(42)第1994号 令和5年5月30日(火)発行 第3種郵便物認可想像以上に大きなものがある。この素晴らしいポテンシャルを活かすべき。我々は、いつしかこの素晴らしい下水道界の既存リソースを当たり前と思ってしまっていたが、改めて考えてみると、強力なポテンシャルである。 以上のように、他の社会インフラには決してない多くの貴重なポテンシャル(潜在能力)を、下水道インフラは、有しています。3. 下水道インフラの持つポテンシャル(潜在能力)を徹底的に活かす 下水道インフラ界において、上で述べたポテンシャル(潜在能力)を徹底的に活かして、今後、展開を図るべき政策・施策・戦略として、次の諸点を挙げたいと思います。(ア)下水汚泥等の徹底的な肥料化の推進 ロシアのウクライナ侵攻をきっかけとした物価の高騰の影響を受けた肥料の値上がり・不足を受けて、昨年9月9日、「第1回食料安定供給・農林水産業基盤強化本部会議」において、岸田総理より、「農林水産省は、下水道事業を所管する国土交通省等と連携して、下水汚泥・堆肥等の未利用資源の利用拡大により、グリーン化を推進しつつ、肥料の国産化・安定供給を図るよう緊急パッケージを策定すべし」という総理指示が発出されました。それを受けて、国交省・農水省は速やかに動き、下水汚泥の農業利用に大きな舵が切られました。松原下水道部長のもと、スピード感を持った素晴らしい対応だったと思います。 以前から、リン等、下水汚泥の肥料としてのポテンシャルは、周知の事実でしたが、今回をきっかけに、今後安定的・恒久的なスキームが構築されることが期待されます。ただ、地域特性等を考えての汚泥の多様な供給・活用ルートも確保・開拓していく必要がありましょう。(イ)下水サーベイランスの社会実装の推進。全国的な下水モニタリング体制の構築 下水サーベイランスとは、下水中のウイルス・細菌等の病原体を測定することにより、地域の感染状況を集団レベルで把握するものです。下水道インフラは、街中の下水が下水処理施設にたどり着くというシステム上の特性があります。街中の下水が集まってきた下水処理施設の入り口で採水・分析・検査をすれば、街中の感染状況・拡大縮小傾向が効率的に把握できます。これも、下水道インフラが普及率80~90%といったほぼ概成のレベルまで来たことではじめて可能となったものです。下水サーベイランスは、昨今、分析精度が飛躍的に高まったことにより(現在、新型コロナウイルスは、14万人に1人の感染者がいても検知できるレベルまで精度が上がっています)、新型コロナウイルスだけでなく、今後、インフルエンザウイルス、RSウイルス、サル痘、ポリオウイルス、ノロウイルス、薬剤耐性菌等、多くのウイルス・細菌の感染状況把握に活用できる可能性があります。また、下水処理施設への流入水の成分分析を活用した地域ごとの食生活の傾向把握等により、長寿に向けた健康指導等に活用できる可能性もあります。全国数百か所の指定された下水処理施設におけるモニタリング体制の早急な確立が求められます。(ウ)下水処理施設地下構造物、処理施設敷地を活用してのシェルターの確保・拡充 下水処理施設の敷地で空地になっている部分が全国で多く存在します。今後、我が国は、防衛上、シェルターの建設が必須となるでしょう。ポンプ室・管廊等、地下に空間を多く有する下水処理施設は、既存構造物を活かしながらシェルターを建設するのに格好の施設です。(エ)下水処理施設を核とした国家防衛拠点の整備 上記シェルターの建設と併せ、避難場所であり、ポジティブな防衛拠点ともなる国家防衛拠点の整備を、全国の広域的下水処理施設(流域下水道処理施設等)で図ることが考えられます。水の確保、電気の確保、空間の確保の点からは、最適な場所と言えます。(オ)下水処理施設を核とした耐地震・耐水害の防災拠点の整備 上記(エ)の施設は、平常時は、耐地震・耐水害の防災拠点としてマルチ活用すべきでしょう。(カ)SEWER MININGの展開 「SEWER MINING」は、日本語に直すと、「下水の採掘」「下水鉱山」となりましょうか。2010年に日本語版が刊行された水のノーベル賞受賞者、カリフォルニア大学の浅野孝教授の『Water Reuse』にも登場しています。下水道インフラは「水という資源を有する鉱山である」ということです。この鉱山から下水という資源を自由に取り出し、活用するという考え方です。具体的な取り組みは、オーストラリアのシドニーで15年ほど前から、進んでいます。従来の下水の再利用が、下水処理施設において高度処理をして下水再生水を生み出し、供給先に送水する考え方であったのに対し、下水管路の途中で利用者が下水を自由に取り出し、自らのビル内等で、高度処理して、活用するものです。従来のビル内個別循環で再生水利用をしているケースでは、まとまった量の下水をコンスタントにビル内部だけからでは確保できないため、ビル内に貯留タンクを設置しています。これと比べて、ビルのすぐそばを流れる下水管路が幹線管路で、一定量以上の水量が流れている場合、貯留タンクを設置せずに、コンスタントに再生水を確保できる利点があります。シドニーでは、利用者が自らのビル内で、「スクリーン+MBR(膜分離活性汚泥法)」を処理方式として採用し、省スペースで効率よく個別循環再生利用を図っています。従来の「サテライト下水道」を進化させた形で、熱の個別採取利用と併せ、今後の活用が期待できます。(キ)下水管路を活用した電線地中化の推進 我が国の都市景観の醜さは、間違いなく、電線・電柱にあります。今後、電線の地中化をできるだけコストを安く進めるには、下水管路への電線敷設しかないと思います。電線防護方式等を徹底的に研究した上、速やかに、具体化すべきと考えます。将来は、下水処理施設で製造した水素を街中に供給する水素配管を下水管路の中に入れることも考えられましょう。(ク)下水熱を活用した地域冷暖房の推進 ポンプ場・処理施設等、まとまった地域での地域冷暖房に加えて、(カ)で述べた幹線管路のいたるところでの下水熱利用も検討の余地があります。(ケ)BX(バイオトランスフォーメーション)を活かした微生物発電等エネルギーの確保 BXの進展により、微生物燃料電
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