コンセプト下水道 第21~38回
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(42)第1980号 令和4年11月1日(火)発行 1/10の費用で済みますね。材料はコンクリートなんですよね?山村 はい。すでに一般に販売されており、これから必ず伸びる市場です。なぜ3Dプリンタに注目しているかと言うと、この勢いで下水処理場まで印刷してつくれないかと思っているからです。びっくりするくらい安く、早くできるのでは、と期待しています。設備系は難しいと思いますが、コンクリート製の土木構造物や建築物は可能だと思います。加藤 それはすごい発想ですね。そこまで技術は進歩しているのですか。私は、破壊的イノベーションとは少し違うかもしれませんが、「中古処理場」みたいな発想もありえないかと思うことがあります。少なくとも災害時には何かに使えそうです。劣化して高性能ではありませんが使えるわけですし、もしや長年使われてきたことのメリットが逆にあったりして。熟成したウナギや焼き鳥のたれのように。ただ、水業界の持続的な収益も考えなければいけません。山村 そうですね。私も安ければ安いほどいいと思っているわけではありません。業界が儲けないと新たな技術開発への投資もできないので、適正な価格は非常に大事だと考えています。ここがイノベーションの一番難しいところです。加藤 一方で、今後ますます上下水道事業の経営が苦しくなると、例えば3Dプリンタによる処理場などの破壊的イノベーションを考える起業家が現れるかもしれませんし、それに頼る自治体も出てくるでしょうね。今年3月に完成した日本初の3Dプリンタ住宅(愛知県小牧市)加藤 上下水道の世界で破壊的イノベーションになりうる技術や仕組みなどのアイデアは何かありますか。山村 破壊的イノベーションとはちょっと違うかもしれませんが、二酸化炭素の回収・有効利用技術には注目しています。いわゆるCCUS(Carbon dioxide Capture Utilization Storage)と呼ばれる技術です。具体的には焼却炉の煙突から出る排煙から二酸化炭素を取り出し、何かに活用できないかと考えています。 東京都の「下水道カーボンハーフ実現に向けた地球温暖化対策検討委員会」に委員の1人として参加しているのですが、ここでも提案していきたいと思ってい最近、若手の起業家の方たちと接点がありますが、彼らが水事業の課題を知ったら、様々な“低コストで早い”解決策が出てきそうです。山村 そうだと思います。今がまさに時代の転換期というか、スイッチが入りかかっている時だと感じています。人口減少に伴い経営状況が厳しくなり、脱炭素という大きな課題も出てきた。今の延長線上に出口がないことは明確です。加藤 破壊的イノベーションは山村先生たちの若い研究者にとっても魅力的なものなのでしょうか。山村 はい。破壊的イノベーションそのものというよりも、破壊的イノベーションが出てくる業界が魅力的に映ると言ったほうが適切かもしれません。そうした業界は新陳代謝が高く、アイデアや研究開発が次のイノベーションにつながるような、夢が広がる業界に見えます。加藤 私は水業界でも、企業が若い研究者やベンチャーの技術開発を積極的にサポートしたり、場合によっては自社に融合させていく動きが加速していると感じています。とても良い方向です。ベンチャーは持続性に少し課題がありますから。彼らに上下水道の世界はどう映っていると思いますか。山村 新興ベンチャーにはチャンスがあるとの見方もできると思います。新興ベンチャーがどこまで広がっていけるか、今はそのせめぎ合いのスタート地点ではないでしょうか。上下水道事業でのアイデア 第3種郵便物認可

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