(38)第1956号 令和3年11月16日(火)発行 べきところがあると考えています。 オープン・ネットワーク型による「共創」は、まだ、下水道関係では未熟です。情報やノウハウの共有に抵抗がある「クローズ型」の組織が多い気がします。下水道業界は、建設中心時代においては、メーカーやコンサル、維持管理会社などの各業態が分担することで効率性を実現してきた成功の歴史が影響しているのかもしれません。グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップルの4社で構成されるGAFAは、まさに業界内だけでなく、社会にネットワークを張り巡らせ、ネットワークの参加者から情報を集め、価値をお返しする、いわば生態系・エコシステムの「キーストーン」として発展しています。このキーストーンの条件は、集まった知識のマネジメントによって「新たなValue」を創造できることです。クローズすべき画期的な技術や知識が、どれほど今の下水道業界にあるのかわかりませんが、それよりもネットワークを形成して業界全体の知識をマネジメントでき、持続的なプロフィットを取れる組織の登場を期待しています。経験の共有による「共創」 DXから「共創」に話の中心を移していきたいと思います。下水道業界のネットワークによる共創の可能性について話をしましたが、個別技術の創出と普及についても共創のコンセプトは重要です。ただ、開発者と現場の使用者による共創は、発注者と受注者、メーカーと維持管理会社などの壁により、まだまだ不十分な状況にあります。ということは、下水道界はまだ発展可能性があるということです。 世の中にある様々な商品を見てみましょう。私も子供時代に遊んだレゴブロック。これは、メーカーと子供が、世の中に存在しないものを含めて全く未知のものを創りあげる共創を商品化したものです。また、最近であれば、食事のアプリの評価や書きこみ。おそらくレストランのオーナーは書き込みも参考にしながら料理を改善しているかもしれません。必要不可欠なデバイスとなったスマートフォンは発売当初に比べるとだいぶ使い勝手がよくなっています。これはユーザーの声が製品の改良にダイレクトに反映される仕組みになっているからだと思います。 ただ、この共創を実現するには、そもそも各主体が逆方向の論理で行動していることを認識しておかなければなりません。消費者は安い商品を選択、提供者は高く売りたいという論理です。この逆方向の論理を前提として、どのように共創を生み出していくかを考える必要があります。私も、まだ的確なソリューションは見つけていませんが、目的や課題を共有し、同じ時間と場(バーチャル含め)を共に過ごす経験は効果的と考えています。東日本震災で現場ごとに生まれた様々な工夫やアイデア、例えば、モバイル型の水処理システムや流出した水管橋の代替として国道上にむき出しで設置した下水管等は、復旧という共通目標と被災現場で共に戦っている官と民が生んだ共創と言えます。 現在でも、国交省の下水道革新的技術実証事業(B-DASHプロジェクト)など官民の共同研究の政策的な仕組みはありますが、官が場所や資源を提供するだけになっており、自治体と企業が一緒になって経験と知識を共有し技術開発に取り組んだものは少なく、価値創造という視点からすると改善の余地があると思います。 ただ、個別に見ると、開発者と使用者・社会の共創による技術は少しずつですが誕生しています。ポンプのイノベーション、全水位型の水中ポンプ「フラッドバスター」は、開発にあたり、管理者視点を取り入れるための対話により様々な声を集め改善を繰り返したと聞いています。また、B-DASHプロジェクトで採択された高効率固液分離システムは、もともとは合流改善のための技術として世に出ましたが、B-DASHや大船渡市の復興プロジェクトなどの社会ニーズとの対話を契機に、現在では水処理システム(最初沈殿池)からの効率的なエネルギー回収技術として進化しています。マネジメント時代においては、使用者と開発者の対話によるフィードバックで改善を繰り返す技術開発手法が定着していくことを期待しています。そして、この仕組みを進めるためのキーワードは「透明性」だと思います。技術と社会の「共進」について 技術の共創の話をしましたが、最後に、技術・製品と社会・人の関係について少し考えてみたいと思います。社会のニーズに沿って技術を開発し使うという考え方から、技術が社会や人の道具に過ぎないように捉えられがちですが、実は社会、そして我々自身も技術・製品により影響を受けて、変化しています。例えば、コロナ禍でWEB会議という技術が普及しましたが、これはWEB技術の進化により、我々のライフスタイル全体も変化していると言えます。一般的に技術とは、まず新たな社会課題や発明から生まれ、次に複数の技術がタケノコのように現れ、どれを使おうか迷っている 第3種郵便物認可キーストーンのイメージキーストーン
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