(30)第1923号 令和2年7月28日(火)発行 れます。しかし新型コロナやノロウイルスには水質基準のような規則はありませんので罰則は科せられません。加藤 下水道管理者が悪いことをしたから検出されるわけではありませんからね。このあたりに先ほどお話した、官と学の隙間がありそうに思います。大村 そうです。官側には、もっと大らかな気持ちでいてもらいたいですね。むしろ、そうしたウイルスも下水道システムによって集約・除去されているわけで、社会に貢献しているという自信を持ってもらいたいと思います。加藤 はい、今回のコロナ対応も官と学の日頃からの信頼関係が試されていると思います。地域に適した多様な下水道へ加藤 水質情報の活用にも通じる話だと思いますが、先生は下水道を地域振興につなげる「カラフル下水道」というコンセプトをお持ちです。「カラフル」は“多様な”という意味だと解釈しているのですが、そこに込めた思いを語ってください。大村 日本は一極集中型の社会です。しかし、これだと今回のような感染症に非常に弱いことが露呈しました。地震などの自然災害にも同じことが言えます。ではどうすべきかを考えると、やはり地方分散・地方分権という流れになると思います。そして、それを担保する重要なインフラの1つが下水道だと私は考えています。 そこで、これからは下水道を、全国一律でなく、それぞれの地域に適した形に見直していくことが大事になると思います。すでに佐賀市のように海苔養殖のために栄養塩を供給している事例もありますし、三陸沖では牡蠣のノロウイルス対策で下水道が担う役割があるかもしれません。下水処理場だけ変えるというより、その集水域や地域全体を変えるという視点も必要です。加藤 例えば下水道資源でエネルギーや食を生み出す場合、地域の人はなるべくそれらを使う、あるいはエネルギー等をつくりやすい形に習慣を改めるなど、すべてを変えて、その中心に下水道システムをはめ込むというイメージでしょうか。大村 そうです。加藤先生が国交省時代に立ち上げたビストロ下水道なんかは、まさにその核になりますよね。加藤 今は特に新型コロナの影響で地方に移住したいという人の割合が高くなっているそうですね。大村 そうした人たちの意識に応えるためにも、各地方がいろんなことを考え、用意しておく必要があると思います。加藤 各地域の個性やそこにある宝は何なのかを今一度考え、それを軸にまちづくりを行い、その中に下水道がある。これが先生のおっしゃる「カラフル下水道」の姿でしょうか。これまではつくることで精一杯で、同じものにならざるをえなかった、という面もあったかと思います。一方で、同じものをつくるというのは、“規模の経済”が働き、安く早くという大量生産が可能でしたし、企業に利益ももたらした。これからはそれが難しい時代になります。そうした意味では下水道業界も変わる必要があると思います。大村 ぜひ変わってほしいですね。加藤 業界の話が出たので、合わせてお聞きしたいのですが、先生はPPP(官民連携)についてはいかがお考えですか。大村 方向性としては間違っていないと思います。課題はいかに市民の信頼を得るかだと思います。加藤 そうですよね。一般的には公務員のやることは非効率だと社会的に非難されることも多いのですが、なぜか水の問題については、「公務員こそやるべき」「信頼感がある」という声を多く聞きます。以前に、「安全」と「安心」というトピックをこの連載で取り上げましたが、民間も官も、長期的に市民に信頼される組織になるには何をすべきかを考える必要があると思います。出資者でもあり、使用料を支払うのは市民ですから。市民からの信頼感が安定的な経営を行う生命線です。 さて、宮城県では上工下水一体型の大規模なコンセッション事業が予定されており、現在、事業者選定の手続きが進んでいます。先生は、事業者選定等を行う検討委員会で委員も務められていますが、事業や事業者に対してどういう部分に期待されますか。大村 上工下水一体型という点が最大の特徴だと思いますので、その点を活かした、今までにない何か社会や地域に貢献できるような取り組みが出てくると面白 第3種郵便物認可
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