コンセプト下水道 第21~38回
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× (40)第1980号 令和4年11月1日(火)発行 加藤 山村先生とは国交省時代からの長い付き合いです。初めて会ったのは神楽坂の暗い場所だった気がします。山村 出会って8年くらい経ちましたね。当時、流域管理官だった加藤先生に引き合わせてくれたある専門紙の記者と私が出会ったのが2014年にポルトガル・リスボンで開かれたIWA(国際水協会)の世界会議でしたので。加藤 若手の学識者の一人として国交省の新下水道ビジョン加速戦略の議論にも参加いただきました。GAIAプロジェクトでは、下水処理場で培養した微細藻類をナマコの幼体などの餌に活用する研究もやられていましたね。とにかく面白いアイデアをたくさんお持ちの方で、今回の対談は楽しみにしていました。まずは、これまでのご経歴を振り返ってくださいますか。山村 出身は香川県丸亀市です。エンジニアリングをしたいと思い、北海道大学に入学し、丹保憲仁先生から続く渡辺義公先生の研究室で膜処理技術を研究しました。すぐに社会に出たいという思いもあったのですが、結果的に修士課程、博士課程と進み、大学には10年ほど在籍しました。その後、旭化成に入社し、水処理膜をつくるための研究開発に従事しました。入社から3年が経った2012年に中央大学で新学科が設置され、当時、中央大に2010年から特任教授として着任していた渡辺先生に声をかけていただいたのが、学の世界へ再び戻ったいきさつです。加藤 一度、民間企業を経験されているのがユニークですよね。水に関心を持ったきっかけは何かありますか。山村 なぜか子どもの頃から「儲けたいな」という漠然とした思いがありました。そんな中、中学2年生の時に香川で大渇水が発生し、水そのものではなく、容器のポリタンクの値段が3倍近くも高騰する異常事態を目の当たりにしました。水に興味を持ったのはそこからですね。中学生なりに「水を治めれば、世界を治められる」と考えました(笑)。加藤 水に困った実体験が水の世界へ入った理由ということですね。香川県出身ならではのエピソードという感じがします。香川と言えば、まずはうどんですが、言われてみれば、香川は水の世界でたくさんの逸材を輩出しています。また、子供のころから「儲ける」というビジネス感覚をお持ちだったことが現在のビジネス嗅覚につながっていると思います。 大学や民間で膜処理技術を研究されたのも、そうした水不足の経験があったからなのでしょうか。山村 そうかもしれません。膜を使った下水再生水や海水淡水化にも興味がありますし、香川の水問題を解決したいという気持ちが常にどこかにある気がします。水業界のジレンマ山村 膜処理技術にも通ずるかもしれませんが、実は今回、加藤先生とは「破壊的イノベーション」について話をしてみたいと思っていました。クレイトン・クリステンセン著の『イノベーションのジレンマ』という本は読まれました?加藤 数年前ですが、読みました。大学のゼミでも学生に話すことがあります。大企業は収益性アップのために従来製品の高品質化に目を奪われ、顧客のニーズ第3種郵便物認可イラスト: 諸富里子(環境コンセプトデザイナー)コンセプト下水道【第31回】(特別対談「熱い人と語ろう!」Vol.14)破壊的イノベーション~水ビジネスの愛と野望~ 「コンセプト下水道」の特別編として、ゲストを迎え、下水道やコンセプトについて語り合う「熱い人と語ろう!」シリーズ。第14回は水分野の気鋭の研究者、中央大学の山村寛教授に登場いただきました。原点は渇水の経験山村 寛中央大学 理工学部人間総合理工学科 教授加藤 裕之東京大学 工学系研究科 都市工学専攻下水道システムイノベーション研究室 特任准教授

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