×(34)第1998号 令和5年7月25日(火)発行 きことはたくさんあるという印象でした。加藤 東京電力に入社された後は、どのようなお仕事を?吉澤 1983年に入社したのですが、当時、原発は建設ラッシュでした。私は、プラントの安全設計、特に燃料や炉心に関わる許認可等の仕事をしており、現場と本社を行ったり来たりという生活でしたね。原発の安全の基準は国がつくるのですが、そのためにはさまざまなデータが必要です。そうしたデータは研究機関や電力会社が収集する部分があるのですが、そのための各電力会社との調整も行っていました。加藤 原発の現場はどういう雰囲気なのでしょうか。そもそも運転管理は東電の直営ですか。設計は自ら行われているとのことですが。吉澤 はい、管理は直営です。もちろん協力会社に委託する部分もありますが、運転といったコアな部分は直営です。 原発は安全性の観点からルールがたくさんありますので、日々そのルールに適合しているかをチェックしなければならず、常に緊張感はあると思います。国(原子力規制庁)の担当者も常駐していますし。加藤 モニタリングする担当者が常駐しているとは驚きです。自ら設計して建設工事を発注・監理し、自ら管理するという一貫した「自ら行う」思想には、重要な社会インフラを担う者の原点を感じます。上下水道は官と民のパートナーシップに動き出しましたから、官も、そして民も意識しておくべき思想です。 1つの現場に何人くらいの人が関わっているのですか。吉澤 福島第一原発で言えば、私がユニット所長を務めていた震災当時で、東電社員で約1000名、協力会社も含めると約6000名が働いていました。加藤 6000名ですか。下水道の現場では、ちょっと考えられない数ですね。特にどの部分に人が必要なのですか。吉澤 最も人が必要なのがプラントの定期検査です。各プラントは年1回の定期検査が義務づけられており、検査と合わせて燃料を取り替えたりもするので1基あたり3ヵ月はかかります。加藤 現場で最も難しいところ、マネジメントにおい第3種郵便物認可イラスト:諸富里子(環境コンセプトデザイナー)コンセプト下水道【第37回】(特別対談「熱い人と語ろう!」Vol.17)~災害に対処できる能力を高める~ 「コンセプト下水道」の特別編として、ゲストを迎え、下水道やコンセプトについて語り合う「熱い人と語ろう!」シリーズ。第17回は東日本大震災時に福島第一原子力発電所のユニット所長を務め、事故対応にあたった経験を持つ長岡技術科学大学の吉澤厚文客員教授に登場いただきました。スリーマイル事故をきっかけに原子力の道に加藤 吉澤先生とは東日本大震災の経験を語る講演会で初めてお会いしました。先生は原発、私は下水道の講師として参加したのですが、先生がお話された「Safety-Ⅱ」などの内容が非常に興味深く、印象に残っていました。いずれ詳しくお話をうかがいたいと思っていましたので、本日は楽しみにしています。 まず、どのようなきっかけで原子力の道に進まれたのかをお話しくださいますか。吉澤 出身は長野県飯田市です。石油ショックを経験して漠然とエネルギーを勉強したいと思っていました。東京工業大学在学中に、アメリカでスリーマイル島原発事故が発生し、授業の課題で原発や事故について調べたのがその後の人生を決めましたね。当時、原発はすでに技術的な部分は完成したと考えられており、研究テーマとしては過去のものになりつつありましたが、スリーマイル事故をきっかけにリスク管理や安全性の部分で課題が再認識され、個人的にもまだまだやるべ吉澤 厚文長岡技術科学大学 技術開発センター 客員教授東京電力ホールディングス フェロー東日本大震災時・福島第一原子力発電所ユニット所長Safety-Ⅱ加藤 裕之東京大学 工学系研究科 都市工学専攻下水道システムイノベーション研究室 特任准教授
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