コンセプト下水道 第21~38回
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× (44)第1960号 令和4年1月25日(火)発行 藤原 まず下水道にかかわる研究者の一人として、2050年カーボンニュートラルという世界共通の目標の達成に貢献できる研究や技術開発をやりたいという強い思いがあります。高知大学で私が携わったOD法における二点DO制御システムと無曝気循環式水処理技術は、いずれも低炭素につながる省エネ技術です。京都大学に移った今の研究室でも、脱炭素への貢献を一番大きな柱に据えて研究を進めています。 一方で、おそらく個別の技術革新だけでは、脱炭素・カーボンニュートラルは達成できません。社会システム全体を変革しなければ達成できないような、挑戦的な目標だと考えています。そのためには産官学だけでなく、一般の市民や、場合によっては金融機関も含めた「産官学民金」で、脱炭素社会に向けたそれぞれの貢献のあり方を考えていく必要があると思っています。それぞれの分野が個別に頑張るだけでなく、他分野との相互連携によるシナジー効果を生み出しながら、目標達成に向けて社会全体で協力して進めていくことが大事だと考えます。 そういう意味でも、今回の政策研の小委員会が「脱炭素社会への貢献のあり方検討小委員会」という名前であるのは素晴らしいと思いました。「下水道の脱炭素化」ではなく、「脱炭素社会に下水道がどう貢献できるか」を議論しましょうというメッセージを感じます。窒素回収の意義加藤 「産官学民金」連携ですか。私の研究室は産官学と市民の協働をテーマにしていますが、「金」が入るのですね。 ところで、第3回会合(12月2日)では窒素回収やプラネタリバウンダリーをテーマに発表されていました。どちらかというと炭素の話題に行きがちなところで、窒素に焦点を当てられたのを興味深く感じました。藤原 プラネタリバウンダリーは、人間活動が地球におよぼす影響を客観的に評価する方法の1つとして、地球に対して人間がどのような変化を引き起こしているかを可視化したものです。気候変動など9種類があるのですが、このうち種の保存(絶滅の速度)と並んで、「窒素の生物地球化学的循環」が、地球におよぼす第3種郵便物認可イラスト: 諸富里子(環境コンセプトデザイナー)コンセプト下水道【第26回】(特別対談「熱い人と語ろう!」Vol.12)地球環境と地域社会~成果をあげる連携とは~ 「コンセプト下水道」の特別編として、ゲストを迎え、下水道やコンセプトについて語り合う「熱い人と語ろう!」シリーズ。第12回は京都大学の藤原拓先生を招き、脱炭素や地域社会への貢献などをテーマに語っていただきました。藤原先生は京都大学大学院で博士号を取得した後、高知大学でOD法における二点DO制御システムなど地域発の新技術の開発・普及に携わり、令和3年4月から京都大学大学院工学研究科で教授を務められています。脱炭素は社会全体で進めるべき加藤 藤原先生とは長いお付き合いになります。国交省の新下水道ビジョン加速戦略の策定では委員として参加いただきましたし、地域資源をテーマに雑誌の対談などもやりました。私の研究室の設立時のメンバーの一人に野村洋平特任助教がいますが、彼はもともと高知大学で先生のもとで働いていた研究者です。その後、先生が京大に移られたタイミングで、野村さんも先生のもとに戻りました。そんな縁もあります。 最近では国交省の下水道政策研究委員会(政策研)の委員として、脱炭素の実現に向けて下水道事業にどういうアクションが必要かという議論にも参加されています。はじめに、これからの下水道政策の柱の1つであり続ける脱炭素について先生のお考えをお聞かせいただけますか。藤原 拓京都大学大学院 工学研究科 教授加藤 裕之東京大学 工学系研究科 都市工学専攻下水道システムイノベーション研究室 特任准教授

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