第3種郵便物認可 必要な貧困層に届けるには安価に販売する必要があり、それでも持続可能なビジネスとして成立させるためにはスケールアップ(全国展開)して多くの人に届け、面で展開することが必須です。しかしそのためには全国に栄養教育を展開しなければならず、企業が単独でやるとなると莫大な費用がかかり現実的ではありません。そこで、お母さんにとって最も身近で、インフルエンサーでもある看護士さんの存在に着目しました。看護士さんに製品を知ってもらうことで、全国にいる看護士さんを通じて効果的かつ効率的にお母さんたちへ栄養教育を行うことが可能になるからです。ガーナでは看護士さんは行政の立場ですから、協力を得るためには官との連携が必要になります。低所得層を対象とする国際的な事業活動を「BOP(Base of the Pyramid)ビジネス」と呼びますが、BOPビジネスにおいてこそ官民連携が必須であることを身をもって経験しました。加藤 顧客にとって未知の製品を売ることは、最も難しいビジネスですよね。まさにイノベーションだと思います。まず顧客が信頼する人を厳選して、製品の良さを知ってもらい、その人から広めてもらうという戦略は、イノベーションの水平展開において非常に効果的な方法であることを再認識しました。ビジネスとしてのSDGs加藤 ガーナ栄養改善プロジェクトは、国連のSDGs(持続可能な開発目標)にも通じると思います。援助に頼らず持続するためにはビジネスとしてまわしていく必要がある。こうした経営的な視点に重きを置いている点がSDGsの特徴だと思っているのですが、高橋さんはどうお考えですか。高橋 おっしゃるとおり、ビジネスの視点は大事だと思います。ガーナ栄養改善プロジェクトは、SDGs17のゴール全てに関連します。その中でSDGsのゴール2「飢餓をゼロに」(栄養改善)だけでなく、ゴール8「働きがいも、経済成長も」の達成にも貢献できるものだと考えています。すなわち、ゴール8を念頭に、現地で製造する、現地の原料を使用する、現地の雇用を生み出すことなども考えながら取り組んでいます。極端な話ですが、我々が製品を無償で提供すれば、飢餓は解消され、ゴール2はクリアできます。しかし同時に、現地のビジネスは無償の製品によって淘汰され、破壊されてしまいます。現地のビジネスをうまく活用しながら進めることが重要です。そして重要なのはゴール17「パートナーシップで目標を達成しよう」です。社会課題の解決には多くの関係者との連携が重要で、我々は、ガーナ政府との官民連携が不可欠です。 また、SDGsの考え方は、途上国だけでなく、先進国でも適用できます。その点で言えば、佐賀市のプロジェクトも、ゴール7「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」、ゴール12「つくる責任、つかう責任」、そしてもちろん、ゴール17「パートナーシップで目標を達成しよう」などに該当すると考えています。加藤 通常のビジネスとSDGsにおけるビジネスの考え方で何か違いはありますか。高橋 特に違いを意識する必要はないと思います。SDGsでは世界共通の課題として17のゴールが掲げられ、全てがリンクしていますが、同時にそれぞれのゴールをビジネスチャンスとして捉えることも可能です。社会課題の解決を追求していけば、自然とSDGsにつながっていくと思います。 今、新型コロナウイルスが世界で猛威を奮っています。SGDsは何となく平時のものという印象を持たれがちですが、SGDsの理念に基づいたコロナ対策の必要性がもっと言われてもいいように思います。SDGsに取り組んでいるように見えて実態が伴っていないことを“SDGsウォッシュ”と呼びますが、今後は、淘汰されるのではないでしょうか。というのは、アフター・コロナにおいては一部の利益だけを狙うという考え方が排除される世の中になると思うからです。また、アフター・コロナでは、これまでSDGsはどちらかというと途上国の課題解決が主で、先進国の日本人には関係ないと自分ゴト化されていなかった様々な課題がコロナにより顕在化され、自分ゴト化する気がしています。そうした意味では、これからもっと、SGDsの理念が重要視される時代になると考えていますし、SDGsのゴールから本業を考えていくという逆の発想も重要になってくると思います。加藤 いろんな会社がSGDsに取り組もうとしている中、どうやっていいか分からないところも多いと思います。私は、SDGsは経営戦略の中枢にあるべきものだと思っているのですが、今回の高橋さんの話を聞いてその思いを強くしました。「熱い」シリーズ第1回のご登場、本当にありがとうございました。対談は4月末にオンラインで実施、高橋さん(右)が手にしているのがガーナ栄養改善プロジェクトで開発された栄養サプリメント「KOKOPlus」 第1919号 令和2年6月2日(火)発行(39)
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