(2) 平成11年福岡市地下街等での閉じ込められ事故幹事長代行が代表質問 (赤羽国土交通大臣の答弁骨子) 「東京など大都市での内水氾濫リスクは高く、地下に流入した雨水により都市機能に重大な支障下水道の散歩道「都市型水害・内水氾濫被害を侮―以前と比べ、その危険度・影響の㈱NJS 取締役 技師長 兼 開発本部長(公社)全国上下水道コンサルタント協会 企画委員長谷戸 善彦1.令和元年東日本台風に おける武蔵小杉の内水氾濫 令和元年10月の東日本台風(台風19号)は、東日本の広範囲に大きな水害をもたらしました。その被害の中で、従来にない新しい水害として、重大性が大きくクローズアップされたのが、川崎市武蔵小杉のタワーマンションの内水氾濫被害でした。内水被害により、タワーマンションの地下4階の雨水貯水槽が満杯となり、その上階の地下3階の電気・機械設備が水没し、マンション内の電気系統が全滅し、電気が使用できず、水道・トイレ・エレベータが使えない状況が2週間続きました。地上が大規模に冠水したわけではなく、地下にある電気設備がダメージを受けただけで建物全体が壊滅的被害を長期にわたって受ける。現代の新しい水害のパターンの出現でした。2.内水氾濫による重大な 事故事例ルへの吸い込まれ事故[第38回](34)第1931号 令和2年11月17日(火)発行 第3種郵便物認可甚大さが増している―あなどることなかれ」イラスト:PIXTA 武蔵小杉では、死者は出ませんでしたが、かつて、内水被害により、重大な死亡事故が発生した事例が二例あります。一般的に、外水氾濫は、規模が大きく、重大被害に繋がるという世の中の認識がありますが、過去には内水氾濫においても、悲惨な事故が発生しています。今後、大規模な事故に繋がるリスクは決して小さくありません。建設省(当時)勤務時代、私自身が関係し、対応した次の2つの事故は、決して忘れることができません。(1) 平成10年高知市のマンホー 平成10年の高知市の事故は、二人の方がマンホールへ転落し亡くなった過去にないショッキングな事故でした。平成10年9月24日から25日にかけて、高知市は、年間降雨量の3分の1を超える900ミリの集中豪雨に見舞われました。この豪雨で冠水した道路を歩いていた高校生が突如、道路上から、姿を消しました。3人連れで歩いていた先頭の一人が、冠水した道路に開いていたマンホールに吸い込まれたのです。もう一人の亡くなった方は、夜間帰宅中の美容師の方で、蓋の外れていたマンホールに転落したものと警察の検証で明らかになりました。目撃者はいませんでしたが、下流のポンプ場のコンベアで発見されました。水圧や空気圧で、市内11か所でマンホール蓋のずれや外れが生じ、事故に繋がりました。 建設省(当時)では、至急、事故再発防止のための豪雨時マンホール対策を検討すべく、10月に、「下水道マンホール緊急対策検討委員会(委員長:楠田哲也・九州大学大学院教授)」を設置し、マンホール蓋浮上・飛散のメカニズム、全国の実態、原因と対策案を協議しました。その結果を踏まえ、「下水道マンホール安全対策の手引き(案)」がまとめられ、安全対策の必要性、緊急安全対策、総合的安全対策等がまとめられました。この中で、マンホールの飛散防止対策等が具体的に提示され、その後のマンホール安全対策の推進に大きく寄与しました。相当改善してきたものの、現在でも、全国に1400万個ある下水道用マンホールの蓋の安全性確保は十分とは言えず、今後の速やかな対応が望まれるところです。 平成11年6月29日、福岡県の御笠川上流で時間最大雨量79.5mmを記録した福岡豪雨で、博多駅周辺の市街地が冠水、商業ビルの地下階が水没し、地下一階の飲食店で、女性店員が逃げ遅れて、水死しました。駐車場の入り口等から水が急激に流入し、地下街が水没したものです。「逃げられないかもしれない」と電話があった直後、連絡が途絶えました。同年7月21日には、東京都新宿区で、低地の住宅地が内水被害で冠水し、住宅の地下室にエレベータで様子を見に行った居住者の男性が水没した地下室に閉じ込められて死亡しました。地下室には、外階段もありましたが、水圧でドアが開かず、エレベータも動かなくなっていました。建設省(当時)では、緊急に地下街等の安全対策を指示するとともに、12月には、補正予算で、「地下街等内水対策緊急事業」を創設し、内水対策の集中的・重点的取り組みを開始しました。3.10月28日野田聖子自民党 10月28日、菅総理就任後初めて開催された衆議院本会議の代表質問で、自民党の野田聖子幹事長代行が赤羽国土交通大臣に対し、下水道による都市の内水対策の重要性と対策の強化について、質問されました。 (野田幹事長代行の質問) 「自然災害は、都市生活を営む人々にも猛威を振るいます。昨年10月の東日本台風では、川崎市で内水排除の不備により浸水被害が生じ、高層マンションの機能が停止したことは、多くの人々に驚きと衝撃を与えました。もし、東京で大規模な内水被害が生じれば、行政・経済機能がストップするなど甚大な被害が生じる可能性もあります。大都市の内水対策に対する下水道などインフラの強化について、赤羽国土交通大臣の見解をお願いします」
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