コンセプト下水道 第21~38回
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第3種郵便物認可 水の天使、実は私自身のことだった!? 私も下水道の世界でいくつかの名付け親になっています。名前を付けるのが上手だと言われることもあるのですが、自分では全然大したことがないと思っています。ただ、ふわふわとした目に見えないものを具現化したいという思いは強く持っています。 ミス日本の「水の天使」は、私が何気なく口にした一言から始まっています。国交省の下水道事業調整官の時代に浜松のFMラジオに出演する機会があり、そこでMCから「これからの水の業界を加藤さんはどうしていきたいか」と問われました。そこで咄嗟に「私は『水の天使』ですから、水の恵みを国内外に広げていきたいですね」みたいなことを言ったのが、そもそもの始まりです。これは当時の自分の役割のアナロジー(相似性)になっていますが、そこまで考えたわけではなく、自分と「何か」がチャネリングして言わされたような瞬間でもありました。実は私自身が「水の天使」だったのですね(笑)。 「ビストロ下水道」も私が名付けました。これは当時、私が流域管理官で、食と下水道をいかに結びつけるかというミッションに取り組んでいた時です。下水処理やコンポスト化の先の社会に付加価値を感じさせるワードは……。自宅でボーっとテレビを見ている時に思いつきました。その時流れていたのが、某アイドルグループによる某番組の「ビストロ〇〇」という人気料理コーナーでした(ここまで書けば分かる人も多いと思いますが……)。 国交省が地方公共団体の若手職員の人材育成を目的に開催している「下水道場」も私が名付け親です。若手が集まり、切磋琢磨しながら対話し、イノベーションを起こす。こういうことを電車に乗って吊り革を持っている時にぼんやり考えていると、突然「下水道場」という名前がひらめきました。 いずれにも共通するのは、頭を抱えて名前を付けようと思っていたわけではないということです。何をしようか妄想していたら、ぴったりな言葉もセットで浮かんできたという感覚です。制度や仕組みとして完成第1963号 令和4年3月8日(火)発行(37)イラスト:諸富里子(環境コンセプトデザイナー)コンセプト下水道【第27回】なぜ美術や音楽の作品には名前があるのか 唐突ですが、なぜ美術作品に名前を付けるのか不思議に思ったことはありませんか。音楽にしても同様です。他の作品と識別する意味はもちろんあるでしょうが、それだけではない気がしています。物事に名前を付けることで、一体どういう効果が生まれるのか。今回は名前付けと、それに先立つ「妄想」の相乗効果について考えていきたいと思います。妄想と言えば、私の出身高校は横浜の根岸にありましたが、教室から海が見えました。授業中は海に浮かぶ雲を見ながら、いろんな妄想をしたものです……。 さて、世の中には消費者のニーズを満たした様々なヒット商品がありますが、名前で売り上げを伸ばしたという商品も存在するようです。例えば伊藤園の「お~い、お茶」。私が小学生の時だったと記憶しますが、そのキャッチーな商品名とテレビコマーシャルが受けて大ヒットしました。夫が妻を「おーい、お茶」と呼びつけてお茶を持ってこさせるという、今の時代では問題になりそうな演出でしたが、当時の家族団らんの一場面を鮮やかに切り取り、視聴者に商品名を強く印象付けることに成功しました。商品名とCMをうまくリンクさせた好事例の1つです。サントリーの缶コーヒー「ボス」も有名です。「ボス」というと「男らしさ」や「渋い」というイメージが浮かびますが、消費者、特に男心をくすぐり、売り上げが何倍も増えたそうです。このほか、花粉症の季節に活躍するティッシュペーパーの「鼻セレブ」も成功例とされています。妄想と名前付けのススメ~右脳と左脳の往復エクササイズ~加藤 裕之東京大学 工学系研究科 都市工学専攻下水道システムイノベーション研究室 特任准教授

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