コンセプト下水道 第1回~20回
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×(36)第1921号 令和2年6月30日(火)発行 整備されたネットワークを使って別のサービスをはじめるという発想です。 下水道も、基盤の整備が進み、概成が間近に迫ってきました。汚水処理や雨水排除などの下水道を整備した当初の目的から一歩進んで、まちや地域のために役に立つサービスを提供できる段階になったのかなと考えています。 国交省の社会資本整備審議会計画部会でこれからの社会資本整備のあるべき姿について議論が始まっていますが、その中で「インフラ空間の多面的・複合的な利活用による生活の質の向上」もテーマの1つになっています。この考え方と「下水道 as a Service」は近いと思っています。他のインフラも同じような局面にあるのでしょうし、そこに下水道が乗り遅れてはならないと思っています。加藤 空間をシェアして効率性とサービス向上を図るという発想ですね。これまでモノをつくり続けてきた私のような世代にとって「サービス」というコンセプトは新鮮で新たな発想をうみ出す可能性を感じます。「サービス」という市民目線に立てば新たなアイデアやイノベーションがうまれやすいのではないでしょうか。セクションの壁を打ち破れない、または壁に気が付かない時でも、市民目線で考えると他セクションのことも意識せざるを得ないからです。インフラの目的が市民の生活だとすると、福祉や教育などの他分野との連携という発想も自然とうまれるはずです。一緒に取り組むことで効率性アップだけでなく新たなアイデアが出てきます。 私は「下水道 as a Service」という言葉をまず立ててみることが大事だと思いますね。この言葉を見た人が、この言葉はどういう意味だろう、これから何が生まれるのだろうと考えるきっかけ、転換点になるからです。箱の中はあとから埋めていけばよいと思います。「下水道」と「下水道以外」阿部 紙オムツ受入プロジェクトがうまれたきっかけは、下水道や住宅に関わる女性たちでつくった「下水道・ライフ・えんじん研究会」だったのですが、その場で最初は下水道の仕事をいったん忘れて、30年後に自分たちがどう生活していたいかというところから議論を始めました。ですから、皆あれこれ好き勝手言って一見下水道とは関係のない議論が多かったのですが、その議論を分解してみると「これは下水道が役立てるのではないか」という宝探しができることに気がつきました。 紙オムツの話なんかはまさにそうですが、主婦的な目線でお金をかけてつくった下水道をどう使いたおせるかという視点と、下水道からはひとまず離れてどう第3種郵便物認可イラスト:諸富里子(環境コンセプトデザイナー)コンセプト下水道【第11回】(特別対談「熱い人と語ろう!」Vol.2) 「コンセプト下水道」の特別編として、ゲストを迎え、下水道やコンセプトについて語り合う「熱い人と語ろう!」シリーズ。第2回のゲストは国土交通省下水道部下水道企画課の阿部千雅下水道国際・技術室長です。少子高齢社会への対応として下水道への紙オムツ受入れの可能性を検討する「Deasyプロジェクト」の発起人の1人で、異業種を巻き込んだオープンイノベーションにも積極的に取り組まれています。ストックのシェアと市民目線加藤 阿部さんは国交省の職員として私の後輩でもあるのですが、新しいことをはじめたり、他分野の人とつながりを持ったりと様々なことにチャレンジされています。下水道部で上司と部下の関係だったのは、私が流域下水道課(当時)の補佐時代でしたが、全国の下水道関係者をつなぐ「ヤング下水道」など役所では普通やらないことにチャレンジされていましたね。今回は下水道をサービスとして捉える「下水道 as a Service(アズ・ア・サービス)」というコンセプトについて熱く語っていただきたいと考えています。阿部 私がこのコンセプトを知ったきっかけは、下水道への紙オムツ受入実現に向けた「Deasyプロジェクト」の実行委員長である明治大学理工学部建築学科の園田眞理子教授の提唱でした。下水道を旧来型のインフラでなく“サービスとして”提供することに価値転換できないかという考え方です。例えば電話の通信網です。かつては固定電話を設置するには初期費用がかかりましたが、これが黒電話の時代は何万円もして結構高かった。通信網の整備などにかかる費用の一部を受益者が負担することで電話の早期普及をめざす、という趣旨だったそうです。それが今では通信網の整備は進捗して料金体系も多様になり、さらに余った容量を他の事業者に使わせる時代になりました。つまり、阿部 千雅国土交通省 下水道部 下水道企画課下水道国際・技術室長下水道 as a Service~使いたおすと宝が見つかる~加藤 裕之東京大学 工学系研究科 都市工学専攻下水道システムイノベーション研究室 特任准教授

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