第3種郵便物認可 は読んだことがあります。確か水関係も、ヴェオリア・ウォーターがバングラデシュで取り組んできた低料金の水道供給の話が紹介されています。今後、経営的に厳しさを増す日本の上下水道にも大いに参考になる内容でした。 「ソーシャルビジネス(通称SB)」の定義は、明確なものはありませんが、「地域の社会的課題の解決」「ビジネスとしての持続性を有すること」「イノベーションによる新しい社会的価値創造」という3つの要素があると理解しています。そして、産官学と市民・NPOの協働により資金や人材を集め、ネットワークを広げながら事業を行うことです。今後の下水道事業の方向性である、地域資源利用やPPP、地域の市民との協働は、まさにソーシャルビジネスであり、その手法や研究動向に注目しておくべきと考えています。現在は、経営学や環境社会学の分野で、出資を含めた市民・NPOとの協働による市民風力発電や様々なリサイクル事業についてフィールド研究が進められています。私は、その成功のためのプロセス研究に非常に興味を持って勉強しています。 ところで、見山先生はその実施者であるわけですが、ソーシャルビジネスの推進において具体的にはどういった活動をされたのですか。見山 1つが「グラミンユニクロ」の設立です。衣料メーカーのユニクロとグラミン銀行が連携したプロジェクトで、現地で雇用を創出しながら、服を企画・製造・販売し、その利益は事業(ソーシャルビジネス)に再投資するという仕組みです。私はユニクロの役員や社員と打ち合わせを重ね、コンセプトをつくり、現地のグラミングループに対する最初の企画プレゼンも担当しました。 私が塾長をつとめる学生団体・適十塾が、バングラデシュで行う「布わらじ」のプロジェクトについても紹介させてください。バングラデシュでは靴が買えず、裸足で歩いてガラス片を踏んだ子どもが時に命を落とすこともあるという話を大学の授業でしたところ、ある学生から「バングラデシュではお米を食べる文化があるから、わらがあるはず。わらじを作るのはどうか」と提案がありました。加藤 布わらじですか? アイデアから、学生による具体的な事業化までのプロセスについて教えてください。見山 ある学生のアイデアをきっかけに、秋田県にかほ市で合宿を行い、そこでわらじづくりを学んだ30名ほどの学生を連れてバングラデシュを訪れました。2011年のことです。BRACという世界最大のNGOの傘下にあるアパレルメーカーのアーロンという社会的企業にプレゼンすると、「バングラデシュでは、わらは貴重だけど、縫製大国なので布は豊かにある。それでルームシューズをつくって日本に輸出するのはどうか。現地でも雇用が生まれる」と逆提案を受け、アーロンと提携して「布わらじ」のプロジェクトが始まりました。それから10年近くプロジェクトは続いており、日本でも秩父や前橋など各地域のショップで「布わらじ」が売られています。加藤 プロセスの視点から見ると、イノベーションの創出段階として「学生のアイデア」「にかほ市」「バングラデシュ訪問」があり、普及段階では「アーロン」という社会的企業と「日本のお土産」というアクターが登場することがわかります。そして、にかほ市の伝統技能である「わらじづくり」というモノ・行為が、バングラデシュでは地域雇用に、秩父や前橋では「お土産」、というように解釈や社会的意義が変化して価値を生んでいくことが理解できます。 ところで、「布わらじ」の一連の活動はいわゆるBOP(Base of the Economic Pyramid)ビジネスとも呼ばれるものだと思いますが、途上国でビジネスを持続させるのは、軌道に乗るまでに相当の時間を要して難しい 第1950号 令和3年8月24日(火)発行(41)江戸わらじ東京わらじ
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