イラスト:PIXTA下水道の散歩道1.令和5年の新春にあたって 令和5年、2023年がスタートしました。干え支とは、癸卯(みずのと・う)年です。十じっ干かんと十じゅう二に支しを併せた干え支と(十じっ干かん十じゅう二に支しを略した呼び方)は、10と12の最小公倍数の60年周期で回ります。一回前の癸卯年は、1963(昭和38)年、一回目の東京オリンピックの前年でした。この昭和38年から、翌年の東海道新幹線の開通、東京オリンピックの開催と続き、日本の高度成長が始まりました。下水道インフラも、まさにこの年を境に、第1次下水道整備五箇年計画の策定、下水道行政の一元化、下水道法の大改正と、大きな発展を遂げることとなります。昭和38年、第1次下水道整備五箇年計画がスタートしたこの年の下水道普及率は、7.4%(行政人口9616万人、処理人口709万人)でした。今や80.6%まで普及が進みました。増加処理人口は、9400万人です。世界中を見渡しても、このピッチで下水道インフラの普及が進んだのは、日本しかないと言っても過言ではありません。 癸卯年は、「寒気が緩み、萌芽を促す年」、「過去の着実な積み重ねの中から一気に飛躍し、大きく発展する年」になると言われています。 令和5年の年初にあたり、激動の60年間の下水道インフラ政策・下水道インフラ行政の歴史に学び、未来に向けての展開に活かすポイントを考えてみたいと思います。[第59回](30)第1985号 令和5年1月24日(火)発行 歴史に学び、未来に活かす ―下水道政策・下水道行政の激動の直近60年の歴史を総括し、未来に第3種郵便物認可(一社)日本下水サーベイランス協会 副会長谷戸 善彦向けての展開に活かす――政官学民の連携、国民・自治体の声、国の主導性・先導性、最重要国策とのシンクロ、大規模技術開発プロジェクト、異業種連携―2.この60年間の下水道インフラ政策・下水道インフラ行政の総括と重要骨太施策公害関係諸法の制定・改正③第一次から第八次までの下水道整備五箇年計画④下水道財政研究委員会提言(特に第三次)⑤流域下水道制度や過疎代行制度の創設等、都道府県の役割の強化⑥東京都・政令指定都市のリーダーシップ⑦民間企業を中心とした下水道関係技術開発の進展⑧政官民の連携による組織強化・予算獲得・補助制度拡充・執行強化㈱NJS エグゼクティブ・アドバイザー(常任特別顧問) 1963(昭和38)年以降の60年間の下水道政策・下水道行政における重要施策を年表にまとめました(表参照=筆者作成)。 この表をもとに、私は、この60年間の我が国の下水道インフラの発展に大きく寄与した下水道政策・下水道行政施策は、以下の8点と考えています。①下水道行政の一元化②昭和45年の下水道法の大改正と ①は、表にありますように、昭和39年に、行政管理庁が下水道行政の一元化に向けた行政監察をスタートし、昭和41年に「下水道行政の一元化」を勧告しました。その後、各省調整を経て、昭和42年2月に、下水道行政の一元化が閣議了解されました。一元化前は、管渠は建設省、処理場は厚生省の所管とされ、下水道行政の非効率化が顕著でしたが、この一元化により、管渠・処理場とも建設省の所管(処理場の維持管理のみ、建設・厚生両省の共管)となり、下水道事業の効率的執行が可能となり、下水道インフラの整備が加速しました。 ②は、「公害国会」といわれる昭和45年の第64臨時国会で、下水道法の大改正が行われたものです。多くの改正が行われましたが、ポイントは、ⅰ.下水道法の目的に「公共用水域の水質の保全に資すること」が追加されたことと、ⅱ.公共下水道は処理場を自ら有するか流域下水道に接続することが要件となった―の二点です。これにより、それまでは、各家庭等から集めた下水を処理せずに(未処理で)川・海に放流してもよかったものが、処理が義務付けられました。下水処理場の必置義務です。目的規定の制定と併せ、下水道インフラは、初めて、「水質保全インフラ」と位置付けられ、国民の税金を使って、公共事業として執行する事業とお墨付きを得ました。おりしも、日本中の川・海・湖の水質汚濁が著しい状況になっており、その「最重要国策とのシンクロ(マッチング)」もあり、下水道予算は、第2次下水道整備五箇年計画(昭和42~46年度)の9300億円から、公害国会の翌年に閣議了解された第3次計画(昭和46~50年度)では、2兆6000億円、第4次(昭和51~55年度)は7兆5000億円、第5次(昭和56~60年度)は11兆8000億円の計画額(五箇年分)と激増しました。 ③は、8次にわたる下水道整備五箇年計画の策定とそれに基づく事業執行です。五年に一度、大蔵省と建設省の激しい折衝で計画額と計画目標(普及率・雨水排水整備率等の達成目標等)が閣議決定され、事業執行上の大きなメルクマール(目標・目安)となりました。
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