(46)第1943号 令和3年5月18日(火)発行 それでは、楽な仕事で、かつ心理的安全性が高い楽園のような職場づくりや組織を目指すべきなのでしょうか。そのことについては次にお話ししたいと思います。4つの組織 ~あなたの職場は?~ 組織を「心理的安全性」と「責任」という2つの指標から、4つに分類する組織学の著名な研究があります。この4分類についてお話しします。 1つ目は仕事の内容はチャレンジングで責任もあるが、心理的安全性が低い組織は、「Anxiety Zone(不安)」という名称が付けられています。仕事量は多く、何とかこなすが、新しいアイデアは生まれづらい組織と言えるでしょう。 2つ目は仕事の責任は軽く、かつ心理的安全性も低い組織で、「Apathy Zone(無関心)」と名付けられています。仕事はラクだが、上からの圧力はあるような組織で、職員は仕事に無関心。できれば頭を引っ込めて目立たたないように最小限の努力で働くようになるとされています。 3つ目は「Comfort Zone(快適)」と言って、仕事の責任は少ないが心理的安全性は高い組織。一見良さそうですが、仕事のやりがいや達成感は少ない。成長しないし、そもそも成長する必要のない組織。 4つ目は責任のある仕事を抱え、心理的安全性も高い組織。これを「Learning Zone(学習)」と呼んでいます。チームを組んで、失敗を共有し、共通の目標に向かってお互いに高め合う。まさにこれが学習するということですが、混沌とした時代にも適合していく理想の組織と言っていいのではないでしょうか。決して仕事が気楽と言うことではないです。 不安、無関心、快適、学習。ぜひ自分が所属する組織どこに当てはまるか考えてみてください。そして、ミッションとして、その分類にいることがよいのか? また、水業界を見渡して、あの組織は「不安」だな、あの団体は「無関心」では、職員が生き生きしているあの会社は「学習かな?」などと考えてみるのも一興かもしれません。私もあれこれ考えてみましたがコメントは控えます。ただ、私が経験した過去の職場を考えると、6~7割はAnxiety Zone(不安)、2~3割がLearning Zone(学習)、1割がComfort Zone(快適)かな…。同じ組織で同じような仕事をしていても、その時のリーダーの性格や振る舞いで、随分と職員のモチベーションや成果は変わるものと実感しています。※ 引用:Amy・C「チームが機能するとはどういうことか」に加藤加筆 第3種郵便物認可心理的安全性と責任・ストレス(組織の4分類)業務内容に応じた心理的安全性の効果 さて、これまでお話ししてきた心理的安全性の効果や価値はどんな業務内容でも同じなのでしょうか。実は、それはかなり異なります。業務の内容を「ルーティンワーク」「研究開発」「複雑なマネジメント業務」の3つに分けて、整理してみました。 まずルーティンワーク(定期点検や定型化された組み立て業務など)の場合、心理的安全性のメリットは作業の改善につながることです。トヨタの「カンバン方式」と呼ばれる、欠陥品を減らすために仕事のやり方を常に改善していくという品質管理の考え方がありますが、これはシステムだけでなく改善のために誰もがどんな些細なミスでもすぐに言える空気感が基盤にあると考えられます。さらにその根底にはプライドや組織文化があります。 続いて研究開発。イノベーションは失敗から学ぶことが多いと書きましたが、研究開発分野はまさにその1つです。失敗をすることに意義があり、その連続により、正解を探していきます。ですから、失敗を恐れていては何も始まらず、心理的安全性のある状態が大前提と言えるかもしれません。 最後に「複雑なマネジメント業務」。これは何かと言うと、既に書いた病院と薬局の連携や、下水道事業で言えば大規模な官民連携事業におけるJV、異業種による新規プロジェクトなどをイメージしています。こういう場面では、単純な上下関係でなく、知識や文化の違いをどう埋めるか、どう融合するかが課題になります。また、異分野との連携ではリスクを抽出しておく必要がありますが、そのためには各々がリスク回避のためのアイデアを自由に出し合うことが大事です。アイデアを出し合うことで、相手の知識や文化を知り、認め合う。そうした雰囲気がつくれないと、組織の融
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