コンセプト下水道 第21~38回
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増田さんたいという思いはありましたね。 加藤さんも同じだと思いますけど、国交省で働いていると、40歳頃から立場上、企業の社長さんと会う機会が増えるじゃないですか。そのときに何歳になっても自分の夢を持ち続けている社長さんを見ると、とても魅力的に感じるわけです。そうした人たちに憧れはありましたね。加藤 分かります。会社の規模とか関係なく、夢を持っている熱い人がいます。増田 そうそう。実は50歳手前ぐらいに、一度本気で独立を視野に事業計画を作成したこともありました。国交省での仕事もやりがいがあり、直ちにとはなりませんでしたが、思いは持ち続けていましたね。加藤 まったく気がつきませんでした。ただ、私も50歳くらいで東日本大震災を経験し、霞ケ関より若い人たちに経験を伝えるのが使命かもしれないと何となく感じていました。 増田さんは独立志向があったわけですね。確かに増田さん、昔から何でも1人でできるタイプでした。幹部になってもパワーポイントの絵なども自ら楽しそうに作成したりして。増田 そうですね。あまり人を信用していないのかな(笑)。加藤 現在は複数の企業と契約されていると聞きましたが、具体的にはどんな業務をされているのですか。増田 定期的に社員の方々に集まってもらい、講演と意見交換を行っています。もともと頑張る経営者を応援したい、勇気づけたいという思いがありましたから、経営層とディスカッションするところから始めました。すると会社によっては、もっと若い社員を育ててほしいという声もいただくようになりました。それはそれでやってみると面白いものです。加藤さんも大学で学第3種郵便物認可 れもまちづくりや都市計画という昔からの夢が根本にあるのですか。増田 そうですね。ただ、夢と現実はだいぶ違いますが。加藤 経営にも興味があったのですか。増田 独立して経営をやり生を見ているから分かると思いますけど。加藤 ええ。この年になると、若者が成長していく姿を見ると楽しいんですよね。「この子にはもうあっという間に抜かれるな」と感じるのは気持ちいいです。たまに、自分ももっと勉強しておけば良かったと思いますが。より良い官民連携の形を考える増田 人材育成以外の観点で言えば、民側から見た官民連携のより良いモデルづくりですね。PPPをめぐっては先ごろ民間提案に関する枠組みが制度化されました。この制度を使って企業が自ら望むPPPの姿を提案、実現していく、そのサポートができればと思っています。 例えば、民の視点で要求水準書はどう書くべきか、一緒に考えることから始めます。民からは、いろんな不満や要望は出てくるのですが、実際に行政文書の形にするのは慣れていないのでなかなか難しい。そこで、「能動的通訳」と呼んでいますが、私のような行政経験者がサポートして、そうした要望を提案書に落とし込んでいくわけです。 これからもずっと下水道に携わっていくのは民間企業のほうだと思っていますし、もっと民に元気になってもらいたい、活躍してもらいたいという思いで、日々、業務にあたっています。加藤 増田さんほど深く考えていませんが、民に受け身ではなく、もっと自信をも持って能動的になってほしいという思いは私も同じです。 研究の一環で現場を訪問して、直接にコンセッション等に携わっている民間の若い人と会うと、生き生きして、楽しそうに見えます。PPP推進の是非についてはさまざまな議論がありますが、目立たず、ただ自治体や上司の言われたとおりに「やらされている感」の強かった企業の若手が、自ら目的意識を持って考え、行動するように変わるのは、上下水道業界のイノベーションや元気づけにつながると思います。増田 私は、地方分権と官民連携の2つは、方向性として大正解だと思っています。地方分権は自治体を元気にする、官民連携は民間企業を元気にするための手段です。ただ、地方分権は国と地方の対立の構造、かつての縦の関係性を変え切れていないという現状もあ 第2001号 令和5年9月5日(火)発行(29)

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