第3種郵便物認可 プを踏めばいいかを見せることも大事ではないでしょうか。また、先進事例に関しても、例えば消化ガス発電などの創エネだと関係する自治体は限られてくるため、底上げという意味では、水処理の省エネを徹底的に取り組んでいる自治体を分析する必要もあると思っています。いずれにせよ、すべての自治体が参加できるという視点が重要です。加藤 なるほど、ステップアップできる仕組みですか。そのためには、まず自分たちがどのレベルにいるのかを知る必要がありますね。姫野 そうですね。可視化が必要です。加藤 そのうえで、柔道や空手ではありませんが、二段に昇段したら次は三段をめざすみたいな世界をつくっていければというわけですね。 さらに言えば、低炭素都市となることによる環境以外の効果、例えば都市のブランド化による人の流入や、ESG投資による経済効果など、多様な波及効果を考えて進める必要もあるのではないでしょうか。一石二鳥、三鳥とする仕組みや工夫です。この仕組みは中小都市のほうが、大都市よりつくりやすいはず。二段・三段&二鳥・三鳥がキーワードかと思います。このような意味での世界的なモデル都市が1つでも日本の地方都市で現れると、モチベーションが高まり、一気に全国に普及するかもしれません。“棚上げ”の課題には技術開発の外部化が有効姫野 東日本大震災では、原発事故による計画停電などを受けて、一極集中型から分散型へ電源のパラダイムシフトが起こりました。そんな中、ある自治体の人が「以前より再生可能エネルギーや分散型電源についてはいろんな提案を受けてきたが、そうした提案はほとんど“棚”に上がったまま」と話していました。棚はその人の比喩ですが、いざ必要だと言われても「棚卸しは簡単にできない」と言うのです。 そこで私が思ったのは、技術開発は持続するのが難しいということです。大学の研究者が凄い発見をしても、その時点ではまだ世間がそのすごさを認識していない。ブレイクスルーというだけあり、技術が広まるにはいくつかの段階を踏む必要があり、時間がかかります。くすぶり続けている技術も中にはあり、企業がそうした技術を維持することは容易ではありません。文字どおり“棚上げ”状態です。 今も2050年カーボンニュートラルの観点から、前述した横浜市で実証した二酸化炭素の有効利用の話を改めて持ち掛けてくださる方もいるのですが、20年も前のことなので、棚卸しが結構しんどいなと(笑)。 自治体や企業だけでなく、大学の場合も内部だけで技術開発を続けるのはなかなか難しいのが現実です。こうした棚上げ・棚卸しの課題に対しては、技術開発の外部化が有効ではないかと考えています。加藤 大学の研究者にアイデアが浮かんでも、社会実装のためには、早めに自治体や企業などにアウトソーシングしてしまったほうがよいということですか。姫野 そう思います。大学でも1つの技術を個人が抱えると、どうしても新陳代謝が悪くなりますし。そもそも大学は技術のスタートアップの部分は得意ですが、精査したり、まとめあげたりする部分は適任ではない気がします。これらをすべて1つの機関がやるできではないし、役割分担すべきだと思います。加藤 イノベーションのプロセスには、シーズの発見から組み合わせ、事業化、普及というステップがあり、ステップとステップの間には大きな谷があると言われます。その深い谷を乗り越えるには、それぞれのステップが得意な人にバトンを渡していくようなイメージでしょうか。第一走者はスタートダッシュが抜群な人、第二走者はカーブが得意な人、最終走者はゴールに向けた競り合いに強い人、といったような。姫野 そうです。そして、バトンを渡したら、次のテーマに関心を移していく。もちろん、自分が始めた研究はアドバイスなどで関わっていくことも大切ですが、どっぷり関わってしまうと、そこにリソースが割かれるわけですから。新しいアイデアや発想を促すために、よく学生には「両手が塞がらないように」とか「すきまをつくっておけ」と言っています。パソコンのハードディスクと同じです。常にパンパンの状態だと新しいことができませんから。加藤 その考え方には賛成です。「産官学の連携」とい 第1985号 令和5年1月24日(火)発行(37)
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