第1章 コンセプト下水道 ▶BISTRO下水道~グローバルとローカル~ ▶イノベーション~その起こし方と普及理論~ ▶市民科学~「生きもの」を経営戦略の柱に~ ▶アート下水道~感性・主観・構想・暗黙知のチカラ~ ▶官民連携~欧州と日本を比較して~ ▶広域連携~時間と空間の概念~ ▶雨水管理~四つのコンセプト~ ▶災害対応~「戦術」のコンセプト~ ▶東日本大震災から十年~災害対応が人を育て、絆をつくる~ ▶安全と安心の「すき間」~その埋め方のコンセプト~ ▶下水道経営と信頼学~「価値共有・共感」で市民の信頼を~第2章 熱い人と語ろう ▶味の素ファンデーション・高橋裕典 ▶国土交通省・阿部千雅 ▶東北大学名誉教授・大村達夫 ▶水ジャーナリスト・橋本淳司 ▶横浜ウォーター代表取締役・鈴木慎哉 ▶東京都市大学特別教授・小堀洋美 ▶九州大学名誉教授・楠田哲也 ▶近畿大学教授・浦上拓也 ▶専修大学教授・中村吉明 ▶[座談会]鶴岡市・有地裕之、佐賀市・前田純二、岩見沢市・斎藤貴視第3種郵便物認可 岡県内全域を循環エリアとして普及展開し全国から注目を浴びています。このほかにも、炭素(C)と窒素(N)の割合を示すC/N比という農業を行う土壌にとって最も重要な指標がありますが、これを最適な比率にするため、炭素の量を調整する運転方法や新たな下水処理システムが出てくると水処理の運転の幅が広がってきます。 そして、究極は「下水」そのものを変えるという発想です。下水処理システムは装置産業ですので新たな機械を開発することには腐心してきましたが、下水に何かを「混ぜる」という発想は希薄でした。質の良い下水汚泥肥料を製造するためにはこうした発想も必要になってくると考えています。ご飯に「ふりかけ」をかけて味をつけるようなものですね。私の研究室ではある企業の協力によりキレート反応によりミネラルを吸収する腐植質を添加することを議論しています。 また、下水そのものを変えることは、臭気の問題解決にもつながってきます。香料関係の会社とは下水道の「匂い」をテーマとした調査に取り組んでいます。その中で、臭気が課題となっている下水汚泥肥料に発行 チューイングガムなどのフレイバーを付けることで、悪臭を包み隠せないかという試みも行っています。先日、試作品を嗅いでみましたが、嫌な臭いは全くありませんでした(噛んではいません)。感性から都市の環境を考える3つのスケープに、ランドスケープ(景観)、サウンドスケープ(騒音)、そしてスメルスケープ(臭い)の3つがありますが、このうち下水道と密接に関係しているのはスメルスケープだと思います。臭気の問題は下水汚泥肥料だけでなく、合流改善をはじめ、あらゆる下水道の政策についてまわります。下水道の宿命とも言える臭いの問題。今こそこれに向き合うべきです。 本稿では、現在、政府が急速に進めようとしている下水道資源の農業利用について最近の政策動向、その「むずかしさ」と「楽しさ」、フィールドから考えるイノベーション普及理論について書きました。最後に最も大切なコンセプトを改めて紹介します。それは、循環システムの構築にはリレー競技のように次の人が受け取りやすい渡し方を考えて「バトンをつなぐ」こと。このことをBISTRO下水道は私に教えてくれました。•目 次• 第1988号 令和5年3月7日(火)発行(35)〒105-0003 東京都港区西新橋2-19-2TEL. 03-6721-5371 FAX. 03-6721-5373体裁 A5判・230ページ価格 1,650円(税込)国土交通省で様々な政策立案と新プロジェクトにより下水道界に新風を吹き込み、現在は東京大学・下水道システムイノベーション研究室で教育と研究活動を続ける著者が、これまでの経験や携わった企画、人との対話などを通じ、独自の理論と感性で下水道のこれからを考察した一冊。企業経営層、学識者、自治体等から反響続々出版案内コンセプト下水道 加藤 裕之 著
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