第3種郵便物認可 の活動について今後の展望をお話いただけませんか。私はコロナに限らず、官と民、民と学に比べると、官と学の連携において下水道界ではベクトルが違うことや、隙間があるのではと思っています。大村 新型コロナ感染症の状況把握に向けて、タスクフォースのメンバーである大学の先生が下水道事業体の力を借りて流入下水試料の採取し、新型コロナの検出・定量に取り組み始めています。しかしながら、新型コロナの分析には公定法がありませんので、タスクフォースのミッションの1つとして、新型コロナの検出・定量のプロトコールを3、4ヵ月後をめどに作成することになっています。流行時の下水中からの新型コロナの分析は本来民間企業が対応できればと考えています。そうすれば迅速に大量の下水サンプルの分析に対応できますし、アメリカでは実際に民間企業が400ヵ所ぐらいの下水処理場で分析を始めているようです。そういう意味で言えば、民間が使える新型コロナの分析プロトコールを作成して示すことがタスクフォースの役割でもあるとも思っています。もちろん、タスクフォースのメンバー間の情報交換において、同じプロトコールを用いた分析結果はバイアスなしの情報交換を可能とし、分析結果の議論の深化に役立つことは言うに及ばないことです。加藤 公定法や測定法は研究者の皆さんが考え、実務は民間が担うということですね。確かに大学の先生だけではマンパワーに限界があります。官が行うことの標準を世界的見地から学がつくり、民が普及させるという形ですね。「連携」という曖昧な言葉の意味は、得意技の役割分担で普通以上の成果をあげること。野球の守備で言えば野手の連携によりワンプレーでツーアウトを取るダブルプレーみたいなものですね。大村 また、今回の新型コロナで、未知のウイルスに対する備えが必要だということが改めて認識されましたが、タスクフォースではその備えについての提言も最終的に考えることになると思います。 例えばですが、流入下水の保存についてです。学校の給食は、食中毒などが起こった時に何が原因か調べられるよう、2~3週間分を保存しておく決まりがあります。下水道も、今回のような未知のウイルスに備えておくため、流入下水を1ヵ月程度、常に保存しておけないか。いつ何が起こったかが分かりますし、それが分かれば次の備えにもつながります。加藤 それは社会的な意義のある仕組みですね。ローテクでいいので、手間をかけず、簡単に採取できる仕組みができれば、なおいいですね。大村 流入下水の水質情報は、感染症対策だけでなく、様々な用途に使えると考えています。例えば下水中に含まれるゲノム(遺伝情報)を解析することで、ウイルスの抗体などの開発が進む可能性があります。下水が持っている情報を価値化し、技術開発につなげ、社会的な課題に対応する。これが理想です。加藤 そのお考えは、先生に個人的にアイデアをいただき国交省時代に新下水道ビジョンや加速戦略に組み込ませていただきました。下水道システムの有する資源は汚泥や熱だけでなく、下水そのものの持つ「情報」も下水道の新たな資源と直感しました。ただ、正直、新ビジョンに入れた当時から下水道部内で興味をもって反応する人は少なかったです。「また加藤さんが変わったこと言っている……」くらいの反応でしたが(笑)、先生は下水の持つ情報に10年近くも前から注目され調査されてきました。そして、今は新型コロナを切り口に脚光を浴びています。大村 新型コロナが1つの契機になってもらいたいという願いはあります。ポストコロナでは、改めて水質情報の活用について考えてもらえると有難いですね。 それから自治体に対して申し上げたいのが、これを機に自分たちのやっていることを怖がらないでもらいたいということです。自治体の方々は、新型コロナやノロウイルスが下水処理場に入ってくることに戦々恐々としているように見受けら 第1923号 令和2年7月28日(火)発行(29)大村氏加藤氏
元のページ ../index.html#28