第3種郵便物認可 第1994号 令和5年5月30日(火)発行(43)ための視座、ポイント【筆者略歴】山梨県北杜市大泉村出身。1974年3月、東京大学工学部都市工学科卒業。同年4月、建設省入省。都市局下水道部下水道事業課配属。1987年西ドイツカールスルーエ大学客員研究員、1991年京都府下水道課長、その後、建設省下水道事業課建設専門官(予算総括)、同下水道事業調整官、東北地方整備局企画部長、国交省下水道事業課長、国交省下水道部長、日本下水道事業団理事、日本下水道事業団理事長(公募による選任)、㈱NJS取締役技師長兼開発本部長等を歴任。2022年3月より㈱NJSエグゼクティブ・アドバイザー(常任特別顧問)。2022年5月より一般社団法人日本下水サーベイランス協会副会長・企画委員長。その他、(公財)河川財団評議員、(一社)日本非開削技術協会理事、等を務める。技術士(上下水道部門(下水道))。著書に『21世紀の水インフラ戦略(理工図書 書き下ろし)』がある。5.おわりに 上で述べましたように、今後、幅広い視点で、下水道インフラの持つ素晴らしいポテンシャル(潜在能力)を徹底的に引き出し、活かしていくことが重要になると考えます。その潜在能力を活用した重要施策の一つに上述の「下水サーベイランス」があります。下水サーベイランスの社会実装に向けての活動の中で、4月中旬に、下水サーベイランスの先進成功事例都市である札幌市、小松市、養父市の方々とお会いする機会がありました。三都市の市長・副市長・幹部の方々とお話をして、改めて、「最先端のチャレンジにおいては、強い確信・意思を持った強烈なリーダーの方がおられて初めて、新たな扉を開ける施策が実行できるのだなあ」と痛感しました。札幌市役所の秋元市長・吉岡副市長・荻田局長・渡邊部長、そして、小松市の宮橋市長・山上局長・中野課長、養父市の広瀬市長・坂本危機管理監、あわせて貴重なアドバイスをされた本多金沢大学教授、北島北海道大学准教授という熱い人たちがいなければ、ここまで、三都市の下水サーベイランスは進まなかっただろうと思います。やはり、世の中を動かす一大施策・一大戦略の達成は、「人」だと強く思いました。進取の気性を持って、下水道界挙げて、下水道インフラの持つ素晴らしいポテンシャルをさらに徹底的に引き出し、輝かしい日本の未来に繋げたいものです。池の劇的な効率化が進むと考えられます。将来、下水処理施設が微生物による発電施設となる可能性もあります。(コ)BX、GXを活用してのカーボンニュートラルにおける下水道インフラの多大な貢献 BX、GXの活用により、今後、下水道インフラは、カーボンニュートラルに大きく貢献する可能性があります。(サ)マンホール発信の自動車自動運転システムへの貢献等下水道マンホールの活用 全国に下水道のマンホールは、市街地を中心に1500万個存在します。そのポテンシャルの活用は非常に重要です。具体例としては、マンホール蓋の裏側に設置したセンサーによる自動車の自動運転システム支援への活用、管路・マンホール内に設置した水質・水量・コンクリート腐食状況・地震状況を把握するセンサーからの情報を定期的にマンホール蓋を通して発信し、各種計測・制御等、下水道インフラマネジメントや都市マネジメントに活用することが考えられます。マンホール内か管路内にごく小規模の無電源自動運転の水処理装置(管路内処理装置)を設置し、マンホール蓋から、その処理水をあふれさせ、道路清掃に活用することも可能となるかもしれません。(シ)管路内に水質センサー、水量センサー、老朽化センサー、地震センサー等あらゆるセンサーを設置することによる下水道インフラマネジメント(下水道DX)の最適化 (サ)で述べたとおりです。(ス)下水道インフラマネジメントの事業主体は、現在、地方自治体です。上で述べた下水道インフラのポテンシャル・潜在能力の活用を考えるとき、今後の下水道インフラマネジメントにおいては、すべて、原則、「自治体と民間の共同経営(官民共同経営)」または「財産は自治体所有で経営・マネジメントは民間」とし、「政策立案・制度設計・国家的重要プロジェクトの遂行・先導的に下水道インフラ施策を動かすためのモデル事業実施・技術開発支援・海外展開支援」は、国の直轄事業とするスキームも考えられるのではないかと思います。この手法のほうが、現行より、効率的・生産的に下水道インフラマネジメントが進む可能性があります。極端な意見に見えるかもしれませんが、こうした議論を今後、進めるべきと考えます。 以上、13項目の政策・施策・戦略を述べました。2.で述べましたように、下水道インフラの潜在能力は、驚くべきものがあります。上で述べたものは、その一角にすぎません。今後の、アイデア創出と実践に期待したいと思います。4. 下水道インフラのPBPMの 上記、下水道インフラ界におけるPBPMにより、下水道インフラ界は大きく変わる可能性があります。その実現に向けての視座・ポイントとして、以下の三点を述べたいと思います。①スピード感 下水道インフラのポテンシャル・潜在能力の活用にあたり、官民とも、第一に、「スピード感」を持っての対応が重要です。こうした潜在能力の活用は、うまくいかなければ、「中止し、やり直せば良い」ものです。常に、ポジティブに考え、チャレンジする「進取の気性」が大事です。多くの挑戦の中から、世界をリードする素晴らしい成果の出る可能性があります。②自治体・民間の声の聴取 下水道インフラの最前線の現場は、自治体にあります。また、自治体とともに、マネジメントしている民間企業が現場を熟知しています。PBPMにあたっても、その声を聴いて、政策・施策・経営戦略を進めるべきです。③異業種連携 PBPMは、隠れた潜在能力に気づくことからスタートします。下水道インフラの世界にとっぷり浸かっていない異業種の方々との交流、異業種の方々の意見を聞くこと、共に技術開発・マネジメント遂行をしていくことが重要です。また、学の方々との連携も重要です。
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