× (34)第1985号 令和5年1月24日(火)発行 加藤 姫野先生とは長い付き合いになりますが、下水道の世界に入るまでの話は聞いたことがありませんでした。まずはそのあたりの経緯からお聞かせください。出身大学は横浜国立大学ですよね。姫野 はい。生まれは兵庫県姫路市なのですが、親元から離れたいという一心で(笑)、横国大の安全工学科に入学しました。安全工学と一口に言っても環境や金融、リスク、燃焼、腐食など分野が多岐にわたっていたのですが、私は環境分野で大気を専門に選びました。当時、ダイオキシンの問題が騒がれていましたが、実は個人的には環境に全く興味がなかったんですよ。むしろ「エコロジーなんて」と斜に構えていました。ところが研究を始めてみると、これが面白い。のめり込んで大晦日や元旦にも研究を続けていました。ダイオキシンのサンプリングで横浜市内にある産廃業者の工場の煙突に登ったりしましたね。火葬場の煙突に登るという話もありましたが、さすがに許可が下りませんでした。加藤 はじめは環境に興味がなかったのに、のめり込んでできたという話は、私も同じなので親近感が沸きます。姫野 ただですね、もう環境の道に進んだ後でしたが、あるとき小学校5年生の頃に埋めたタイムカプセルの中身を見る機会がありました。そこに入っていた紙に将来の夢として「川をきれいにしたい」とか「空気をきれいにしたい」と書いてあったんです。確かに姫路市内を流れる市川という河川があるのですが、当時はとても汚れており、子どもながらに環境問題を解決したいという気持ちが芽生えていたようです。その思いは、今の大学に就職するまですっかり忘れていましたが。加藤 子ども時代に原点はあったわけですね。それは私も同じです。小学1~2年生の時に横浜市内を流れる大岡川が汚く、つかまえた亀があまりに臭くて生きものが可哀そうだと強く感じ、誰がこんなに汚しているんだろうと考えた原体験があります。今の学生に環境に興味を持った理由を聞いても、子どもの頃の川遊びなどと答える場合が多いですよ。 ところで専門が大気から下水道に移ったのはどんな経緯で?姫野 横国大には修士を経て博士課程の途中までいたのですが、縁あって長岡技術科学大学に移ることになりました。下水道やエネルギーの研究を本格的に始めたのは長岡技科大からですね。それまでは環境分析の研究をやっていたのですが、ある人から「現象の理解にはもっとサイエンティフィックな切り口が必要」とアドバイスされました。この一言を受け、博士課程で活性炭吸着理論を研究し、長岡技術科学大学では「バイオガスの吸着貯蔵」というテーマに取り組むことになりました。吸着剤を使うことで消化タンクの省スペース化を図り、小さなタンクで効率的にバイオガスを有効利用する技術です。 そんな中、この技術について某プラントメーカーの社長から「我々は効率的と思って技術開発を進めているが、二酸化炭素が4割も占めているバイオガスのま第3種郵便物認可イラスト: 諸富里子(環境コンセプトデザイナー)コンセプト下水道【第33回】(特別対談「熱い人と語ろう!」Vol.15)~新しい技術で来るべき乱に備える~ 「コンセプト下水道」の特別編として、ゲストを迎え、下水道やコンセプトについて語り合う「熱い人と語ろう!」シリーズ。第15回はGX(グリーン・トランスフォーメーション)や技術開発をテーマに、長岡技術科学大学の姫野修司准教授に登場いただきました。当初の専門は「大気」 その後バイオガス分離の研究へ姫野 修司長岡技術科学大学 大学院工学研究科 技術科学イノベーション専攻 兼 環境社会基盤工学専攻 資源エネルギー循環研究室 准教授GXと技術開発加藤 裕之東京大学 工学系研究科 都市工学専攻下水道システムイノベーション研究室 特任准教授
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