コンセプト下水道 第21~38回
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(40)第1976号 令和4年9月6日(火)発行 ロジーやスポーツという具体的な経営の源泉やビジネスフィールドは目的のための手段(に過ぎない)としています。パーパス経営では、このような目的を強く打ち出すことで組織が社会的評価を得るとともに、社員にとっては誰でも持つ疑問、「自分は何のために働いているのか」の答えが得られます。目的に向けた社員の“志”と多様なステークホルダーとの融合からイノベーションが生まれる。こうした理論が構築されています。 では、なぜ今、パーパス経営なのでしょうか。企業価値として組織の短期的な収益よりも社会に果たす役割や地域での価値が重要視されてきていること、コロナ禍を含めて世の中が不安定で将来が見通せず職員が自分の存在価値や働く目的を見失いつつあること等が挙げられます。組織としては、先が読めない時代になったことから、社員の一体感とモチベーションを絶えず高め、変化に柔軟に対応しながら社会的価値のあるValueを生み続けることが求められています。私は先が読めない時代には過去の経験からの数多のハウツー(How to)ものは使い物にならないと思っています。それよりも存在意義についてのWhy、すなわちパーパスで「人」のつながりやモチベーションに光が当てられるべきだと考えています。パーパスは社員に熱く語りかけるべき ここで、対談した東亜グラウト工業の山口社長のコメントをそのまま紹介します。同社のパーパスと、社員にどの程度語っているか、その浸透度、そして熱い想いを語ってくれました。 東亜グラウト工業のパーパスは「地域創生・地域再生の一翼を担うまちのお医者さんになること」です。少子高齢化の進む日本において、当社の生業とする防災やインフラメンテナンスはまちが存続してはじめて成り立つ事業です。我々はインフラを基軸に「まちづくり」に貢献する企業でありたい。当社のパーパスにはそういう思いを込めています。 私は経営者の仕事は①ビジョン策定、②意思決定、③人材育成の3つだけだと思っています。パーパスやビジョンの策定・浸透はこのうち①と③にかかわる経営者として最も重要な業務。当社のプロパー社員や新第3種郵便物認可コンセプト下水道【第30回】なぜ今、パーパス経営が注目されているか 今回のテーマは「パーパス経営」で、DX(デジタルトランスフォーメーション)にも話を広げていきたいと思います。いずれも先日の下水道展’22東京で私が参加したセッションのテーマです。 パーパス経営は東亜グラウト工業の山口乃理夫社長と同社のブースで行った公開対談、DXはその翌日に行われた下水道協会主催で私がファシリテーターを務めたパネルディスカッションです。これらのセッションを通じて考えたことや、思いを強くしたことなどを書いてみたいと思います。今回は、かなり固い話になりそうです。 まず、ここ数年、企業経営で世界的に主流になっている「パーパス経営」についてです。パーパス(Purpose)は英語では「目的」と訳されますが、組織経営では社会における「存在意義」を意味します。経営者と社員、さらには社外のステークホルダーまで含めた共通目的であり、志を1つにするものと言えます。「あなたの組織の存在意義は何ですか」「あなたが仕事をする価値は何ですか」、このWhyに答えてくれるブレない“北極星”が組織のパーパスと私は考えています。 具体的なパーパスを少し例示してみましょう。ソニーの「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」や、ナイキの「スポーツを通じて世界を一つにし、健全な地球環境、活発なコミュニティ、そしてすべての人にとって平等なプレイングフィールドをつくり出す」などが有名です。俗にMVVと言われる、ミッション、ビジョン、バリューなどとの違いは、様々な解釈がありますが、世界、地球環境、コミュニティ、全ての人の平等など「社会をどうするか」という目的意識が強いこととされています。逆に、テクノイラスト:諸富里子(環境コンセプトデザイナー)パーパス経営とDX~今こそ「人」のチカラ~加藤 裕之東京大学 工学系研究科 都市工学専攻下水道システムイノベーション研究室 特任准教授

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