コンセプト下水道 第21~38回
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第3種郵便物認可 した。SDGsで求められていることは社会課題の解決ですし、その中で企業が解決できる課題はたくさんあると思います。加藤 確かに企業は社会課題を解決することが目的であるべきですし、水のような地域インフラに関わる企業は社会的課題の解決と価値創造に貢献するソーシャルビジネスとしてプロフィットを得ている。そう考えるとSDGsと企業の利益は決して相反するものではないと考えられます。また最近では、環境活動への評価が融資や調達の条件になってきました。見山 長く続いている会社は経営理念がしっかりしていますよね。そういう会社の経営理念を読むと、SDGsにつながるようなことが必ず書かれています。ある企業の社長が「SDGsは理念経営そのものだね」と話していました。創業時に決めたことが、そのままSDGsの指標になりうる。だからSDGsは原点回帰なんだと。私も本当にそのとおりだと思います。SDGsは一見、未来の話をしているようで、実は自分たちの原点回帰なんです。加藤 なるほど。SDGsは原点回帰、と考えるのは理解しやすいです。私は、たまに企業の若い人に少し意地悪な質問で「自分の会社の社是を知っている?」と聞くことがありますが、大抵は答えられません(笑)。ただSDGsはみんな知っています。SDGsと社是の関係を考えれば、社是の本当の意味が理解できると思います。ESGとSDGsとの関係については、どう理解すれば良いですか。見山 ESGとSDGsを比べた時、ESGは投資家から評価されるという外圧的な要素が大きい。一方、SDGsを厳密に評価することは難しいです。SDGsは原点回帰などの内発的な動機で動くためのツールだと考えています。外圧的な動機で動くフリをしているともったいないなと思いますね。経験のない仕事でも断らない加藤 いろんな経験をされてきた見山先生ですが、これだけは譲れないといったモットーのようなものはありますか。見山 頼まれた仕事は経験がなくても断らない、ですかね。ap bankやバングラデシュも最初は全く経験のない世界でした。数年前から務めている川崎市の上下水道事業経営審議委員会もそうです。上下水道はド素人でしたが、加藤さんをはじめ、いろんな人から話を伺っ【主要参考文献】◦ ムハマド・ユヌス著『ソーシャルビジネス革命』(早川書房)◦ 谷本寛治ほか著『ソーシャル・イノベーションの創出と普及』(NTT出版)て興味は持っていましたし、私のこれまでの経験や知見が何かお役に立てればと思い引き受けました。加藤 私がこの世界に引き込んでしまった感じですが、下水道事業の可能性についてはどのように見ていますか。見山 特に都市では下水道事業のような基礎インフラの世話になっていない人は基本的にいません。でも多くの人が知らない世界だったりするわけですよね。私も下水道の外側から入ってきた人間ですが、生活排水からいろんな情報が取れるとか、下水道の多様な用途が分かってきて、そのポテンシャルの高さを実感しています。 そういう観点からも、下水道業界にもっといろんな会社が興味を持って、参画してくれると面白いだろうと思います。例えば、センサーを開発している半導体や電子部品の会社など。DX(デジタルトランスフォーメーション)を進める上でも、相性がよいのではないでしょうか。異なる業界同士が交わることで、新たなアイデアが生まれるのではないかと期待しています。加藤 とても嬉しいメッセージです。財政、技術、法規制による「ものづくり」で成長してきた下水道ですが、マネジメント時代は、ソーシャル・イノベーションを興すために社会学や人文地理学などもっと異分野の方を呼び込んで進化していく必要があります。私もそのような活動を続けていきたいと考えています。本日は多岐にわたるお話をありがとうございました。 第1950号 令和3年8月24日(火)発行(43)

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