コンセプト下水道 第21~38回
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(38)第1963号 令和4年3月8日(火)発行 したものではなく、妄想に名前を付けたという言い方のほうが適切かもしれません。そして妄想は、話していたり、電車の音と揺れを感じていたり、テレビを見ている時など五感を働かせている時に始まることが多い気がします。 名前付けを軽く見ている人もいるかもしれませんが、私にとっては妄想を現実化し、具体的な事業につなげていく上で重要なステップです。決して気を引こうと思ってPRや広報の観点だけで名前を付けているのではありません。親が子供に名前を付ける時に、子供の将来の幸せな姿を妄想し、その思いを短い文字に込めるのと同じと言えるかもしれません。右脳と左脳のループ 事業戦略のやり方は大きく3つに分類されると言われています。1つ目は「改善方式」。PDCAサイクルをまわす方法で、トヨタのカンバン方式なども当てはまるでしょう。国交省のストックマネジメントもこの方式が基本です。2つ目は「戦略方式」。目標を設定し、その目標に向かって、いかにリソースを効率的に使ってアグレッシブに取り組むかに重きが置かれています。3つ目は「デザイン志向」と呼ばれるものです。戦略方式が具体的・定量的な目標を定めるのに対し、ぼんやりとしたイメージを拡散させてスタートするのが「デザイン志向」です。従来業務とは異なるイノベーティブなことを始めたい時に向いていると言われています。今回のテーマである「妄想と名前付け」は、この「デザイン志向」に最も近いと思っています。突拍子もないアイデアは妄想から生まれると私は考えています。ただ、感性の大切さがわかる上司でないと受け止めてくれないかもしれません。 では妄想を現実に落とすには何が必要でしょうか。それは「絵」が良いです。ラフスケッチで良いので妄想を絵にすることが大事です。ものづくりなら粘土のような造形物でも構いません。この絵や造形物がいわゆるプロトタイプ(試作品)になります。最初は粗くても、プロトタイプがあれば議論もできるので、共創の場になりますし、徐々に適切な形にしていけばいいのです。楽しい作業にもなります。 そして、ある程度進んだら、このプロトタイプに名前を付けることがとても大切です。名前付けが大切である理由をいろいろ調べ、私なりに考えてみました。ポイントは「右脳と左脳のループ」にあります。右脳は直感力や感性、左脳は言語や計算力などの論理的思考を司ると言われています。つまり、妄想するのは右脳で、名前を付け言語化するのは左脳です。言語化することでフワフワと発散していた妄想やアイデアは、全てを飲み込んだまま収束し意義や位置づけが明確になり、現実に「存在する」ことになります。これも、前述した子供に名前を付けることから理解できると思います。また、右脳の妄想を左脳の領域に持ってくる行為自体が右脳と左脳の両方を使うので、脳が活性化し、新たなアイデアや対話が生まれやすくなります。また、名前を付けることにより、名前から新たな妄想が生まれてプロトタイプからアイデアを広げることができます。それは再び右脳に戻ることであり、前述した「下水道場」という名前から、国交省の職員が柔道着をまとって参加する一風変わった演出を思いつくようなことです。このように妄想と名前付けをきっかけに、右脳と左脳を往復させる「右脳と左脳のループ」が生まれ、さらなるアイデアや対話につながる効果が期待できます。名前を付けるとさらに妄想が膨らむわけです。 第3種郵便物認可下水道場の開催風景

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