コンセプト下水道 第21~38回
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× (38)第1995号 令和5年6月13日(火)発行 大村達夫先生個人と仙台市の信頼関係の上に成り立っていたという面もありました。市職員の入れ替わりもある中、これを今後も継続していくために、一度、市との間に正式な協定なり覚書なりを交わしておきたいとの思いがありました。また、新型コロナウイルスの流行に伴い下水疫学や下水情報活用への関心が高まっていることから、これまで仙台市との取り組みで培ってきたデータやノウハウを他の自治体にも広げていきたいとの考えも持っていました。 そこで東北大学では、仙台市と「下水情報取得及び活用の調査研究に関する覚書」を締結するとともに、大学内に非営利のコンサルティングサービスを行う「下水情報研究センター」を立ち上げることとしました。下水情報の活用を検討している自治体からの依頼を受け、下水調査内容の提案や調査結果の分析、その発信方法の提案などを行うイメージです。加藤 すでに仙台市以外の自治体からの引き合いもあるのですか?佐野 はい。興味を持ってくださっている段階なので、まだ具体的な名前は明かせませんが、宮城県内の自治体から問い合わせは来ています。 同様の取り組みは札幌市と北海道大学など、徐々に大都市を中心に広がりつつありますが、我がセンターでは大都市だけでなく、マンパワーの制約がある中小自治体を主なターゲットにしたいと考えています。まずはカウンターパートである自治体を1つ、2つと増やしていくことが目標です。加藤 コロナを契機として様々な機関が新たなビジネスとして下水情報に注目していますが、下水の持つ新たな資源である「情報」の社会還元をコンセプトに東北大学はコロナの前から地道に取り組んできました。その活動の基盤には、東北大学と地元自治体である仙台市との信頼関係があったのだと思います。 情報化が進化すればするほど、信頼関係が重要になります。そして持続的な信頼関係があるということは、価値共有と共感があるということです(本連載の第20回「下水道経営と信頼学」参照)。このような学と官の持続的な信頼関係を構築できているのは、残念ながら現時点では少ないのではないかと思います。 コロナ問題が発生した時に、いち早く下水のサンプ第3種郵便物認可イラスト: 諸富里子(環境コンセプトデザイナー)コンセプト下水道【第36回】(特別対談「熱い人と語ろう!」Vol.16)~異分野の出口を意識する~ 「コンセプト下水道」の特別編として、ゲストを迎え、下水道やコンセプトについて語り合う「熱い人と語ろう!」シリーズ。第16回は感染症対策などで注目を集めている「下水情報活用」をテーマに、下水疫学の第一人者である東北大学の佐野大輔教授に登場いただきました。仙台市と培ってきたノウハウを他の自治体に加藤 佐野先生とは、私が東北大学の特任教授を長らくさせていただいているご縁で大村達夫先生よりご紹介いただきましたが、お酒のない席で対談するのは初めてですね。 さて、新たなイノベーションとして下水の持つ「情報」の活用が注目されています。これは、「各家庭につながり・集めるインフラ」である下水道システムの最大の特徴を生かしたイノベーションだと私は考えています。 まず昨年(令和4年)12月に設立された「下水情報研究センター」についてお話をうかがいたいと思います。センター長は佐野先生という認識でよろしかったですか。佐野 はい、そのとおりです。これまでも東北大学と仙台市はノロウイルスに関する取り組みを進めてきました。これは下水を活用し感染症等の情報を把握し、世の中に発信したいという思いから進めてきたものです。一方でこの取り組みは私の師でもある東北大学の佐野 大輔東北大学 大学院工学研究科 土木工学専攻 教授下水情報研究センター長下水情報活用加藤 裕之東京大学 工学系研究科 都市工学専攻下水道システムイノベーション研究室 特任准教授

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