コンセプト下水道 第21~38回
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第3種郵便物認可 スや策定後のCAPDを評価してもらいたいですね。最近は管理者や局長に総務部局や財政部局出身の下水道未経験者が就任するケースが増えました。こうした人たちに下水道事業の面白さを知ってもらい、味方になってもらうことは非常に重要だと思います。交付金交付の要件も、例えば「市長や管理者が現場視察を行い、自ら判断していること」など、プロセスを重視したような項目があってもいいのではないでしょうか。タイプの違う2人加藤 私の役所時代でとくに思い出深い仕事の1つが、新下水道ビジョンの策定から下水道法・水防法の改正までの一連の流れです。現日本下水道協会理事長の岡久宏史さんが下水道部長、増田さんが下水道事業課長、私が流域管理官のときがあり、部長を挟んで部内でよく議論しました。増田 加藤さんが雨や流域、私が事業マネジメントというように、役割分担して政策を考えましたね。加藤 岡久さんからは「大事で新たな仕事だから、あえて違うタイプを揃えた」と聞いたことがありますが、本当ならすごい発想の人事です。増田 そう、私は地上戦しかできないんですよ。陸軍の歩兵隊が泥臭く匍匐前進するような。一方、加藤さんは空中戦が得意で、私から見ると華やかで羨ましかったですね。私は新下水道ビジョンで「補完 」というキーワードを打ち出しましたが、加藤さんの知恵を借りていたら、もっとうまく発信できた、共感が得られたんじゃないかと思ったりもしています。加藤 陸軍と空軍ですか、なるほど。確かにあの頃の私は1人で銀の龍の背や宙船(そらふね)に乗ってスピリチュアルの世界まで飛んでいっていましたから(笑)。 それはともかく、増田さんはとても論理的な戦略家という印象です。現状をしっかりと分析して課題を特定し、目標に向けて海図を描くように戦略を考え、着実に船を漕ぐ。そう考えると、独立して経営者になられたのは不思議ではない気がします。増田 私は常に加藤さんの発想力に刺激を受けていました。ヘーゲルの弁証法で、一見相反する2つのものの融合を「アウフヘーベン」と言いますが、我々もそんな感じかもしれませんね。加藤 もう50歳を過ぎていましたし、正直、法改正のときは徹夜もあり、体力的にきつかったな。同じ年の増田さんが頑張る姿が見えたので、自分を鼓舞して凌ぎました。でも増田さんは徹夜明けでそのまま競馬場に行ったりして、唖然としましたよ。増田 そんなこともありましたね(笑)。競馬場にいるときに仕事のアイデアが浮かんだので、レースプログラムに走り書きし、それを翌日、職場の部下に渡すと「増田さん、何に書いているんですか」と怒られたこともありました。加藤 でも、アイデアが浮かぶのはそんなときですよね。私も、ジムのランニングマシーンで走っているときなんか、よく政策のアイデアが浮かび、自分の携帯宛てにメールを打ったりしていました。ただ、今は絶対しません。YouTubeで薬師丸ひろ子や森高千里を聞きながらリズミカルに走っています(笑)。増田 そういう意味でも、仕事とプライベートの関係は大事ですよね。私はクラシック音楽も好きなのですが、平日の夜のコンサートと週末の競馬のおかげで仕事も楽しくできたと思います。 ワーク・ライフ・バランスという言葉がありますが、ワークは悪だからワークの時間を減らしてライフの時間を増やしましょうではないだろうと。対立の構図ではなく、2つが融合して、より高みにのぼっていく、まさにアウフヘーベンですね。加藤 うまく締めてくださり、ありがとうございます。今回は増田さんの熱い思いも聞けて、まさに「熱い人と語ろう!」シリーズにぴったりの内容でした。それぞれ違う世界に進みましたが、チャンスがあればまた一緒に仕事がしたいですね。でも厳しい地上戦はお任せします(笑)。 第2001号 令和5年9月5日(火)発行(31)

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