コンセプト下水道 第1回~20回
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第3種郵便物認可 なく数値を作成した「自分が見られる」というわけです。このことを、現職として下水道事業を担当していた時にしっかりと認識しておけば、うまくいかなくてもイライラしないし、もっといろんな努力ができたような気がします。 さらに美馬先生は、市民側、伝えられる側もマスコミの報道やネットの情報を鵜呑みにするのではなく、自ら勉強し、客観性を持って考える習慣を身につけるべきと説きます。そのためには、先生も書いていますが、普段からの双方のコミュニケーションが鍵になります。価値観を共有しておく必要があるわけです。そこで、ピンときたのが本連載の第7回でお話しした市民科学などの取り組みです。はこだて国際科学祭2019におけるパネルディスカッション(右から美馬先生、明電舎の平井氏、筆者)官も民も、市民との「すき間」を埋めるべき 私はこれまで、ビストロ下水道やGKP(下水道広報プラットフォーム)、グリーンインフラなどの活動に携わってきました。これらは全て「コミュニティ形成=信頼関係の構築」を促す一面があります。また、市民の意識や習慣を変える観点から言えば、市民科学という市民が主体の取り組みにも力を入れています(最近はクワガタに執心し過ぎていますが……)。そう考えると、これまで個別に行ってきたビストロ下水道や市民科学などが、「安全と安心のすき間を埋めるため」という1つの大きな目的に行き着く活動になっていたのではないか、と感じるようになりました。全く違う目的・動機で始めたプロジェクトや活動にとても大切な意義があったのでは、と改めて認識した思いです。いろんな活動が1つにつながったスッキリ感とでも言いましょうか(決してドヤ顔で話してはいないですよ)。 また、安全と安心のすき間を埋める作業は、官民連携(PPP)を考える上でも重要だと考えています。水道法改正等、水の官と民をめぐる議論では、民間企業に任せるのは信用できないという感覚、主観的で暗黙的なもの、が市民にあるのは事実です。では、その「すき間」をどう埋めるのか。おそらく、客観的な事実や実績、どんなに素晴らしいBCPを説明しても、完全には「すき間」は埋まらないでしょう。日頃からの市民とのコミュニケーションを通じた信頼関係の構築、それが安定的な事業経営にもつながります。PPPが広がるにつれて、今後は一層、行政と市民の間だけでなく、民間企業と市民の間においてこそ、安全と安心のすき間を埋める努力が必要になってくるのではないでしょうか。もしかしたら、自治体職員よりも、民間企業の職員の方が、コミュニケーションは得意かもしれません。これも、本連載の第8回でお示ししましたが、ボルドーメトロポールの部長のチャートでは、メトロポール職員と水メジャー職員の、コミュニケーション力は同点でしたね。 読者の皆さんは、どのように「すき間」を埋めるのが良いと思いますか? そこから、信頼を得て、持続的な経営基盤が確立され、新たなイノベーションもが生まれるかもしれません。逆に「すき間」があるまま、非常時を迎えると、適切にマネジメントできないでしょう。 大学教員となりほぼ1ヵ月が経ちましたが、教員同士の打ち合わせは全てZoomによるオンライン会議で、学生への卒論テーマの説明もZoomで行いました。今は、研究室のホームページの立ち上げ準備などをしています。直接、お話しして「すき間」を埋められる時が来るのを楽しみにしています!!(2020年4月末・本駒込の自宅にて) 第1917号 令和2年5月5日(火)発行(41)

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