コンセプト下水道 第21~38回
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× 第3種郵便物認可 3つです。この3つの道具を組み合わせて、様々な政策を実施し、「モノづくり」を推進してきました。しかし普及が進み、モノづくりの時代からマネジメントの時代に移行しています。つくったモノをどう維持し、機能アップしていくか。モノづくりも、地域独自の改善を使用者である市民とコミュニケーションをとりながら考え、長期的な経営基盤を築くことが求められています。そう考えると、スタンダードな財政・テクノロジー・法制度だけでは限界が来ている。こうした時代には、多様な分野からのアプローチが必要になる。そういう問題意識から、組織論やイノベーション理論、社会心理学などの異分野の学問を少しずつ勉強しているのですが、人文地理学や環境社会学もマネジメント時代に強化すべきテーマと考えていました。実は斎藤さんから連絡いただく前から、先生も共著で執筆されている環境社会学に関する書籍なども読ませていただき、直接、お話しを聞きたいと思っていた矢先に斎藤さんから連絡をいただいてとても驚いたんです。先生が書かれた『ウンコはどこから来て、どこへ行くのか』も読ませていただきましたが、「ウンコはいつから社会で汚物とされるようになったか」という視点は考えたこともなかったです。 下水道の歴史も詳しく調べられていますが関心を持たれたきっかけは何だったのでしょうか。湯澤 農村や山村、漁村など第一次産業の現場を歩くフィールドワークが好きで、もともとは地場産業の研究が専門でした。特に織物の研究は昔から取り組んでいます。日本には江戸時代から地域の資源を使って循環させる技術がたくさんありますが、織物などはその最たるものだと思います。フィールドワークの中心は農村なので、農村社会学や農業史も視野に入れないと解決できない課題もあるため、幅を広げたいと思い、大学院を修了後、筑波大学の農業史の研究室に移りました。教員になって一度、別の大学で講師を務めた時期もありましたが、改めて筑波大の研究室に戻り、そこで10年間、農村社会学や農業史を研究しました。当時、農業を専門に学んでいる学生たちと話す中で、「食」にクローズアップした研究を人文社会科学から発信しないと、このままでは「食」もテクノロジーに飲み込まれてしまうのではないかという危機感を持ったのをきっかけに、「食」の研究を始めました。もともと地場第1953号 令和3年10月5日(火)発行(35)イラスト: 諸富里子(環境コンセプトデザイナー)コンセプト下水道【第24回】(特別対談「熱い人と語ろう!」Vol.11)~下から目線で地域を知る~ 「コンセプト下水道」の特別編として、ゲストを迎え、下水道やコンセプトについて語り合う「熱い人と語ろう!」シリーズ。第11回のゲストは法政大学人間環境学部の湯澤規子先生に登場いただきました。湯澤先生は人文地理学を専門に農業や食、下肥(人糞尿)などのテーマに取り組まれている研究者で、昨年10月には『ウンコはどこから来て、どこへ行くのか――人糞地理学ことはじめ』(ちくま新書)を著されています。「ライフ」が研究テーマ加藤 ビストロ下水道で有名な岩見沢市の斎藤貴視さんから「面白い人がいますよ」ということで、令和3年6月18日付の全国農業新聞の記事が送られてきました。「江戸の下肥と「環」の世界」というタイトルで、執筆されたのが湯澤先生でした。ビストロ下水道は関係者間で随時、情報共有を図っているのですが、皆さん、先生の書かれた記事を読んで「面白い! ぜひお会いしたい!」と盛り上がりました。私が東京にいるので「じゃあアタックしましょう!!」ということで、ご連絡を差し上げた次第です。湯澤 そうだったんですね。ありがとうございます。加藤 特に私が興味を持ったのは先生が専門にされている人文地理学や社会学といった分野についてです。どうして興味をもったかお話しします。日本の下水道は世界的にも例がないくらいの勢いで普及しました。私も30数年、下水道行政に携わりましたが、やってきたことの中心は財政支援、テクノロジー、法的規制のしも湯澤 規子法政大学 人間環境学部 教授人文(糞)地理学と下水道加藤 裕之東京大学 工学系研究科 都市工学専攻下水道システムイノベーション研究室 特任准教授

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