下水道の散歩道1. POTENTIAL BASED POLICY MAKING(PBPM) 下水道インフラは、河川・道路・港湾・砂防・公園等、他の社会インフラにはない多くのポテンシャル(潜在能力)を有しています。その範囲は、信じられないくらい広いものです。 国の政策・自治体の施策・企業の経営戦略を立案するとき、目標(ゴール)を定め、その達成のためのリソースを集め、手段を選択し決定して、実行していく手法が一般的です。しかし、下水道インフラのように幅広い他に類を見ないポテンシャル(潜在能力)を多く有しているケースでは、そのポテンシャル(潜在能力)からスタートし、潜在能力を徹底的に検証・追求し、それをフルに活かした政策・施策・戦略を作り上げる手法も、極めて有効です。 これが、「POTENTIAL BASED POLICY MAKING(PBPM)」です。 下水道インフラに係る政策・施策・経営戦略を考えるとき、この手法は、重要なアプローチ方法の一つです。2. 下水道インフラの持つポテンシャル(潜在能力)は他の社会インフラにはない稀有で強力なもの―下水道インフラの持つ素晴らしいポテンシャル20―[第61回]第3種郵便物認可 (一社)日本下水サーベイランス協会 副会長谷戸 善彦 第1994号 令和5年5月30日(火)発行(41)POTENTIAL BASED POLICY MAKING(PBPM)― 下水道インフラの持つ潜在能力(ポテンシャル)を フルに活かした政策立案・企業戦略を―㈱NJS エグゼクティブ・アドバイザー(常任特別顧問)イラスト:PIXTA設に毎日コンスタントに集まってくる4200万m3/日の下水、下水汚泥。(3)全国の下水処理施設・ポンプ施設の広大な敷地8400haのストック。(4)日本の地下空間に埋設されている下水管路の内部空間容積ストック。(5)都市の住居・オフィスビルのすぐ目の前に必ずといっていいほど下水管路が通っているそのアクセス性の良さというポテンシャル。(6)下水道インフラには、都市の汚水・雨水が集まってきており、都市の水関連活動・生活活動・人間活動の結果排出された物質の多くが入ってきており、都市の水関連活動・生活活動・人間活動の鏡。(7)下水管路を流れる下水は、冬は、大気より暖かく、夏は、大気より冷たく、熱交換により、地域冷暖房に活用できる熱ポテンシャルを有している。(8)下水は、Cを核としてN・O・H等からなる有機物、リン等の有益な無機物など、肥料等として貴重な栄養物を含んでいる。(9)下水及び下水汚泥は、熱・電気・ガス・有機資源等、資源・エネルギーを産みだすポテンシャルを多く含んでいる。(10)下水そのものも、貴重な水資源である。今後の技術開発による高度処理等のコスト減、質の向上により、さらに、活用の可能性がある。(11)以上のような下水道インフラのポテンシャルは、人間が生存している限り、未来に向けて、恒久に続くポテンシャル。サステナブルな潜在能力。(12)下水道インフラは、原則、自然流下となっており、放っておいても、毎日、コンスタントに下水 下水道インフラの持つポテンシャル(潜在能力)には、他の社会インフラにはない、稀有で幅広く強力なものが多く存在します。以下に、下水道インフラの持つポテンシャル・特長20を、列挙します。(1)全国をカバーする延長49万kmの下水管路ストック。(2)全国2200箇所の下水処理施処理施設に、下水がたどり着く。今日は、もういりませんと言っても、必ず都市内から水が集まってくるというポテンシャルを有している。(13)下水処理は、微生物による処理が中心であり、バイオテクノロジーそのもの。下水道インフラの世界では、今後、バイオ・トランスフォーメーション(BX)の進展により、処理のドラスチックな効率化、従来生み出せなかった素材の生成等がコストスリムに達成される可能性がある。BXによる劇的な下水道インフラの変化を期待できる。これにより、さらに下水道インフラの潜在能力が増すと考えられる。(14)下水道インフラには、雨水対策という大きな役割がある。外水対策としての河川行政と一層連携した施策を打ちだせるポテンシャルがある。(15)下水道インフラは、土木・建築・機械・電気・化学・生物等の分野の技術を活用したハード施設のウエイトも大きく、今後、技術開発により生産性向上・コストスリムが期待される分野が幅広く、市場も大きい。(16)下水道インフラ産業界は、多くの業種に関係しており、他の社会インフラと比較しても、産業界の裾野が広い。(17)下水道使用料を市民から徴収する仕組みの中で下水道インフラマネジメントが成り立っている。社会インフラの中で非常に珍しい存在。経営手腕が問われる、また、経営戦略を活かすことのできる社会インフラである。(18)アジア・アフリカ地域の下水道インフラは、まだまだ未整備・未構築のところが多い。下水道インフラの今後の海外展開ポテンシャルは大きい。(19)下水道インフラマネジメントにおいて、PPP・PFI等民間活力を活かせる分野が多い。技術進化、下水道の持つ資源・エネルギーポテンシャルの活用如何では、今後の下水道インフラマネジメントを大きく変える可能性がある。(20)下水道インフラは、ここ60年の社会資本投資により、現在、我が国で100兆円のストックを有している。この間に形成された下水道インフラ界の既存組織(例えば日本下水道事業団等)・既存リソース(ヒト・モノ・カネ)は、
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