コンセプト下水道 第1回~20回
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(38)第1921号 令和2年6月30日(火)発行 わたって民間に事業運営を任せるような垂直型のPPPなら市民への付加サービスとして紙オムツ受入などのサービスを提案する事業者が現れるかもしれません。使用料を“3階建て”で考える阿部 紙オムツに限らず、ウイルス検知や、ビストロ下水道も含めたバイオマスの利活用など、下水道は多様かつ大きな可能性を秘めています。公共事業としてこれまで果たしてきた役割を引き続きしっかりと担いつつ、必要としている人にだけ有料で提供するサービスも共存させていく。こうした波になかなか下水道管理者が乗りきれていないのは、現状の使用料体系ではそのような利用方法を想定していないことにも理由の1つがある気がしています。 実は1つ、アイデアを持っているんです。多くの自治体では「基本使用料」と「従量使用料」の2部使用料制を採用しています。いわば“2階建て”です。これに、例えばディスポーザーやオムツの処理装置を使いたい人は毎月いくらか払ってそのサービスを利用するといった3つ目の層を導入できないか。すなわち使用料を“3階建て”の体系とできないかという発想です。1階と2階は公共事業として、3階は「下水道 as a Service」として捉える。3階部分を使ってどれだけ収益を増やせるかが知恵の絞りどころになります。加藤 下水道管理者からすると使用料がとれて経営的にプラスですから、悪くない話ですね。「施設が古くなったから使用料を上げたい」だけでなく、同時にサービスアップがあることがわかりやすいと思います。阿部 3階部分で使用料をとるには、装置の使用状況を継続的に監視できるセンサーなどの新技術導入検討と連携していく必要があります。ただ、使用料などの経営を考えることと、新技術の導入を考えることが、なかなかうまく組み合わさっていないという課題もあります。 そこで国交省下水道部では、経営を担当する管理企画指導室と技術開発を担当する下水道国際・技術室が一緒になって“経営のための技術”をテーマに検討を始める予定です。具体的には、新技術の導入がどう経営改善に貢献できるのかを明確化する簡易なツールを国が開発し、それを使って例えば既に運用している「Model G」(下水道事業における長期収支見通しの推計モデル)に、新技術の導入など技術面での取り組みによるコスト縮減への効果という視点を追加することなどができないかと考えています。加藤 それは良い取り組みですね。私も自治体が作成するバランスシート(貸借対照表)がそもそも過去の結果であることと、技術的な視点がないことに問題意識を持っていました。技術開発に一生懸命取り組んで 第3種郵便物認可看護小規模多機能型居宅介護サービス「坂町ミモザの家」での意見交換会(㈱ケアーズの秋山正子代表(前列最左)、明治大学の園田教授(前列左から2番目)、坂町ミモザの家管理者の秦実千代さん(後列右から2番目)などの皆さんとともに)いる現場の人たちの成果が見える形で経営に反映されづらい。阿部 “3階建て”の議論もそれ(経営と技術の連動)に近い話かなと。このように「as a Service」を意識した動きがじわじわ広がるといいなと考えています。加藤 阿部さんを中心に“as a Service研究会”のようなものをつくったらどうですか。まずは5人(5団体)くらいからはじめて。ビストロ下水道なんかもそうでしたよ。その代わり、共感してもらえる人を探すのにエネルギーを使わなければいけませんが。阿部 下水道関係者だけでなく、他分野の人にも加わってもらえると心強いです。まちづくりやまちの経営を専門にした人とか。加藤 確かに都市経営の世界に近いですよね。どちらかというと行政より民間の方に都市経営の専門家が多い気がしますが、本当は自治体にこそ都市経営のノウハウが必要です。 ところで他分野と言えば、国交省では昨年度から異業種とのマッチングイベントを開催されていますよね。参加者からの声を聞きましたが、評判いいですね。その場の出会いから個別に動き出しているケースもあるようですよ。阿部 参加者の本音を聞ける機会は少ないので、モチベーションがあがります。紙オムツのプロジェクトでもオープンイノベーションの場として「Deasy Conference」という連絡会議を開催していますが、ある企業の方が、その場で発表した後に参加者から取り囲まれ、いろんな提案や売り込みを受けたと言っていました。イノベーションにおいて民間同士の交流は欠かせませんよね。加藤 そうですね。また、そうした「場をつくる」ことは、国交省のリーダーシップとしても大事なことだと思っています。プラットフォームの胴元を務めるというか。是非これからも続けていただきたいです。本日はありがとうございました。いつもより緊張しました(笑)。 対談は5月中旬にオンラインで収録

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