コンセプト下水道第39~40回
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(42)第2006号 令和6年1月9日(火)発行 第3種郵便物認可イラスト:諸富里子(環境コンセプトデザイナー)コンセプト下水道【第40回(最終回)】 「コンセプト下水道」は今号で終了し、次回(3月号)より新連載「加藤裕之の『時流を解く』」がスタートします。最終回となる今回は、特別インタビューを行い、著者に「コンセプト下水道」の連載を振り返ってもらいました。人の思いを伝えたい――どういう思いで連載をスタートしたか。加藤 国交省の現職時代に下水道政策に携わっていたので制度や技術について説明する場面は山ほどありましたが、その制度がどういうコンセプトでつくられたかを話す機会はほとんどありませんでした。世の中の関心も質問も、自分に直接関係する補助対象の中身ばかりでした。 もちろん情報として拡散するには、定量化や通知文で標準化することが大切ですが、制度を使い、事業を行うのは「人」です。腹落ちし、共感が沸き上がり、事業がスタートして社会変革するエネルギーは、文字のように目に見えるものではなく、その底流にある文字になりにくいコンセプトや利他の精神、担当者の社会貢献への強い思いであるということを観察してきました。本連載では、それを伝えたいと思っていました。 皆さんも実はそう感じているのではないでしょうか。「大切なことは目に見えない」。星の王子様の名言のとおりです。もしかしたらウォーターPPPも、国交省の担当者の上下水道に対する本当の思いは、通知の文字の内容とは違うところにあるのかもしれませんよ。 連載で取り上げたビストロ下水道の「イノベーション理論」や、予想外に好評いただいた「信頼学」のように、他の分野の理論を下水道事業に応用する効果を伝えたかったことも連載のモチベーションになりました。それから、東日本大震災の現地対応や海外展開など、経験を伝えることが大切なテーマは、若手のために書き残しておきたいという気持ちもありました。特別インタビュー――周囲の反響はどうだったか。加藤 正直、出版社の御厚意でほぼ私の満足感のために始めていただいたような異質の連載でしたが、思っていたよりスタートから反響が大きく嬉しかったです。「実は自分もそう思っていた」という声をたくさんいただいたことが連載するエネルギーになりました。異分野など下水道に詳しくない人からも「読みやすい」「連載の中では〇〇が一番共感した」「××には反論したい」「加藤さんの意外性・異質性・・・・・・」などの感想もいただきました。また、連載を読んでくれた人から、イノベーションや信頼学、国内外のPPPについて講演を頼まれることもあり、そこで新たな出会いもありました。対談相手からは元気をもらった――ゲストを呼んで対談する「熱い人と語ろう」シリーズも好評を博した。加藤 「熱い人」が中心になって、これに共感した多様な人を巻き込んでいくところにイノベーションの成功例がある。その熱いハートを読者に伝えたい、と思いスタートしたシリーズです。ですから、よくある役職で選ぶ対談ではなく、熱いハートのみに着目して人選しました。この趣旨も業界紙では異質かと。 合計で17名の方に登場いただきましたが、皆さん、期待以上に熱く、個人のビジョンや仕事の流儀を語っていただきました。水関係の方々からは委員会等では聞いたことがない秘めた思いを聞かせていただきましたし、社会学や経営学の学識者、モチベーションアップのスペシャリスト、海外で活躍するビジネスマンなど、私の知らなかった世界の方との対談では初めて聞くことばかりでした。 異分野の方との対談の前と後には学生のように真面目に予習・復習しましたので非常に勉強になりました。対談は、実は読者のためでなく、私自身の興味のためにやらせていただいたような感じです。コンセプト下水道は今回で終了ですが、まだまだ熱い方はいるので、新シリーズの中でもたまには行いたいと思っています。――連載をやって良かった点は。加藤 何と言っても、多様なチャンネルと知識が増えたことです。日頃、「人の話を聞いてない」「聞きながら別のことを考えている」と言われる妄想好きの私でも、「聞く力」が鍛えられたかもしれません。 読者の皆さんから感想などをいただくのも嬉しかったです。某会社の役員の方がコンセプト下水道のコピーに黄色のラインマーカーを塗りまくって研究室に来てくれて議論したこともありました。40回の連載を振り返って加藤 裕之東京大学 工学系研究科 都市工学専攻下水道システムイノベーション研究室 特任准教授

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