イラスト:PIXTA下水道の散歩道1.はじめに2.下水道インフラのBHAG(ビーハグ)を改めて考える[第63回](28)第2002号 令和5年9月19日(火)発行 上下水道インフラのBHAG(ビーハグ)とTECHNOLOGICALINNOVATION―テクノロジカル・イノベーションと上下水道関連ドローン・第3種郵便物認可ロボティクスの動向―(一社)日本下水サーベイランス協会 副会長谷戸 善彦ⅰ.2024年4月の国における上水道と下水道の組織統合を機に、自治体の上下水道の一体経営・一体的財務処理等による行政・組織・実務の一体㈱NJS エグゼクティブ・アドバイザー(常任特別顧問) 2017年の夏、公共投資ジャーナル社の仲村修社長(当時)から、「“下水道界への提言”的なものを連載しませんか」とお誘いを受け、2017年10月から毎月1回(2022年3月からは2ヵ月に1回)、「下水道の散歩道」を『下水道情報』に掲載してきました。この10月で、満6年になります。今回が第63回になります。この間、「客観的に」「公平に」、しかし、「ポジティブに」「独自性を持って」「大胆に」を心がけて、執筆してきました。下水道政策が大きな転換期を迎えている中、引き続き、「下水道界への提言」を行っていきたいと考えています。 2017年10月の第1回で、スタートにあたり、「BHAG(ビーハグ)とイノベーション」について、書かせていただきました。2020年8月の第35回で再び、「BHAG」を取り上げました。今回、6年経過の節目で、三度(みたび)、「BHAG」を取り上げたいと思います。 BHAG(ビーハグ)は、「Big Hairy Audacious Goals」の略で、直訳すると、「大きく困難で大胆な目標」です。「達成が困難で一見向こう見ずなように見えるが、しかし大胆でびっくりするような、わくわくする目標」「人の心に訴え、人の心を動かす明確な目標」とも言われています。ドラッカーの後継者と言われる経営学者のJim・CollinsとJerry・Porrasが、1994年、経営学の名著『ビジョナリー・カンパニー』で唱えた経営の方向付けに関する考え方で、グローバルに浸透した経営の指針です。BHAGとは、①明確で人々の意欲を引き出し、②組織に勢いをもたらし、③組織がそれを達成することに極めて固い意志を持つ―目標です。歴史上有名なBHAGとしては、軍用のプロペラ機しか作ったことがなかったボーイング社の「200人乗りでロサンゼルスからニューヨークまでひとっ飛びで行ける旅客機を作る」や、1961年にジョン・F・ケネディ大統領が宣言した「我々アメリカは、1970年代中に月へ人を送り、無事帰還させる」があります。 上下水道インフラのBHAGを、現時点で、改めて、掲げてみたいと思います。 ちなみに、第1回では、下水道インフラのBHAGとして、①全国のすべての処理場をエネルギー自立型・エネルギー供給型に、②処理水質を季節・時間で自動コントロールができコストスリムな水処理手法を開発、③全国2200箇所の処理場を一括無人自動運転制御、④全国の下水道経営黒字化で下水道使用料引き下げ、⑤管路無人ロボット施工、⑥下水道インフラ関連産業を建設・維持管理の総投資額年間5兆円産業に、⑦下水道界を学生の憧れの職業に―をGOALS(目標)としました。第35回では、「アフター/ウィズコロナ時代の下水道インフラのBHAG20」として、第1回のGOALSに加え、「下水道雨水対策事業を『雨水道』事業と呼ぶ」「直轄雨水道」「下水道は情報インフラ」「リン100%回収」「ゲノム編集によるBX(バイオトランスフォーメーション)」「合流式雨天時越流ゼロ」「ロボット化」「センサー徹底活用」「単体ディスポーザ解禁」「下水道インフラ関連から排出されるCO2、2030年度までに半減」「世界下水道会議」「民間主導で下水道インフライノベーションを」等を加え、20のGOALSを提示しました。 現時点で、改めて、上記20のGOALSを見てみると、十数年先の大胆な目標として掲げたにもかかわらず、既に、実行に向かって、動き出している(完成は十数年先としても)ものも少なくありません。 前回から、3年たち、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが2類相当から5類となり、経済活動もかなり戻ってきた中、また、下水道行政を取り巻く環境が劇的に変化しつつある中、現時点の下水道インフラの「BHAG」(「上下水道インフラのBHAG」)として、大きく絞ったうえで、次の4点を提示したいと思います。
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