水道の将来像を知らないのにそれを当たり前と思っている首長や議員が多く、市民もそれに疑問を持っていません。現実とリテラシーのギャップを感じます。加藤 日本の上下水道事業はまだまだ透明性が低いということが言えるかもしれません。裏を返せば、水に興味を持ってもらえていない。大学で教員をやっていますが、どうしたら学生が水に興味を持ってくれるかは大きなテーマです。人・モノ・カネのマネジメントと言いますが、人についてはすでに下水道の世界にいる人をマネジメントするだけではいずれ限界がきます。この世界に入ってくる人材にも目を向けないと本当のマネジメントはできないと感じており、そうした意味でも本日はいろんなヒントをいただきました。ありがとうございました。 ◆お知らせ◆下水道システムイノベーション研究室のホームページ(https://www.envssil.t.u-tokyo.ac.jp/)を開設しました。研究室の活動など随時アップしていきます。第1925号 令和2年8月25日(火)発行(35)橋本さん著『対話して行動するチームのつくり方』(三省堂)

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