第3種郵便物認可 ました。 同じ頃、カトリック教会の内部にも宗教改革に対抗する組織改革が起こりました。そこで結成されたのがイエズス会で、同会の宣教師として日本にはフランシスコ・ザビエルらが訪れました。日本でも、宣教師にとっては戦国大名に取り入ることで信者を増やし、大名にとっては南蛮貿易で利益を得るという相互利益の関係が働いていました。 このようにカトリックは時代や地域に応じてWin-Winの関係を構築することで普及してきた歴史がありました。また、それが求められた背景として、特に宗教改革以降に関しては、プロテスタントというライバルへの対抗意識があったことも指摘しておきたいと思います。グローバルとローカルの視点 私が考えるカトリックが普及した2つ目の理由が「信者の一体感・つながり感の醸成」です。カトリックの語源はギリシャ語のカトリコスで、「普遍的」という意味があるそうです。カトリックには民族を超えて世界中のあらゆる場所でその真理が教えられるべきであるという世界的な一体感を持っています。分かりやすい例はイエスの生誕を祝うクリスマスというイベントです。実はイエスの誕生日は不明で(3~4月とも言われているらしいです)、12月25日はもともと土着の冬至のお祭りだったらしいのですが、それをイエスの誕生日としてイベント化したようです。このほか、様々な言葉に翻訳されている聖書や、教会で行われるミサ(典礼儀式)なども信者の一体感やつながり感の醸成に一役買っています。 3つ目は「既存の文化へのリスペクト」です。カトリックの特徴として、布教先の土地に残る異教信仰や祭儀、文化と共存する道を戦略的にとったことが挙げられます。例えばコプト教と呼ばれる初期教会では、古代ギリシャやローマの時代のシンボルを使って古代文明の遺産を継承しながら布教活動を進めていったそうです。また、日本で広まったカトリックも日本流にアレンジしていると言われています。こうした既存文化へのリスペクトによる連続性の確保も、カトリックが世界中に広がった要因の1つと考えます。下水道の世界でも某外資系企業の幹部が地域のお祭りなどに積極的に参加している姿を見たことがありますが、何か重なるものがあるような気がしています。 実はこの2つ目の「信者の一体感・つながり感の醸成」と3つ目の「既存の文化へのリスペクト」は表裏一体だと思っています。前者は世界的なつながりを志向するという意味でグローバルな視点を持っています。一方、後者は地域性を尊重するという意味でローカルな視点になります。グローバルとローカルのいずれの視点も持っていることがカトリックの大きな特徴であり、強みだと考えます。これは、日本の下水道技術や政策を全国、そして海外に普及する際に大いに参考になる方法論だと思います。五感への訴えと伝道師の存在 4つ目は「五感や右脳に訴えるわかりやすさ」です。最たる例は聖書です。その物語性は叙事詩としても高い水準にあり、普及に大きな役割を買ったと考えられます。また、宗教画をはじめ、キリスト像やマリア像(マリア様はカトリック特有の信仰です)、賛美歌などの五感に働きかけることも、カトリックを身近に感じさせる手段として効果的です。さらに教会ではステンドグラスから光を取り入れて視覚的にも神の存在を意識できるようにしています。こうした五感や右脳への訴えるアプローチも、カトリックの普及方法の1つと言えそうです。 第1970号 令和4年6月14日(火)発行(33)『最後の晩餐』(レオナルド・ダ・ヴィンチ作)
元のページ ../index.html#33