下水道展’23臨時増刊
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■■1.雨天時浸入水対策の難しさ 従来の雨天時浸入水調査は、流量計等により雨天時浸入水が疑われる範囲を段階的に絞り込み、その後、テレビカメラ調査や誤接合調査等の詳細調査を行い、発生原因や経路を特定していました。しかし、これら“点”による調査では、雨天時浸入水発生箇所の絞り込みは困難であり、その後の詳細調査に膨大な時間と費用を要してしまうため、肝心な対策工事が進みません。そこで、下水道管内の下水温度変化から雨天時浸入水を検出し、詳細調査が必要な範囲を絞り込むことが可能な「ラインスクリーニングと浸入水検出AIによる絞り込み技術」についてご紹介します。 なお、本技術は国土交通省国土技術政策総合研究所からの委託研究を通じて実証し、令和4年3月に「B-DASH プロジェクトNo.36 水位計と光ファイバー温度分布計測システムにAIを組合せた雨天時浸入水調査技術導入ガイドライン(案)」が公表されています。2.ラインスクリーニングによる雨天時浸入水の検出 ラインスクリーニングは、下水道管内の下水温度を線的に測定可能な光ファイバー温度分布計測システムを用いた雨天時浸入水の検出技術です。降雨が期待される一定期間(2ヵ月程度)、下水管を流れる下水温度を1m・1分間隔にて連続取得し、降雨期間中の管内の下水温度変化を分析することで、雨天時浸入水の発生箇所を±5m以内で検出します。小 間 番 号■ 札幌ドーム ■3.迅速かつ高精度な絞り込み 得られた下水温度の分析作業には「浸入水検出AI」を導入し、雨天時浸入水の発生箇所を自動的に検出します。これは雨天時浸入水発生箇所・時間を学習したAIであり、分析作業の迅速化、省力化(低コスト化)を実現します。 2都市2ブロックを対象としたフィールド実証では、詳細調査である本管テレビカメラ調査、誤接合調査が必要な範囲はそれぞれ7,466 mから1,994 m、807戸から202戸へと絞り込むことができました。また、雨天時浸入水の検出性能を雨天時テレビカメラ調査による実態調査結果との照合により評価したところ、70%を超える正検出率が得られました。なお、大きな浸入水のみを対象とすれば正検出率は85%以上を示し、大きな浸入水の見落としは少ないことを確認しました。4.インフラメンテナンス大賞優秀賞を受賞 第6回インフラメンテナンス大賞において、ラインスクリーニングの開発が技術開発部門の優秀賞を受賞しました。国土交通省、国土技術政策総合研究所をはじめ、研究フィールドのご提供や、さまざまな助言をくださった地方公共団体ご担当者の皆様に、感謝の意を表します。臨時増刊「下水道展 ’23札幌」 2023.08ラインスクリーニングの実施イメージ下水管内の温度変化のイメージ(縦:延長、横:時刻)59[出展者]日本水工設計株式会社[所在地]〒104-0054 東京都中央区勝どき3-12-1 フォアフロントタワー[連絡先]TEL:03-3534-5533 FAX:03-3534-5510 Eメール:planning@n-suiko.co.jp 担当部署:プランニング室●下水道展 ’23札幌 本紙が注目する今回必見の技術・製品等●出展ゾーン設 計測 量Technologies & Products, etc 2023温度変化から雨天時浸入水を検出“ラインスクリーニング”による新たな雨天時浸入水調査S1-06

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