第3種郵便物認可 第1985号 令和5年1月24日(火)発行(31)役割は、極めて大きかったと思います。国とタッグを組んで、日本の下水道インフラをけん引しました。 ⑦に関しては、SPIRIT21等の国主導の大規模技術開発プロジェクトのもと、民間企業の技術開発の成果は大きく、下水道インフラの発展に寄与しました。 ⑧に関して、地方自治体の結束力、民間企業・社団法人等の企業団体の果たした役割も大きなものがあります。これにより、国・下水道事業団等の組織強化、予算獲得、補助制度拡充・執行強化に繋がりました。3.未来に向けての下水道政策・下水道行政の展開への示唆 以上の総括・重要骨太施策を踏まえ、今後の下水道政策・下水道行政の展開を考えるにあたって示唆となるキーワードは、以下と考えます。a.政官学民の連携 60年の歴史の中で、下水道行政に大きな貢献をした骨太の施策の多くは、政・官・民の連携の賜物です。今後、さらに、学を加え、政官学民の強固な連携が将来の発展に向けてのキーワードとなるでしょう。b.国民・自治体の声の吸い上げ 下水道事業の主役・オーナーは、国民です。国民の税金・使用料で、下水道事業は成り立っています。国民からの付託を受けて、地方自治体・民間(民間は主に地方自治体からの受託)が事業を執行し、国がその支援を行っています。こうした主役(国民)、付託を受けての執行者(地方自治体・民間)の声の吸い上げが、必須であり、その声を受けての政策・行政が求められます。c.国の主導性・先導性 60年の歴史を振り返るとき、国の主導性・先導性が鍵となっています。現状の的確な把握を踏まえ ④は、下水道インフラ(汚水・雨水)の建設・維持管理の費用負担論を真正面から議論し、結論を得たもので、昭和36年の第1次下水道財政研究委員会(財研)提言、昭和41年の第2次財研提言、昭和48年の第3次財研提言が、注目です。各次、学識経験者、マスコミ、市長、大蔵省、自治省、建設省のメンバーが結集して、熱い議論の末、まとめられました。第1次の「雨水公費、汚水は水質保全・公衆衛生分は公費でその他は私費」論、第2次の「雨水公費、汚水の水質保全という公費負担分が増大していることより汚水の建設費の70%以上は公費負担であるべき」、第3次の「下水道はナショナルミニマムでかつ水循環の重要構成要素であり、公共性の強い施設。雨水はもとより汚水も建設費は、汚染原因者の負担を除き、公費負担を原則にすべき。補助率を道路・河川等基幹的公共施設と同程度まで引き上げるべき。国庫補助対象範囲も改善すべし。地方債充当率・地方交付税措置の改善を図るべし。雨水以外の維持管理費は使用料で回収。高度処理の建設費と維持管理費は公費負担」が、提言の骨格で、下水道行政の執行に大きく貢献しました。特に、第3次は、画期的なものでした(第3次提言はその後の第4次以降で内容が後退しました)。 ⑤の都道府県の役割の強化も、下水道インフラの発展に大きく寄与しました。昭和46年8月の都市計画中央審議会の下水道執行体制拡充の答申により、全国的に地方自治体の執行体制が大幅に強化されたことは非常に大きく、また、制度としては、流域下水道制度と過疎代行制度が大きく貢献しました。 ⑥に関しては、この60年の下水道発展の歴史の中で、事業執行制度構築・執行体制・技術開発・国際展開・国への提言等において、東京都・政令指定都市の果たしたて、将来を鳥瞰し、流れを読み、最適のタイミングで最良の政策を打ち出し、実現する。国には、この使命があると思います。d.最重要国策とのシンクロ いくら素晴らしい政策でも、その時点の最重要国策とベクトルの方向がずれていれば、大きな展開は望めません。最重要国策とのシンクロ、マッチングは大変重要な視点です。最重要国策は、今日でいえば、GX、DX、BX、災害対応、感染症対策、国防、イノベーション技術等です。いずれも、下水道インフラの果たす役割の大きなものばかりです。e.大規模技術開発プロジェクト 日本の将来について、厳しい予測も多い中、「技術開発」特に「環境関連のイノベーション技術開発」による立国は、今後の日本にとって、極めて重要な方向性になると思います。下水道インフラは、技術の宝庫です。多くの開発ポテンシャルが眠っています。国主導の大規模開発プロジェクトの立ち上げが期待されます。f.異業種連携 下水道事業は、道路・河川・都市計画・水道等の他の事業との関連が深く、事業執行にあたり、他事業との多くの調整が必要です。こうした従来から連携を取ってきた他業種に加え、今後は、医療・保健衛生・農業・食分野等、新たな異業種連携により、下水道インフラの新展開が期待できます。下水サーベイランス、下水有機物・リンの肥料への活用等、ここにきて、新しい動きが出ています。4.具体的提言 以上を踏まえ、2023年以降の下水道政策・下水道行政の展開にあたっての骨太の具体的提言を8つ、述べたいと思います。これらの実施は、非常に難しいと思われる方々も多いかと思いますが、この50年間、下水道インフラのトランスフォーメーション(改革)に率先
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