コンセプト下水道 第1回~20回
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×(28)第1923号 令和2年7月28日(火)発行 しれません。先生は一連の動きを見て何か思うところはありましたか。大村 一番気になったのは、今回の突発的な新型コロナ感染症に対する政治の関わり方です。国民が安心で納得できる施策を迅速に発信する体制が整っていなかったことが明らかになったと思います。急に設置された専門家会議は医療と感染症の専門家で組織されました。もし、常日頃から突発的な新型コロナだけでなく一般の感染症に対しても、医療や感染症の専門家だけでなく、法律、経済、文化・風習、倫理、宗教など幅広い専門家が集まり、多角的な観点からの感染症対策を準備していれば今回のような混乱はなかったのではないかと思います。同時に、海外の感染症動向など最新の情報に常に網を張った組織であるべきと思います。 我が国には、国内外の感染症に関する動向調査や情報発信などを担う国立感染症研究所という組織がありますが、ぜひ多角的な観点からの感染症対策を創出できる機能も備えて欲しいと思います。そうすれば、新型ウイルス感染症が出現したときに、国民が納得できる対策を講ずることができるのではないでしょうか。 そしてまた思ったことは、感染症の予防や治療に対してワクチンや薬の開発は重要ですが、どうしても感染症がある程度流行してからの対応になりますし時間もかかります。そこで、感染症の流行を事前に予知し、今回の新型コロナで実践された三密の回避やロックアウトなどの対策を行えば流行を阻止出来るのではないかと思っています。その方法の1つとして期待しているのが、我々のグループがJSTのCRESTプロジェクトで開発したノロウイルス感染症の流行防止のための水監視システムの活用です。流入下水中に含まれるノロウイルス濃度をモニタリングし、警報を発信するシステムで新型コロナにも適用できるのではないかと考えています。第2波、第3波などの流行予兆や終息を検知することが出来るかもしれません。加藤 今年5月に設立された日本水環境学会の「COVID-19タスクフォース」の活動の一環で、メディア等でも話題になっていますね。先生は同タスクフォースの代表を務めておられますが、代表の立場から離れて個人的な見解でも構いませんので、タスクフォース第3種郵便物認可イラスト: 諸富里子(環境コンセプトデザイナー)コンセプト下水道【第12回】(特別対談「熱い人と語ろう!」Vol.3)カラフル下水道~ポストコロナの地域のあり方~ 「コンセプト下水道」の特別編として、ゲストを迎え、下水道やコンセプトについて語り合う「熱い人と語ろう!」シリーズ。第3回は東北大学名誉教授(未来科学技術共同研究センターシニアリサーチフェロー)で、日本水環境学会の「COVID-19タスクフォース」の代表も務められている大村達夫先生に登場いただきました。コロナを契機に下水道の水質情報に注目してほしい加藤 大村先生とは東日本大震災の直後に仙台市の南蒲生浄化センターでお会いしたのが初めてでした。その後、先生は南蒲生浄化センターの復旧方針を検討する委員会で委員長を務められ、私は国交省から復旧対応の現地リーダーとしてしばらく派遣されていました。東日本大震災がなければ、先生とは出会わなかったかもしれませんし、私も学生教育や研究に強い関心を持たなかったかも知れません。恩師とも呼べる存在の先生に、本日はまず、ウイルスの専門家の立場から新型コロナについて語っていただきたいのですが、いかがでしょうか。大村 コロナウイルスはどこにでもいます。皆さん、よく「風邪をひいた」と言われますが、原因は大体がコロナウイルスです。加藤 新型はタイプが違うだけ、ということですよね。今回、新型コロナをめぐっては、いろんな示唆があったと思います。人々の生活様式がよく言われますが、国のグラウンドデザインを見直す必要も出てくるかも大村 達夫東北大学 名誉教授未来科学技術共同研究センター シニアリサーチフェロー加藤 裕之東京大学 工学系研究科 都市工学専攻下水道システムイノベーション研究室 特任准教授

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