下水道の散歩道 第34-63回
7/81

ラ」ミッションを明記ンフラの持続性向上下水道の散歩道㈱NJS 取締役 技師長 兼 開発本部長(公社)全国上下水道コンサルタント協会 企画委員長谷戸 善彦1.令和3年度下水道事業予算概算要求は「機を捉えた」内容の濃い要求[第37回](30)第1929号 令和2年10月20日(火)発行 第3種郵便物認可イラスト:PIXTA県の主体的取り組み」「d.民間知見の取込み」「e.性能発注推進」「f.PFI推進」「g.データの広域的活用」の7点の推進が指示されています。 また、今回の概算要求において、国土交通省は、省全体の重点課題として、「ア.国民の安全・安心の確保」「イ.ウィズコロナにおける持続的な経済成長の実現」「ウ.豊かで暮らしやすい地域の形成と多核連携型の国づくり」の3点を掲げています。 これらを受けた令和3年度下水道事業予算概算要求では、新規事項等として、次の項目が的確に挙げられています。これが、私が上で、「機を捉えた内容の濃い概算要求」と言った所以です。① 下水道インフラの「衛生インフ 水管理・国土保全局の概算要求の主要課題として、「公衆衛生の強化等のための下水道の持続性向上」が特記され、下水道インフラが人の命を衛る「衛生インフラ」であることが明記されました。【上記ア.関連】② 公衆衛生強化のための下水道イ 今回の概算要求書の「公衆衛生の強化等のための下水道の持続性向上」の項の中では、下水道インフラについて、次のように記述されました。 「公衆衛生上の下水道の役割がますます高まる中で、人口減少、施設の老朽化などの課題に対応し、下水道事業の持続性を向上させるため、デジタルトランスフォーメーションに係る技術開発や、広域化、収支構造の適正化を推進する」 これに基づき、具体的には、ⅰ.施設情報や維持管理情報等のデータを一元管理する下水道マネジメン 9月25日、令和3年度概算要求が国土交通省から公表されました。今年は、新型コロナウイルス対応優先を受け、例年より、1ヵ月遅れの要求となりました。9月30日に、植松下水道部長と二人で意見交換をしましたが、私は、今回の下水道予算概算要求は、「機を捉えた」内容の濃い概算要求だとの印象を持ちました。「機」とは、「感染症対応と自然災害の激甚化・頻発化対応」です。そのいずれにおいても、下水道インフラは、大きな「レゾンデートル(存在意義)」を有しています。「衛生(命を衛る)インフラとしての下水道インフラ」と「安全インフラとしての下水道インフラ」です。どちらも、人の命を守るミッション(使命)であり、すべての社会インフラの中で、最も重要なインフラと位置付けられるに値するミッションです。 今回の概算要求は、7月17日に閣議決定された骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針2020)に基づくものです。「骨太の方針」の中で、下水道インフラは、次のように述べられています。 「下水道の広域化計画の中にシステム標準化を含むデジタル化の推進に関する事項も盛り込むよう促すとともに、その実現に向け、都道府県が広域的な地方自治体として、関係市町村と連携体制を構築し、主体的に取り組むよう求める。民間知見の取込みのため、性能発注推進、PFI推進及びデータの地方公共団体をまたいだ活用を推進する」 極めて具体的に、「a.システム標準化」「b.デジタル化」「c.都道府「令和3年度下水道事業予算概算要求」と「下水道インフラへの国民の関心・理解」トシステムの構築等「下水道分野のデジタルトランスフォーメーション(DX)」を加速、ⅱ.コンセッションを含む官民連携手法の導入の推進等により、収支改善等を加速化、ⅲ.公衆衛生強化のための未普及対策として、過疎代行制度の期間延伸、ⅳ.公衆衛生強化策として、地震時の感染症との複合災害防止のため、感染症拠点病院・災害拠点病院の下流全区間の管渠の耐震化費用を交付対象化、が掲げられています。これらは、いずれも、骨太の方針の記述に沿った施策で、施策実現による効果も大きいものです。【上記a.b.c.d.e.f.g. ア.イ.ウ.関連】③都市浸水対策の強化 都市浸水対策の強化として、「下水道浸水被害軽減総合事業の拡充」が新規事項として、要求されました。大規模雨水貯留施設の整備を進めるとともに、雨水管の交付対象範囲の拡大、雨水管理総合計画の策定推進が打ち出されています。また、樋門等の自動化・無動力化・遠隔化やポンプ場の耐水化の交付対象範囲の拡充が要求されています。内水災害の激甚化・頻発化の中、拡充の効果は大きいと考えます。【上記ア.イ.ウ.関連】④下水道の改良復旧事業の創設 災害復旧事業における下水道の改良復旧事業制度の創設が新規事項として、計上されました。これまで、下水道施設については、改良復旧事業制度がなく、施設が災害で被災した場合、原形復旧の範囲に限られていました。原形復旧のみでは十分な効果が期待できない場合に、再度災害防止の観点から一連の施設の機能強化を図るもので、大きな効果が期待できる制度改正です。【上記ア.関連】2.概算要求公表の当日、小渕優子衆議院議員、東京都が世界に誇る下水道シールド工事現場を視察 中本太衛元衆議院議員と私からお誘いし、9月25日、令和3年度概算要求公表の当日、小渕優子衆議院議員(元経済産業大臣)に、東京都下水道局の雨水対策の工事現場を視察いただきました。その1ヵ月ほど前に、我々二人と国交省植松下水道部長から下水道インフラの最新動向をレクチャーする

元のページ  ../index.html#7

このブックを見る